琥珀色の戯言

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デトロイト・メタル・シティ ☆☆☆☆


デトロイト・メタル・シティ スタンダード・エディション [DVD]

デトロイト・メタル・シティ スタンダード・エディション [DVD]

あらすじ: 純朴な青年、根岸崇一(松山ケンイチ)は、ポップミュージシャンを目指して大分県から上京する。だがひょんなことから人気悪魔系デスメタルバンド“デトロイト・メタル・シティ”のギター&ボーカルとして活動することになる。彼らのデビューシングルは大ヒットを記録し、崇一は自分の意思とは関係なくカリスマ悪魔歌手に祭り上げられていく。(シネマトゥデイ

Go to DMC!   Go to DMC
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昨夜観てきました『デトロイト・メタル・シティ』。
20時半からのレイトショーで、観客は50〜60人。
レディースデーということを差し引いても、地方都市のシネコンの平日のレイトショーとしては、「うわっ、こんなに人がいるのか!」と軽く驚くくらいの入りでした。
同日公開の『クローン・ウォーズ』の惨状を見たあとなのでなおさら……

結論から言ってしまうと、僕はこの映画すごく面白かったです。
ネット上の映画評では、「くだらない」っていう人も多いみたいなんですが、その「くだらなさ」がこの作品の最高の魅力なわけで。

正直、物語としてのアラはたくさんあります。
いくらなんでもあんな大家さんはいないだろう、とか、根岸はあの衣装をずっと持ち歩いているのか(重そう……)とか、ジャギとカミュの出番が少なすぎだろうとか。
原作との比較でいうと、この映画の最後はあまりに「いい話」になりすぎちゃって、ちょっとしらけてしまったかな、とか、ジーン・シモンズの存在感はすごかったけど、ジーン・シモンズが出演してくれたために、彼にあんまりヘンなことはさせられず、DMCとジャックとの「勝負」が、何の勝負だかわからなくなってしまったり(原作と同じことをジーン・シモンズがやったらすごいけどね)、クラウザーさんの「悪事」が全体的にマイルドになってしまったりとか(いや、根岸もクラウザーさんも「いい人」になってましたよね、あのオシャレ四天王には僕はたいがいムカついていたので、もっと派手にやっつけてほしかった!)、いろいろと感じたところはあったのですが、この映画、「冗談を冗談として楽しめる人」には、けっこう良い気分転換になるのではないかと。

僕がいちばん凄いなあ、と思ったのは、クラウザーさんが、とにかく「漫画から出てきたみたいにイメージどおり」なんですよビジュアル的に。もともと絵的にはKISSなどの「悪魔系バンド」ををモチーフにしたものなので、イメージ以上に実体化しやすかったのかもしれませんが、それにしても「漫画のキャラの絵的な再現度」としては白眉です。映画のクラウザーさんは、史上もっとも「見た目が漫画のイメージ通りのキャラクター」かもしれません。
観ていると、あのクラウザーさんが現実世界で動いている、というだけで、なんだかニヤニヤしちゃうんですよ。立っているだけでネタになってしまうのです。漫画以上に「その場にクラウザーさんがいる」ということだけで楽しくなってしまいます。
とにかく、この「キャラが似ている」っていうのは、すごい威力があるんだよなあ。

それにしても、松山ケンイチは相変わらず良い仕事してます。根岸の気持ち悪い歌はちゃんと胸焼けするように歌ってるし、DMCのステージでのパフォーマンスもすばらしい(個人的には、あの「DMCポーズ」を実写で見てみたかった、できればジーン・シモンズ入りバージョンで!)歌の滑舌が悪くて言葉が聞き取りにくかったのは、松山さんの問題というより、あまりクリアに発音するといろいろと問題がある歌詞だったから、なのかな。
その他のキャスティングも、加藤ローサさんは「かわいくって、少しばか」だし、松雪泰子さんのデスレコード社長は、まさに「ハマリ役」でしょう。
あと、特筆すべきは、DMCファンの皆様のすばらしい観客っぷり。台詞がある人だけじゃなくて、まさに「ただそこにいるだけの人」たちもみんなノリノリで、それがステージに説得力を与えていました。この映画の最大の功労者は、「DMC信者の皆様」かもしれません。

いや、「映画には感動が必要」とか「リアリティがないと受け付けない」とか「こんなのDVDで十分」っていう人も多いのでしょうけど、とにかく「2時間、日頃のめんどくさいことを忘れて楽しみたい」「気分転換したい」という人には、おすすめできる作品です。
「いい話」方向でまとめられてしまったのはちょっと残念なのですが、原作ファンは、「動いているクラウザーさん」を見ているだけで、けっこう楽しめるんじゃないかな。

しかし、この映画を観ていると、「デスメタル」の過激な歌詞っていうのはひとつの「記号」でしかなくて、「世間のお洒落な連中からないがしろにされている人々」にとっては、そういう過激な言葉を口にすることが世間への唯一の対抗手段なのかな、というようなことをちょっと考えてしまいました。ほんと、オシャレ四天王とかF●CK!なにが「プロデュース」だこの野郎!

そして、僕が学生時代に「オシャレ」だと思いながら聞いていたオザケンコーネリアス(っていうか、フリッパーズ・ギター)のような「渋谷系」って、いま客観的に聴いてみると、なんだかとても照れくさい曲だったんだなあ、とあらためて思い知らされました。


原作ファンは、ぜひ。
ただ、原作の「下品さ」に抵抗がある人は、やめておいたほうが無難です。