琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

錨を上げよ ☆☆☆


錨を上げよ(上) (100周年書き下ろし)

錨を上げよ(上) (100周年書き下ろし)

錨を上げよ(下) (100周年書き下ろし)

錨を上げよ(下) (100周年書き下ろし)


「ひとり本屋大賞」ついに最後の10作目。

うーん、これはまさに怪作。
上下巻がそれぞれ600ページもあり、しかも各ページには字がギッシリ。
あの『永遠の0』の著者の渾身の長編、さて、どんなスケールの大きな作品かと思いきや……

物語は、主人公、作田又三が生まれたところからはじまります。
世の中にうまくなじめず、自分を曲げられない男、又三。
この男が、日本の「戦後」をどのように生きて、どんな「大きなこと」をやって、日本を動かそうとしていくのか……

うーん、なんかすごいプロローグだな、又三の怠惰な学生生活だけで、上巻が終わりそうなんだけど……

おお、船に乗って、これから国際情勢に巻き込まれたりしていくのかな……

……えっ、これで終わり?本当に?

……この1200ページを読むのに使った時間を返してほしい。
この小説を読み終えるくらいの忍耐力と時間があれば、ずっと僕にとっての「積読書」である『カラマーゾフの兄弟』を全部読めたんじゃないかな……


この『錨を上げよ』何がすごいって、1200ページにわたって、主人公・作田又三というチンピラが酔っぱらってクダを巻いているような自分語りが延々と続くことです。
彼の前半生のクライマックスは「密漁」!
『錨を上げよ』って、なんか大きなことを始める「たとえ」だと思うじゃないですか。
でも、そのまんま。
どんなに辛抱して読み進めても、『錨』しか上がりません。


1200ページもの間、又三が思いつきで新しいことをはじめて、女が出てきて、又三とからんでトラブルになり、又三がその生活に嫌気がさし、また新しいことをはじめる、という繰り返し。この無限地獄のような小説を、どんなふうに着地させるのかと思いきや、全然着地もせずに終わっちゃうんだよこれ……


ある意味、この「売れる本以外は出版されない時代」に、こんなオッサンのクダ巻き小説が出版されたというのは、すごいことだと思います。
こういうのに「人生の真実」があると考えてしまう人もいるのでしょう。
僕は「在庫が余りすぎて倉庫のスペースをとりすぎているから、出版社が頼み込んで『本屋大賞』にノミネートしてもらったのでは?」としか感じませんでしたが。


とか言いながらも、結局、1200ページ読み切れたということを考えれば、けっして、「ものすごくつまらない」ということもないのかもしれません。
でも、こんな長いのを読むと、情が移るというか、「こんなに苦労して読んだのだから、つまらない作品のはずがない(と信じたい)」というバイアスがかかってくるのも事実。


少なくとも、僕は他人にはこの小説を薦めません。
「よっぽど暇じゃなきゃやめといたほうがいいし、そんなに暇なら、もっと読んでみるべき小説があるんじゃないか?」と言っておきます。

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