琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない ☆☆☆


高校中退のニート・マ男は、母の死をきっかけにプログラマーとなり、何とか小さなIT企業に就職する。
しかし入社してみると、そこはサービス残業や徹夜は当たり前で、過酷な労働を社員に強いる「ブラック会社」だった。
変わり者の同僚に囲まれ、徐々に成長していくマ男をコミカルに描く。

キサラギ』の佐藤祐市監督による、ネット発の書籍『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』の映画化ということで、かなり楽しみにしていた作品。
主演のマ男役の小池徹平さんと「平成の孔明」藤田さん役の田辺誠一さんは、まさに「ハマっている」という感じで、「働くことのつらさと喜び」みたいなのがそれなりに巧く描かれていますし、観終えて爽やかな気分になれました。
ただ、良くも悪くも「ネット発の『いい話』を、ちょっとオタクっぽいエッセンスも取り入れつつ、コンパクトにまとめてみました」というのが伝わってきて、「巧さ」は伝わってくるんだけど「感動」するような映画じゃないんですよね。
もちろん、ずべての映画が「感動超大作」である必要なんてないし、仕事に疲れた週末に少し元気が出る映画っていうのは、すごく貴重な存在なんだけど。

ところで、この会社、『ブラック』というより、「先輩のイジメ」が最大の問題のように思われます。
品川さんの「ブァーーカ!」っていうのは、「会社でパワーハラスメントをしてくるイヤな先輩」の演技としては、ものすごく素晴らしいんですよ。
「イヤな奴、観客に憎まれるキャラクターを、圧倒的に不快な存在に感じさせる」という意味で、すごい名演。
でも、僕はあの「ブァーーカ!」を聞くたびに、子どもの頃に僕をイジメようとしていた連中とか、パワハラ上司のことを思い出して、すごく辛い気分になりました。
品川さんは「いい仕事」をしたんだけど、あまりにもナチュラルすぎたのかも……

結局、ハッピー・エンドっぽいけど、ブラック会社はブラックのままだし、イヤな奴に「天誅」が下されるわけでもないですしね……
「コミカル」って言うけど、僕には全然笑えるところがなかったです。
「ちょっといい話」ではあるけどさ。
あと、原作を読んでいないと、多くの展開が唐突で理不尽に感じられるかもしれません。とくに藤田さん絡みのエピソード。

あんまり深く考えずに家でDVDを観るには、そんなに悪くない映画だと思います。
しかし、病院もそうなんだけど、結局のところ、こういうところで頑張ってしまう人がいて、そういう人たちが偉くなっていってしまうから、労働環境の改善よりも「頑張れないヤツが悪い!」って方向に行ってしまうんだよなあ……

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