琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

のはなしさん ☆☆☆☆


のはなしさん

のはなしさん

内容紹介
伝説のエッセイが1年ぶりに帰ってきました。伊集院光tu-kaメールマガジン用に書き記した、たくさんのエッセイから、爆笑話を厳選ピックアップ!「愛だの恋だの」の話から「ん」の話まで、爆笑!感動!鳥肌!の全85話をお届けします。

『のはなし』は、僕がここ10年で読んだエッセイのなかで、確実にベスト3に入る「面白いエッセイ集」でした。
その続編『のはなしに』は、『のはなし』に比べると笑える話は少ないけれど、伊集院さんと奥様のエピソードなど、「人と人とのつながり」について、考えさせられたり、ちょっとホロリとされられる話が多く、やはり「傑作」だったのです。
そして、3作目の『のはなしさん』。
率直に言うと、この『のはなしさん』は、『のはなし』ほど面白くはなく、『のはなしに』ほど感動もできませんでした。

2001年から2006年にかけて、携帯電話会社tu-kaさんのメールマガジンに連載された全部で750話くらいの愚にもつかない話やら、かろうじて愚にはつく話やら、やや面白い話やら、おしりが四つに割れちゃうくらい超面白い話の中から「のはなし」で82話、「のはなしに」で85話、今回の「のはなしさん」で82話+新作が3本。

という、このシリーズの「成り立ち」を考えると、最初から3作も出すつもりではなかったでしょうから、750話のなかの、いちばん面白いグループを『のはなし』に収録し、次に面白いグループを『のはなしに』に入れたと思われますので(もちろん、「五十音順に並べる、という縛りがありますので、偏りができないように、同じ音に面白いものがたくさんあったからという理由で、選ばれなかった傑作もあったのでしょうが)、いたしかたないことではあるでしょう。
逆に、伊集院さんの書くエッセイが、みんな『のはなし』レベルであったらもう驚愕するしかありません。
それでも、今年読んだエッセイのなかで、この『のはなしさん』と同じくらい面白かったものは、大宮エリーさんの『生きるコント』くらいですし。
期待値が高すぎるだけに、少し物足りなく感じてしまったのだろうなあ。

僕がこの『のはなしさん』でいちばん印象に残ったのは、最後に載っている「『んー』の話」でした。
落語家時代の師匠、五代目(三遊亭)円楽さんの訃報を耳にして、葬儀に参列するかどうか、ひたすら逡巡する伊集院さん。
17歳から25歳まで師匠と弟子の関係だったのですが、伊集院さんが落語家を止めてしまったあとは全く交流がなく、もともと葬儀には行かない主義の伊集院さんは、「せめて最後の御挨拶をしたい」という気持ちと「行くと一門の人たちと諍いになったりするかもしれないし、参列せずにこのままやり過ごしてしまいたい」という気持ちの間で揺れ動きます。
その描写が、伊集院さんと同じように「いろんなことを考え過ぎて、結局何も行動を起こせないまま不義理を重ねてしまう」という僕には、ものすごく心に響いてくるのです。
長い間離れていたとはいえ、師匠の葬儀に行くのに迷ったことを率直に書く伊集院さんの「覚悟」もすごい。
最後にどういう決断を伊集院さんがくだしたかは書きませんが、伊集院さんを支える人たち(とくに奥様)の優しさとおおらかさは読んでいて心があったかくなりましたし、結局のところ「わだかまり」というのは、自分自身の心の中で、勝手に育ててしまっているものなのだなあ、と考えさせられました。
このエッセイだけでも、ぜひ多くの人に読んでみていただきたいです。

そろそろ、tu-kaメールマガジンの再録だけでなく、伊集院さんの新作がたくさん入ったエッセイ集を読みたいなあ、と期待しつつ、この『のはなしさん』もオススメしておきます。
まず『のはなし』を読んで、気に入ったら『のはなしに』、そしてこの『のはなしさん』の順番で読むのがいちばん楽しめると思います。

参考リンク:『のはなし』感想

のはなし にぶんのいち~イヌの巻~ (宝島社文庫 C い 6-1)

のはなし にぶんのいち~イヌの巻~ (宝島社文庫 C い 6-1)

のはなし にぶんのいち~キジの巻~ (宝島社文庫 C い 6-2)

のはなし にぶんのいち~キジの巻~ (宝島社文庫 C い 6-2)

『のはなし』は文庫化もされています。
たぶん、「いま文庫で読める、もっとも面白いエッセイのひとつ」ではないかと(正直、この分量の単行本を、わざわざ分冊しなくても……とは思いますけど)。

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