琥珀色の戯言

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医学部を出て主婦になるのは悪いこと?

まずはこちらを。
参考リンク:Togetter - 「医学部を出て主婦になるのは悪いこと?」


 うーむ、これを読んでいてまず感じたのは、ここで槍玉に挙げられている「医学部を卒業して、専業主婦になる女性」って、そんなに大勢いるの?ということでした。
 間もなく40歳になる僕の同級生には、「結婚を期にフルタイムではなくてアルバイト中心になった」とか「健診メイン」とか「もともと自分は臨床には向かないと思っていたので、保健所に勤めている」というような女性はいるのですが、「結婚して(あるいは、子供が生まれて)、ずーっと専業主婦」なんて人はいません。
 他の学年や大学では、そういう話を聞いたことはあるのですが、割合としてはごくごくわずかではないかと思います。
 そういえば、僕の妻も子育てでしばらく仕事を休んでいたのですが、最近まずアルバイトで復帰しました。短い時間でもなかなか身体がついてこなくて大変みたいです。
 国立大学の場合には、どうしても「医者を育てるのにはお金がかかる」「税金を使っているのだから」という話になりますし、私立にしても「限られた医学部の枠が無駄になる」と考える人もいるのでしょう。
 それは気持ちとしてはよくわかりますし、僕も優秀な女性医師が結婚・出産などで、何年も「医者としていちばん身体が動く時期に仕事を休んでしまう」のはもったいないなあ、と思っていました。
 実際、それを嫌って、結婚や出産を避ける女性もいます。


 その一方で、僕は医学部の同級生たちから、「医者と学校の先生というのは、女でも一生続けられる(続けやすい)仕事だから」という言葉を何度も聞きました。「HBS(ハーバード・ビジネス・スクール)卒の女性の7割が専業主婦」というのには僕も驚きましたが、それは、彼女たちの能力を活かせる環境が、ビジネスの世界には乏しい、という一面があるのかもしれません。
 医師免許を持っている人にとっては、アルバイトでも、「医療関係の仕事をするのが、いちばん割がいい」のも事実だし。


 基本的に医学部に入った時点で、「医者にならない」つもりの人は、ほとんどいません(研究者志向の人はいます)。
 そういうつもりで入ってくるには、医学部というのはけっこうキツイし、良いパートナーを捕まえるにしても、あまりに悲惨な成績だと、さすがに厳しい。
 もともと「医者になってはたらきたい」という意思は、かなり強い集団なんです。
 もちろん、それは、男女にかかわらず。

 
 医学部という集団のなかにも、大学で学んでいく途中で、あるいは研修をやっていくうちに「自分は医者に向かない」「ほかの仕事をやりたい」と考える人たちは出てきます。
 それでも、医学部卒業生の「医療関係への就職率」は、非常に高いと思いますし、仕事の性格を考慮すると「医者になりたくない人」にも医者になることを強要するようなシステムは、かえって怖いのではないかな。


 どんな業界でも、「職業訓練校に入ってはみたけど、やっぱり自分には向いていなかった」という人は、一定の割合存在するはずです。
 医学部というのは、いろんな「医療関連の仕事」を含めれば、一人一人の教育にコストがかかる一方で、全体としてみれば、「無駄な投資」は、そんなに多くはないはず。
 「医療業界」には、けっこういろんなタイプの仕事があるんですよね。
 それに「ツブシがきかない学部」であることを、医学部生はみんな自覚しています。「医師免許を取れない医学部生」になることを、極度におそれているのです。医学部に入るとそれなりにもてはやしてくれますが、「中退」すると、世間の目も厳しい。


 僕がこの話でいちばん懸念しているのは、こんなふうに「医学部に入学する人は、一生医者として働くように」とか「女性も仕事をやめてはならない」なんていうことになれば、それは「医者という職業人の均質化」を生むのではないかということです。
 世の中に新しくうまれてくる医者が、同じような「気合いの入った若い男子」ばかりになるのって、それはそれで異常なんじゃない?
 いろんなキャラクターの医者がいたほうが、患者さんにとっても、「自分に合った人を選べる」というメリットがあるし、医者の世界のなかでも、研究や基礎医学などをやる人、あるいは、健診をメインにやる人も必要です。
 そりゃあ、医者としてのレベルは、ある程度「均質化」されていないと困るでしょうけど。


 医者不足は、やっぱり「医者になるのがイヤになってしまった人」「医者に向いていない人」を無理に医者にするよりは、医学部の定員を増やしたほうが良いはず。
 とくに、「一度社会に出てから、医者になりたいと思うようになった、モチベーションの高い人」に「社会人枠」として医者への道を積極的に開くべきではないかと。


 この仕事には、いろんな面があって、いろんな患者さんに対応しなければならないので、自分が本当に医者に向いていると実感しながらやっている人というのも、そんなに多くはないでしょう。
 それなりには給料をもらっているとはいえ、よくみんな、こんな忙しくてめんどくさい仕事を、やり続けているものだとも感じます。


 しかし、「医者を妻にした男」としては、「仕事で自分を生かしてほしいし、お金も稼いでくれると助かる」一方で、「母親が子どものそばにいてくれると安心する」のも事実なんだよね。
 自分がなかなかそばにいられないということもあって。

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