琥珀色の戯言

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十三人の刺客 ☆☆☆☆



映画『十三人の刺客』オフィシャルサイト

あらすじ: 罪なき民衆に不条理な殺りくを繰り返す暴君・松平斉韶(稲垣吾郎)を暗殺するため、島田新左衛門(役所広司)の下に13人の刺客が集結する。斉韶のもとには新左衛門のかつての同門・鬼頭半兵衛(市村正親)ら総勢300人超の武士が鉄壁の布陣を敷いていたが、新左衛門には秘策があった。


2010年17本目の劇場鑑賞作品。公開初日の土曜日の20時からのレイトショーで、観客は100人くらいは入っていました。
久々に時代劇を映画館で観たのですが(たぶん、北野武監督の『座頭市』以来。あれが「時代劇」かどうかは微妙?)、かなりテレビなどでも宣伝されていたこともあり、若いカップルがけっこう多かったです。
そして、60代以降と思われる男性も目立ちました。

この映画「エンターテインメント時代劇」としては、非常によくできていると思います。
役所広司さんは、あんまり時代劇っぽい演技じゃないけど、観ていて「この人にならついていける!」ってカリスマ性に溢れているし、役所さんのサポート役の松方弘樹さんは、いかにも重鎮、という存在感をみせてくれます。
そして、暴君を演じている稲垣悟郎さんがまた、いい仕事をしているんですよ。
ほんと、美形なだけに、「狂気の人」が似合うんだよなあ。
それで、「SMAPが役柄とはいえ、こんなヒドイことをやってもいいのか?」と、こちらが心配になってしまうくらいの熱演。
観ていて、「コイツはもう、斬るしかないっ! がんばれ島田!」と思わずにはいられない残酷っぷり。

まあ、観ていて、「こんな派手な襲撃をやらなくても、老中の権力があれば、毒を盛るなり、暗殺するなり、お家取りつぶしにするなり、いくらでも方法はあるんじゃない?」とも思ったんですけどね。
それが難しいのだとしても、現場で、あいつが乗っているときに橋を落とすとか、矢で直接狙うとか、あんなに大量の犠牲者を出さなくてもすんだような気も……
もっとも、それではエンターテインメント映画にならないですよね、僕もそんなふうに思いはするけれど、悪党が流れ矢にあたって即死、なんて映画を見せられたら興ざめ間違いなしです。

この映画のウリである、これでもか!とばかりに続く50分の戦闘シーン、僕は正直、ちょっと長いかな、と感じました。
もうみんな泥だらけで誰が誰だかわからないし、そんなオリジナリティあふれるチャンバラがたくさんあるわけもないので、最後のほうは飽きてきます。
こういう「飽きるくらい徹底的にやる」っていうのも、三池監督らしいといえばらしいのだけど。

全体的には、KOEIの『無双シリーズ』を大画面で見ているようで、かなりの爽快感ではありました。
どうみても、敵は200人どころじゃなかったような……

そうそう、僕がひとつすごく気になったのは、「13人目」のこと。
うーん、あの人の存在って、なんかすごく違和感があったんだよなあ。
せっかく主人公たちがいっしょうけんめいやっていて、観客も熱中しているのに、その興奮に冷水をぶっかけるような……

あの役柄って、この映画の元になった作品がつくられた1963年には、社会的な意味や作り手の主張がこめられていたと思うんですよ。
「侍や『侍の大義』よりも、庶民の力」
まだ「戦後」とか「社会運動」がリアルだった時代。
しかしながら、いま、この時代にみると、「なんであのへんな人だけ、特別扱いなの?」「どうしてこの斬りまくりエンターテインメント作品を『自己批判』しちゃうの?」
って感じなんですよね。
リメイクだからしょうがないとはいえ、僕はあの人はいらなかったなあ……

あと、この映画、けっこう残虐シーン満載です。
血がドバドバ、だけでなく、「グロテスクで、生理的に不快なシーン」もけっこう多いので、観に行かれる方は、御注意ください。

僕は久々の時代劇、けっこう楽しめました。
ただ、本当に「時代劇が好き」な人にとっては、「戦闘シーンの長さにばかり頼っていて、人物造形が足りない」と思われるかもしれませんね。

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