琥珀色の戯言

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ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘 ☆☆☆☆


ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘

ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘

内容(「BOOK」データベースより)
おやじの秘密、しゃべっちゃおうか。水木しげる赤塚不二夫手塚治虫の娘たちが語る、父の素顔。



著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

水木 悦子
漫画家・水木しげるの次女。現在、水木プロダクション勤務。娘として、また同社の社員として、水木しげるを全面からサポートしている。水木しげるの作品、妖怪などにも詳しい。水木の海外取材旅行にもほぼ同行している


赤塚 りえ子
漫画家・赤塚不二夫の長女。東京生まれ。94年渡英。2001年ロンドン大学ゴールドスミス校ファインアート科を卒業。02年よりロンドンのギャラリー、Danielle Arnaud contemporary artに所属し、現代美術家として現在も活動中。06年7月に帰国、同年8月に株式会社フジオ・プロダクション代表取締役社長に就任


手塚 るみ子
漫画家・手塚治虫の長女。プランニングプロデューサーとして手塚作品をもとにした展覧会や宣伝、企画をプロデュース。2003年には音楽レーベル「MUSIC ROBITA」を設立、「エレクトリック・ブレインfeat.アストロボーイ」、「手塚治虫その愛した音楽」などのCDを制作する。また、ABCラジオ「Earth Dreaming~ガラスの地球を救え」のパーソナリティを担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

3人の「実の娘」たちが語る、家族からみた手塚治虫赤塚不二夫水木しげるの実像、ということで、かなり楽しみにしながら手にとりました。
しかしながら、読み終えてみると、この3人の巨匠たちに関するさまざまな本をこれまでに読んできた僕にとっては、なんというか、「いやまあ、身内であり、現在も親父の遺産で食っている立場としては、そんなに酷いことも言えないよね……」という、ちょっと消化不良な印象の本ではありました。
後で御紹介するような、「仕事仲間」や「長年のパートナー」から見た姿を書いた本に比べると、温かいといえば温かく、ぬるいといえば、ぬるい、そんな感じ。
もっとも、実の娘たちが、故人をバッシングしまくるような話を読みたい人もあまりいないのでしょうし、これはこれで、貴重な資料ではあるとは思います。
それにしても、「家内制手工業」の水木さんを除くおふたりは、本当に家に帰っていなかったんだなあ。

手塚るみ子さんによる「まえがき」の一部です。

 中学生の夏休みのこと。いつものように父は箱根旅行を計画したのですが、わたしは吹奏楽部の合宿と重なり、また家族旅行がかったるい年頃にもなっていたので、「わたしは行かないよ」と断ったことがありました。父はすっかり不機嫌になり、子供のようにふてくされていました。結局「忙しいお父様が、せっかく予定を立てたんだから」と母に説得され、半ば強制的に家族旅行へ参加させられたのですが、仕事に追われていた父は最後まで旅館に現れず、「こんなんだったら合宿にいればよかった」と、わたしはさんざん母に文句を言ったものです。
 漫画家の先生のなかには、父に仲人を頼むこともあったそうですが、大遅刻したり、ひどいときには現れなかったりしたそうです。「そんなことなら引き受けなければいいのに」と思うのですが、いま思えば、人に頼りにされるのが嬉しく、誰かを喜ばせたい一心で、安請け合いしちゃうんでしょうね。それもこれも、父のサービス精神の現れかと。人と楽しませること、喜ばせることが、手塚治虫の創作の源。生来のエンターテイナーです。

 こういう話を読むと、「みんなを喜ばせたい気持ちから、人の頼みを断れずに、スケジュールを詰め込みまくってにっちもさっちもいかなくなっている手塚先生の姿が浮かんできます。
 手塚先生の仕事ぶりは、福元一義さんが書かれた『手塚先生、締め切り過ぎてます!』によると、

 ちょっとここで、当時の手塚プロの締め切り進行のことを話しておきましょう。週刊誌の場合、掲載誌の発売日から逆算して1週間前というのが、編集者との間でもタイムリミットとして暗黙の了解事項となっていました。

 それが『アドルフに告ぐ』の場合は、3週間以上も早いスタートとなったのです。担当の編集者もスタンバイしていないのに原稿が出てくるなど前代未聞で、先生の体調も安静養生を医者から厳命されていて、執筆活動自体を慎まなくてはいけないような状況なのに、無謀としかいいようがありませんが、同時にこの作品にかける、先生の熱い思いを感じたものです。

 翌15日になって、『ブラック・ジャック』がまず20ページ台に到達して脱稿し、16日には『陽だまりの樹』が18ページで脱稿。またその他につくばの科学博のポスター(B全大)1枚も完成しています。そして17日午後9時、『アドルフに告ぐ』第1回10ページが、発売日から約3週間前という早さで脱稿しました。通常の手塚プロ漫画部としては、光速に等しい進行です。

 引き続いて、19日には『ブラック・ジャック』の2作目20ページを脱稿。そして、2日おいて21日には、第2回目の『アドルフに告ぐ』10ページを脱稿しています。実に、11日から21日までの10日足らずの間に、漫画78ページとB全のポスターを1枚仕上げたことになります。

 今になって振り返ると、その中にはアイデアに時間がかかる1話完結の短編が2本と、骨格をしっかり決めてから始まる長編の新連載が1本あることを考えると、とても医師に安静を言い渡された作家が病床で執筆した量とは信じられません……が、前述の私の就業日誌には、当たり前のように

「21日『アドルフに告ぐ』第2回10ページ 脱稿」

とだけあります。

というような、アシスタントが大勢いたとしても過酷なものだったのですが、これも、本人としては、「イヤイヤながらやっていた」のではなくて、「描きたいものがたくさんあったのに、とにかく時間のほうが足りなかった」と考えると、「そんなに働かなくてもよかったのに……」というのは、外野のおせっかいであるように思われます。
まあ、仲人を頼んでいたのにドタキャンされた人は、困ったでしょうけど……

あと、水木悦子さんのこんな話。

水木:そうそう、面白い話があるんです。姉は子供の頃、手塚漫画をすごく愛読していて、それで父親と喧嘩になったことがあるんですよ。姉は覚えていないって言うんだけど、わたしは覚えていて。怖かったんだから!


一同:なんですか?


水木:「お父ちゃんの漫画には未来がない。手塚漫画には未来がある」って言っちゃったんですよ。


(一同大爆笑)


水木:そしたらお父ちゃんが「これが現実なんだ! おれは現実を描いているんだ!」ってすごい剣幕で怒ったんですよ(笑)。

自分の娘から、こんなふうに厳しい言葉を浴びせられるとは、漫画家稼業っていうのもラクじゃないですね……
水木さんほどの人気漫画家でもこうなのだから。
桜玉吉さんが、『漫玉日記』は娘さんに読ませないようにしていた、という話をちょっと思い出してしまいました……

あと、僕は男なので、これを読みながら、「やっぱり女の子というのは、父親という存在にコンプレックスとか、『超えなければならない壁』と感じることが無いのかなあ」というようなことを考えずにはいられませんでした。
「父の素晴らしい作品を受け継いでいくことが、私の仕事」って、「息子」は、なかなか言えないんじゃないかと思うのですよ。
もちろん、世界の大部分の「息子」には、そんな巨大な遺産をのこしてくれる父親はいないのですが。

そうそう、今回この本を読んで、赤塚先生の『レッツラゴン』を読んでみようと思いました。
僕の赤塚漫画歴は『天才バカボン』で止まっているのですが、いま読んでみると『レッツラゴン』の突き抜けたセンスには驚かされます。


最後にこの3人の巨匠に関する本を、1冊ずつ御紹介しておきますね。どれもオススメできる本なので、興味をもたれた方はぜひ。


手塚先生、締め切り過ぎてます! (集英社新書 490H)

手塚先生、締め切り過ぎてます! (集英社新書 490H)

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赤塚不二夫のことを書いたのだ!! (文春文庫)

赤塚不二夫のことを書いたのだ!! (文春文庫)

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ゲゲゲの女房

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