琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

GOSICKVII‐ゴシック・薔薇色の人生‐ ☆☆☆


王妃ココ=ローズを殺したのは、誰!?
……禁忌の謎にヴィクトリカが挑む!!

クリスマス直前の気分に華やぐ聖マルグリット学園。だが、外の世界では「2度目の嵐」が迫りつつあった。父ブロワ侯爵によって首都ソヴレムに召喚されたヴィクトリカ、心配で後を追う一弥。ソヴュール王国最大のスキャンダルにして謎、王妃ココ=ローズの首なし死体事件に挑むふたりの侯爵に謀略が……。豪華劇場に過去と現在が交錯し、大いなる罪が暴かれたとき、世界はその様相を変える。ヴィクトリカと一弥の運命は!?


桜庭一樹さんは「まだ続きを書く」と仰っていたのですが、正直、『GOSICK』の新刊が本当に出るとは思っていませんでした。
アニメの評判がけっこう良くて、これまでのシリーズもかなり売れている、という要因もあるのでしょうけど、桜庭さんはもうこの作品から「卒業」してしまったとばかり。
読んでみると、序盤がこれまでのシリーズに比べて、情景描写などがやや冗長で「硬い」感じがしたのですが、それは直木賞作家にまでのぼりつめてしまった桜庭さんが、以前の感覚を取り戻しながら書いていったプロセスなのかな、と思います。
登場人物の行動も、これまでのシリーズに比べると、ややおとなしめな感じ。
いまの桜庭一樹が、昔の桜庭一樹のマネをして書いている、ような印象です。

トリックに関しては、僕は『GOSICK』シリーズは「1」が白眉だと思っており、この『7』は、設定が派手なわりには、トリックのインパクトはいまひとつ、なのですが、とりあえずヴィクトリカと久城一弥のやりとりは相変わらずで、読んでいて安心できます。
マンネリといえばマンネリなんですが、シリーズものには、こういう「マンネリ感」って大事。
前作からだいぶ間隔が開いてしまっているわりには、ブランクをほとんど感じさせない続編でした。

ところで、最後まで読んでもわからなかったのですが、これで『GOSICK』は完結なのでしょうか? この「7」からは、「あんまり悲劇的な結末を書きたくないけれど、このまま書いていけば、そうならざるをえない」という作者の迷いを感じるんですよ。いっそこのまま、「終わったような、終わらないような作品」として封印してしまうほうが、読者にとっても幸福なのかもな、と僕は考えてしまいました。
まだ解決されていない謎は残っているので、みんな続編を期待しているのでしょうし、僕もこのままでは「すっきりしない」のですが、「ずっとこのまま」のほうが良い世界っていうのも、あるような気がするんですよね……

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