琥珀色の戯言

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小川洋子対話集 ☆☆☆☆


小川洋子対話集 (幻冬舎文庫)

小川洋子対話集 (幻冬舎文庫)

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
日ごろ孤独に仕事をしている著者が、詩人、翻訳家、ミュージシャン、スポーツ選手と語り合った。キョロキョロして落ち着きがなかった子供時代のこと、想像力をかきたてられる言葉や文体について、愛する阪神タイガースへの熱い想い、名作『博士の愛した数式』秘話など心に残るエピソードが満載。世界の深みと、新たな発見に心震える珠玉の対話集。

【目次】(「BOOK」データベースより)
田辺聖子─言葉は滅びない/岸本佐知子─妄想と言葉/李昂藤井省三─言葉の海/ジャクリーヌ・ファン・マールセン─アンネ・フランクと言葉/レベッカ・ブラウン柴田元幸─言葉を紡いで/佐野元春─言葉をさがして/江夏豊─伝説の背番号「28」と言葉/清水哲男─数学、野球、そして言葉/五木寛之─生きる言葉

小川洋子さんの対談集。
ラジオでの小川さんの喋りを聴いていると、けっして饒舌な方ではないし、こういう対談は不得手なんじゃないかな、と思っていたのですが、読んでみると印象に残る言葉も多く、少なくとも小川洋子ファンにとっては価値のある本だと思います。
小川さんは(例えば、阿川佐和子さんのように)相手をリラックスさせて、面白いエピソードを「引き出す」ことに長けているわけではないのですが、対談相手が小川さん自身も好きな相手ばかりということで、「相手と一緒に考えて、ひとりではうまく言葉にできないことを、言葉にまとめあげている」っていう感じがします。
佐野元春さんとの対談は、明らかに「ファン目線」なのだけれど、ただ「好き!」っていうだけじゃなくて、佐野さんの音楽の魅力を、ものすごくうまく言葉にされているんですよね。小川さんは本当に「言葉にできないものを言葉にする」ことが上手い作家さんだなあ。

この本に収録されている、李昂さん、藤井省三さんとの「言葉の海」という対談のなかから。

李昂小川さんの小説のなかでは、性的な関係というものが、たとえ夫婦の間であっても、あまり描かれていないのはなぜでしょうか。小川さんが描かれている男女の関係というものが、愛情が非常に落ちついているものだからでしょうか、精神的な意味でのお互いの交流ということが中心だからでしょうか。


小川洋子それは非常に答えにくい問題ですが、私は読むのも書くのも恋愛小説はちょっと苦手なんですね。「おまえのことを愛している」というような場面を思い浮かべると、そこで思考が止まってしまうのです。経験のなさがなせることかもしれませんが、私にとって性愛の問題は想像力を非常に縛るものなのです。それを打ち破るために、たとえば数学者を登場させて、「ピタゴラスの定理は永遠なんだよ」と言うことが「君を愛しているよ」というのと同じ意味を持つような作品が書けないかと模索しているわけです。

僕も「恋愛小説」って苦手なので、この言葉には深く頷いてしまいました。
そして、自分が小川さんの作品に惹かれる理由の一端が、わかったような気がしたのです。
対談のなかで発せられたこの言葉そのものも、けっこう「美しい」と思いました。

たぶん、小川さんのファン以外には伝わりにくい本だと思うのですが、興味をもたれた方は、ぜひ。

猫を抱いて象と泳ぐ

猫を抱いて象と泳ぐ

↑僕は小川さんの作品のなかでは、これが一番好きです(時期的には、もう少し待てば文庫化されるんじゃないかな)
『猫を抱いて象と泳ぐ』の僕の感想はこちら。


博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

↑は「小川洋子入門編」として最適かと。
僕にとっての江夏は、「カープのリリーフエース」なんですけどね。