琥珀色の戯言

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マンガ脳の鍛えかた ☆☆☆☆


マンガ脳の鍛えかた 週刊少年ジャンプ40周年記念出版 (愛蔵版コミックス)

マンガ脳の鍛えかた 週刊少年ジャンプ40周年記念出版 (愛蔵版コミックス)

内容紹介
ベストセラーを生むジャンプ人気漫画家37人に
世界を驚かせるものづくりの発想法を訊く!

2008年に『週刊少年ジャンプ』は刊行40周年を迎えました。その年、誌上にて月に一度連載していた企画『マンガ脳の鍛えかた』。当時連載している先生達の仕事場を直撃取材し、こだわりの道具やカラー、構図、アイデア、キャラクター設定などテーマごとの技術を聞き出し、インタビュー形式で紹介してきました。
本書では過去連載分を大幅に加筆・修正したものに、新規ロングインタビュー、アンケートを加え、刊行40年を超えた『週刊少年ジャンプ』が築いてきたマンガ創作技術を凝縮しました。その総人数はズラリ37人!誰もが知っているベストセラーマンガを生み出した先生たちばかりです!
そんな彼らが語った総計15万字の貴重な言葉、さらには「仕事机」「道具」「資料」といった現場の写真からは、マンガ家を志望される人々はもちろん、クリエイティブな職に就く人々やビジネスマンにも必ず役立つであろう金言やヒントで埋め尽くされている永久保存版です!!


出版社からのコメント
傑作誕生の「現場」を直撃!「仕事場」「道具」「資料」......その他ヒミツアイテムを徹底紹介!!
登場するマンガ家の先生は次の通り!

 
第1章 総論編
マンガの真髄とは

本宮ひろ志(「サラリーマン金太郎」)、ゆでたまご[嶋田隆司&中井義則](「キン肉マン」)、鳥山明(「DRAGONBALL」)、高橋陽一(「キャプテン翼」)、徳弘正也(「ジャングルの王者ターちゃん●」※●はハート)、車田正美(「聖闘士星矢」)、荒木飛呂彦(「ジョジョの奇妙な冒険」)、森田まさのり(「ROOKIES」)


第2章 技術編
マンガ創作(マルヒ)テクニック

岸本斉史(「NARUTO--ナルト--」)、西義之(「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」)、星野桂(「D.Gray-man」)、稲垣理一郎(「アイシールド21」)、松井優征(「魔人探偵脳噛ネウロ」)、久保帯人(「BLEACH」)、矢吹健太朗(「TO LOVE るーとらぶるー」)、うすた京介(「ピューと吹く!ジャガー」)、空知英秋(「銀魂」)、島袋光年(「トリコ」)、天野明(「家庭教師ヒットマンREBORN!」)、村田雄介(「アイシールド21」)、小畑健(「バクマン。」)、大場つぐみ(「DEATH NOTE」)、尾田栄一郎(「ONE PIECE」)、秋本治(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』※「葛」の「ヒ」は「人」に「L」)


第3章 資料編
人気作家Q&A

高橋よしひろ(「銀牙--流れ星 銀--」)、宮下あきら(「魁!!男塾」)、萩原一至(「BASTARD!!--暗黒の破壊神--」)、冨樫義博(「HUNTER×HUNTER」)、井上雄彦(「SLAM DUNK」)、梅澤春人(『BФY』※「梅」の「毋」は「母」※「Ф」は「O」に「/」)、つの丸(「みどりのマキバオー」)、藤崎竜(「封神演義」)、和月伸宏(「るろうに剣心--明治剣客浪漫譚--」)、武井宏之(「シャーマンキング」)、許斐剛(「テニスの王子様」)、河下水希(「いちご100%」)
()内は代表作のひとつです。

これは「マンガ好き」「ジャンプ世代」にとっては、ものすごく読みごたえのあるインタビュー集だと思います。
ジャンプの歴代人気マンガ家たちが、「マンガについて」「プロのマンガ家として生きていくことについて」けっこう率直に語ってくれていますし、創作の技術的に関しても、懇切丁寧に、とはいかないものの、ヒントになるような面白い話をたくさん聞かせてくれています。
そして、この本の素晴らしいところは、人気マンガ家たちの本物の「仕事場」や「使っている道具」を切り取った写真の美しさ。
「機能美」というのは、こういうことを言うのだなあ、と痛感させられます。
もちろん、雑然とした仕事部屋もあるのですが、それはそれで秘密基地っぽくてそそられたり。
仕事場にもそれぞれの「個性」があり、「ここであのマンガが書かれているんだな……」と想像するだけでも楽しい本です。

ただ、この本の難点は、最近ジャンプに描いているマンガ家さんたちは長いインタビューを受けているのですが、往年の人気マンガ家たちは、扱いを小さくしたのか、本人たちが断ったのか、簡単なアンケートに答えているだけの人が多いということです。
鳥山朗さんはメールインタビューだし、第3章「資料編」の井上雄彦さんをはじめとする人気マンガ家たちはみんな、ひとりあたり1ページで、4つのアンケートに答えているだけなんですよね。
「40周年記念出版」であれば、もうちょっと「ジャンプの歴史をつくっていた大家たち」に切り込んでほしかったなあ。
まあ、いろんな「事情」はあったのでしょうけど。


鳥山明さんへのメールインタビューより。

Q8:ストーリー作りで気をつけていることをお教えください。

A(鳥山明):とにかく誰にでもわかりやすく。と心がけています。あとサラリとした読み味、不必要に感動させないこと、というへそ曲がり的な展開でしょうか。王道の展開と見せながら、いい意味でちょいと裏切ることも。


荒木飛呂彦さんの回より。

 今のマンガ界は、荒木の目にどう映っているのだろう。

「何だろうな……開拓じゃなくて、発展なのかな。昔からあるものを深めるとか、自分なりにアレンジする作りかたになってきているんじゃないですかね。最初はみんな真似から入るものだからそれでいいとは思うんだけど、今は先輩たちが作ってきたものをただそのまま焼き直しているようなものもある気がして。志を誤ってはいけない。そうならないためには、たくさんのものを見て、さらに見たものを分析する作業がすごく重要だと思います。分析しているうちに、好きなものに共通している何か……テーマみたいなものが見えてくるはず。それを、自分なりに発展させていけばいいんです」

 インタビューが終わろうとするその時、「あ、でもね」とひとこと。

「マンガを描こうと思っているなら、今僕がしゃべったことは無視した方がいいですよ。その方が可能性はあると思う」

 そう、ここは荒木飛呂彦というマンガ家がすでに強く踏み固めてしまった場所なのだ。

「うん。全部無視した方が、大物になれるってことです」

 と言って笑った。

人気マンガ家たちの言葉には、「あの人は、こんなことを考えて描いていたのか!」と驚かされたり、「マンガ家」という仕事の厳しさと、「マンガという絵」へのこだわり、読者にアピールするためのテクニックなど、興味深いところがたくさんあります。
「マンガ」に限らず、何かを創ろうという人間には、すごく参考になる本ですし、好きなマンガ家の「仕事場」を眺めて感動するのもまた一興です。

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