琥珀色の戯言

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南極1号伝説―ダッチワイフの戦後史 ☆☆☆☆


南極1号伝説―ダッチワイフの戦後史 (文春文庫)

南極1号伝説―ダッチワイフの戦後史 (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
知られざるダッチワイフの戦後史を綿密な取材で掘り起こすとともに、「ラブドール」と呼ばれる精巧なシリコン製ダッチワイフが開発されるまでの苦労話、エンドユーザー達の悲哀と楽しみを現在進行形で描いた異色のノンフィクション。

僕はラブドール(ダッチワイフ)のユーザーではありませんし、シリコン製のラブドールが60万円もする、というのを読むと、「なんでそこまでして……」とも感じてしまうのですが、「人間にあらざるもの」への偏愛みたいなものは、なんとなく理解できるような気がします。押井守監督の『イノセンス』では、「人形を苛めること」は、ある意味「人間を苛めること」よりも罪深いのではないか?と問われていましたし。
この本の「あとがき」で、著者は、こんなふうに書いています。

例えばペットに感情移入して、それが人間であるかのように話しかける飼い主は多い。だがそのせいで飼い主が人間を動物のように扱う危険人物だと考える人はいない。同様にラブドールのユーザーは人形を生きた人間として扱うように見えることがあるが、それは彼らが生きた人間を人形として扱うということではない。

マンガの世界では、人形好きが嵩じて、「お前も蝋人形にしてやろうか!」という悪党が登場してくる作品がいくつかあるのですが、現実の「人形好き」に、そんな怖い人はほとんどいないはずです。「ブランド好きのセレブ(のふり)女性」のほうが、よっぽど危険!

「性欲解消のための道具」であるはずのラブドールなのですが、有名な「オリエント工業」をはじめとするメーカーへのインタビューは、なかなか興味深いものがありました。
彼らは、「人形好き」「性欲解消の道具をつくっている」というよりは、「ユーザーの心の琴線に触れるような人形をつくるための技術革新にやりがいを感じている人たち」なんですよね。「アングラ」なだけに、かえって、いまの世の中では絶滅しかけている「ひとりの人間の工夫や発想が活かされやすい職人の世界」が続いている印象さえあります。

掲載されている写真はモノクロでも、「ちょっと電車の中では読めないな」としか言いようがない本なのですが、読んでいると、なんか僕もちょっとラブドールに興味が湧いてきましたよ。
「メンテナンスが大変なので、基本的にマメじゃないと、うまくつきあっていけない」らしいので、僕には向かない「彼女」みたいですけど。