琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

サヨナライツカ ☆☆☆


サヨナライツカ [DVD]

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【ストーリー】
1975年、灼熱のバンコク
金・美貌・愛に不自由なく暮らし、“愛されること”を求め生きてきた沓子は、ある日、夢に向かって真っすぐ生きるエリートビジネスマン・豊と出逢う。
ふたりはたちまち魅かれ合い、熱帯の夜に溺れていく。
しかし、豊は結婚を目前に控え、日本に婚約者がいた。期限ある恋、かなわぬ恋だとしても、自分は彼を愛し続ける…。沓子は、愛することこそが本当の愛だと気付いてしまった。
そしてふたりは25年後のバンコクで、運命の再会をするが――。
人は死ぬ前に、愛することを思い出すのか、愛されることを思い出すのか――
バンコク、東京、ニューヨーク。一瞬の熱情が、25年の時を超え、一生の愛になる。

予告編を映画館で観たときの率直な感想は、「ああ、中山美穂、劣化したな……」でした。
ほんと、失礼なんですが、年齢云々というより、芸能人としてのブランクの長さのためか、「オーラ」みたいなものが失われていた感じ。
この映画、中山さんにとっては、「12年ぶりの映画出演」だそうなのですけど、それを聞いて、「中山美穂は、女優としての旬の時期に作品を遺すことができなかったなあ」と僕は嘆息せざるをえませんでした。

この『サヨナライツカ』、「異国での一時のアソビ」のつもりの恋が、実は「永遠の恋」だったという『マディソン郡の橋』みたいなストーリー。
僕は正直、『マディソン郡の橋』も、「夫の立場はどうなるんだ?」とムカムカしながら観ていたので(こういうのを観ると、「裏切られる側」に共感してしまうのです、いつも)、この映画も、「夢に向かって真っすぐ生きるエリートビジネスマン・豊」にも「ワガママで欲求不満なセレブ女・沓子」にも、全く感情移入できませんでした。
というか、豊は夢にじゃなくて、「性欲に向かって真っすぐ生きる打算的な男」にしか思えない。それでいて、こいつがまた全然傷つかないんだよね、ほんとうに酷い話だ……この男が息子に説教されるシーンなんて、あまりに安っぽすぎて噴飯ものだし。
そんなんで改心する(というか、よけい事態を混乱させるだけなんですが)ような男じゃないだろこいつは。

そして、沓子もなぜ突然「純愛女」になっちゃうのか全くわかりません。
そんなキャラじゃないだろこの女……
そんな兆候を作中で描くことなく、いきなり物語の途中で、「実はこんな純愛女だったのです!」なんてやられても、「は? 同一人物?」って感じでした。
しかも、現在40歳の中山さんが演じる沓子の若い時代はあまりに老けすぎていて、その「25年後」はあまりに若すぎる。というか、「若い頃の沓子」が、中山さんの現在の年齢相応にしか見えないので、「やたらとはしゃいでいる若づくりの中年女性」にしか見えず、「25年後」のシーンでは、「老けメイクの中年女性」にしか見えず、劇中での25年の時間の経過の重みを全く感じさせません。

そうそう、豊が勤めている航空会社の会議が、薄暗い部屋で、みんなボソボソとしゃべっていて、しかも豊が怪人みたいな老けメイクだったので、「この会社、悪の秘密結社なのか?」と思いましたよ。あの会議シーンはすごかったなあ。
監督は、『私の頭の中の消しゴム』のイ・ジェハンさんなのですが、韓国人がイメージする日本の会社の会議って、こんなおどろおどろしいものなの?

ただ、この映画、バンコクの風景はよく撮れているし、あまりに御都合主義な展開は、ネタとして観るにはけっこう面白くはあるんですよね。
中山美穂さんのファンには、オススメするべきか、やめたほうがいいと忠告するべきか、悩んでしまうのですけど。

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