琥珀色の戯言

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新・資本論 僕はお金の正体がわかった ☆☆☆


新・資本論 僕はお金の正体がわかった (宝島社新書)

新・資本論 僕はお金の正体がわかった (宝島社新書)

内容(「BOOK」データベースより)
「お金は信用である」「信用さえあれば、お金がなくてもなんとかなる」「コミュニケーションが信用を生む」「お金の本質を見抜けなければ、搾取される」「貯金は悪」「住宅ローンのカラクリ」「不況は起こるべくして起きた」「起業はいつでも、どこからでもできる」…ホリエモンだから語れた、バブル、不況、貯蓄、ローン、投資、起業、そしてこの世の「お金」にまつわる真実。

うーん、率直に言うと、最近の新書にありがちな「話題の有名人にインタビューした内容をそのまま起こして本にした、手抜き本」という印象です。字が大きい、行間が広い、内容に具体性が乏しい……
ただ、堀江貴文さんというのは、アクが強いけど、たしかに「本音の人」ではあるし、僕にとっては興味が尽きない人物ではあるんですよね。

この本では、「現代日本を代表する拝金主義者」のようなイメージを持たれがちな堀江さんが「お金とは何か」について語っておられます。

 そこで、あらためて「お金とは何か」ということを考えてみます。「お金とは、信用を数値化したもの」これが、僕なりの定義です。もう少し詳しく説明しましょう。 お金とは、その成り立ちからして、価値を保証するもの、価値を交換する際の媒介に過ぎません。人類が誕生し、文化が発達した段階で物々交換が起こり、その不便を解消する存在としてお金は誕生しました。
 つまり、お金は最初から「しるし」である以上でも以下でもないわけです。経済活動の信用を媒介する道具であって、そもそもがバーチャルなものなのです。

(中略)

 信用といっても、何も難しく考える必要はありません。たとえば、困った時に助けてくれる人が身近にいる、これは、信用があるということです。
 お金がなくなってしまった時、「じゃあ、ウチに居候しなよ」「ご飯を食べさせてあげるよ」と言ってくれる友人がいる。これは、揺るぎない信用があるからこそ、言ってくれることですよね。毎日、住まわせてくれる人、ご飯を食べさせてくれる人が周囲にいたら、家賃も食費もかからない。
 信用がお金=経済価値を生んでいる好例です。
 車に乗ってどこかへいきたいが、車を持っていない。そんな時に、車をタダで貸してくれる知り合いがいれば、お礼やガソリン代、通行料など最低限の費用で車を利用することができます。信用が、車を保有することでかかるコストを代替してしまっているのです。
 自信が信用を生み、信用が人脈や経済価値を生む。さらに、人脈がさらなる人との繋がりや成功のきっかけに繋がっていく。これが、すべての出発点なのです。

(中略)

 こうしたことを理解しないでいては、誤解を恐れずに言えば、いくらマネー本や起業本を読んだところで、いつまで経っても「負け組」のままでしょう。目的を履き違え、信用創造がなされないままだから、ということはわかっていただけますよね?

堀江さんの言いたいことは、僕にも理解できます。うん、すごくよくわかるような気がするのです。
堀江さんは、こんなことも書かれています。「保険会社のほうが儲かるに決まっている『生命保険』というシステムにお金を払い続けるくらいなら、入院費を貸してくれる友人や親戚を持ったほうが良いに決まっているじゃないか」

その一方で、この本を読んでいると、僕は堀江さんの「性善説」っぷりに、ついつい、「そんなに『他人』を信用できるなんて、おめでたい人だなあ……あの『ライブドア事件』で、堀江さんにいろんな責任を負わせて自分の罪を軽くしようとした『仲間』たちのことを、堀江さんはどう思っているのだろう?」とも考えてしまうのです。

ひたすらクールな合理主義者だというイメージがあった堀江さんの本質は、「甘い人情家」なのかもしれません。
そもそも、本当に冷徹な人であれば、もっと秘密裏に暗躍して、いろんなことを「うまくやった」ような気がしますし。

僕を含む多くの人間は、「困ったときに助けてくれる人がいる」はずです。
でも、それは「計算」できるようなものじゃない。
1週間くらいなら、喜んで泊めてくれる友人でも、1か月居候していれば、「そろそろ出ていってくれないか」と言ってくるのが当たり前です。
そもそも、相手だって「お金」がないと他人の面倒なんてみられない。

僕は、信用がお金=経済価値を生む、というのを否定はしません。
しかしながら、一般的には、お金=経済価値が信用を生むケースのほうが、圧倒的に多いはず。
そして、金銭的なトラブルや破綻が、信用の失墜につながる。

この本のなかの「住宅ローンのカラクリ」の話なんかは、確かにそうだなあ、と頷けるんですが、正直、「お金である程度の信用を確保する」ほうが、「コミュニケーション力に頼って信用を生む」ことよりも、よっぽど簡単だと思うんですよ、多くの人間にとっては。
そして、「起業せよ」「日本には100万人の社長がいる」って言うけどさ、日本の100万人の社長の大部分は、「名ばかりの社長」だったり、「自転車操業のなか、今月の社員の給料を出すのに汲々としている社長」なんですよね現実は。

この「コミュニケーション力こそが信用であり、信用こそがお金を生む」という考え方は、ひろゆきさんも以前同じようなことを話しておられた記憶があります。
西原理恵子さんは、「とにかく目の前の仕事を一生懸命やって、コツコツ働いてお金を稼いでいくことからしか、自分の世界を開いていくことはできない」と書かれていました。
どちらが正しい、とは言えないのですが、少なくとも、この堀江さんの本には、「どうすれば『信用』を得られるのか?」は書かれていませんでした。それがみんなのいちばん知りたいことのはずなのに。
まあ、「こんなアジ演説みたいな、本当に困っている人の参考にはなりそうもない本を濫発していたら、『信用』なんて得られないだろうな」ということはわかりますけど。

僕は同時代人として、堀江さんには共感するところが多いのですが、この本には、あまり心に響く文章がなかったです。
堀江さんの『徹底抗戦』は面白かったんだけどなあ……


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