- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2011/06/08
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<ストーリー>
幕末から明治。激動の時代を智恵と愛で生き抜いたある家族がいた-
代々加賀藩の御算用者(経理係)である下級武士の猪山直之(堺雅人)は、稼業のそろばんの腕を磨き出世する。しかし、親戚つき合い,養育費、冠婚葬祭と、武士の慣習で出世のたびに出費が増え、いつしか家計は火の車。一家の窮地に直之は、”家計立て直し”を宣言。家財を売り払い、妻のお駒に支えられつつ、家族一丸となって倹約生活を実行していく。見栄や世間体を捨てても直之が守りたかったもの、そしてわが子に伝えようとした思いとは-。世間体や時流に惑わされることなく、つつましくも堅実に生きた猪山三世代にわたる親子の絆と家族愛を描いた物語。
なんというか、原作の『武士の家計簿』とは別物の、親子の葛藤を軸とした「ホームドラマ」になってしまっているのですが、まあ、これはこれでけっこう面白かったです。
なんといっても、主人公・猪山役の堺雅人さんと妻・お駒役の仲間由紀恵さんが良かった!
演技がすばらしく良い、っていうわけではないのですが、この2人の役者さんのたたずまいが好きな僕としては、「内容はさておき、その場にいるだけでおおらかな気分になれる仲間さんの『お駒』が観られただけで、そこそこ満足」できました。
「算盤で生きていくしかない」という猪山家で「家業」を子供に正しく伝えたいと思うあまり、厳しく接してしまう親、それに対して、なんでも「お金の話」になってしまうことに反発する子供の葛藤。
よくある話ではありますが、それだけに、普遍的なテーマであることは間違いありません。
僕も自分の父親と同じ仕事をしていますので、子供の気持ちになってみたり、自分の子供のことを考えてみたり。
まあ、原作の『武士の家計簿』というのは、「武家社会のなかの経済観念の変化」と、「明治維新という大きな改革には、刀だけではなく、算盤をふるって活躍した人たちの力があった」ことを描いた新書なので、この映画のなかでは、猪山家が単なる「異端」として扱われているようなのが、ちょっと残念ではありました。
いや、きっちり家計簿をつける家なんていうのは、当時でも少数派ではあったのでしょうけど。
この作品のなかで、いつの間にか借金まみれになって破産寸前となった猪山家を救うために、主人公は、ある「決断」をします。
これぞ、「算盤侍」の面目躍如、という行為なのですが、この場面は、森田芳光監督の「いまの日本にも、猪山家と同じ選択をする『勇気』が必要なのではないですか?」というメッセージのように僕には思えました。
一時の体面や惰性となっている快楽のために借金を雪だるま式に増やすことが、本当に「現実的な選択」であり、「しかたがないこと」なのでしょうか?
原作(原案?)の新書、『武士の家計簿』は、歴史好きにはたまらない本だと思いますので、こちらもぜひ。
- 作者: 磯田道史
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/04/10
- メディア: 新書
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