琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

最後の忠臣蔵 ☆☆☆☆


大石内蔵助以下、赤穂浪士四十七士による討入り、切腹というクライマックスは「忠臣蔵」 の本当の結末ではなかった。
なぜなら、赤穂浪士の中に討入り後の 「使命を与えられた」 二人の生き残りがいたのだ。


一人は、討入り前夜にすべてを捨てて姿を消した瀬尾孫左衛門。
もう一人は討入り後、切腹の列に加わることを許されず、大石内蔵助より「生き証人として、後世に真実を伝えよと」との密命を受けた寺坂吉右衛門
それから16年、名誉の死を許されなかった二人が再会する。
かつては厚い友情で結ばれた二人が、かたや命惜しさに逃げた裏切り者、かたや英雄になれなかった死に損ないとして─。


あの日、孫左衛門に何があったのか?


 映画館で上映中から気になっていた作品。
 自宅でDVDを鑑賞しました。


 役所広司さんって、ほんとうに良い役者さんだなあ、と思います。
 ざっくばらんに見えて、奥に秘めた「何か」を感じさせてくれる、希有な俳優さんです。
 そして、大石内蔵助の遺児・可音を演じた桜庭ななみさんの「お嬢様」っぷりもよかった。
 最後は、「やはりこうなるのか……」という結末だったのですが、考えてみると、この物語を「完結」させるには、これしかない、のでしょうね。


 僕にとっては、佐藤浩市さんが叫ぶ、「生き残ったもの、討ち入りに参加しなかった者たちのほうが、この16年間つらかったのだ!」という言葉がすごく印象に残りました。
 赤穂四十七士は、「討ち入り」まで艱難辛苦をなめてきて、討ち入りは成功したものの、彼らは切腹を申し付けられました。
 それは、端からみれば、「忠義を貫いた果ての悲劇」だったのです。
 でも、彼らの義挙が輝かしいものだったため、逆に「参加しなかった不忠、あるいは臆病者たち」は、世間から厳しいバッシングを受けることになったのでしょう。
 史実でも四十七士の親類が、周囲から「討ち入りに参加しなかったこと」を責められて自害しています。
 討ち入りに参加しなかった(できなかった)人々にとって、世間の風当たりは、そうとう厳しかったはずです。
 このような「仇討ち」がもてはやされるのは、実際にそれを実行できる人がごくわずかしかいないからであって、「討ち入りなんて、できない人」のほうが、「普通の人」のはずなのに。
 そう考えると、この映画も、役所さんの格好良さばかりが際立ってしまって、このあとどうなったんだろう?と想像すると、ちょっと悲しくなってきます。


 ところで、以下はネタバレ的な話を。
 このストーリー、どこかで読んだような、と思いながら観ていたのですが、『史記』に出てくるエピソードをもとにしているのではないかと思います。
 詳しく紹介されているブログがありましたので、ご紹介しておきます。
 ただし、これを読むと『最後の忠臣蔵』のネタバレにもなりますので、未見の皆様は御注意ください。


参考リンク:中国古典の魅力(2)史記 趙世家から - 鳳山雑記帳 - Yahoo!ブログ

 この話、中学生くらいのときに読んで、泣いてしまったのを覚えています。
 ちなみに、このブログで紹介されている、宮城谷昌光さんの『孟夏の太陽』という作品は、歴史好き、中国史好きにとってはたまらない名作ですので、機会があれば、ぜひ読んでいただきたいです。

 僕がタイトルや予告編から予想していたよりも、はるかに「ラブストーリー寄り」の作品ではありましたが、出演している役者さんたちに、ちゃんと存在感と役割がある、佳作だと思います。
 それにしても、安田成美さんがこんな役をやるようになったというのは、『風の谷のナウシカ』で音程を外しまくっていた時代から知っている僕にとっては、感慨深かったなあ。

孟夏の太陽 (文春文庫)

孟夏の太陽 (文春文庫)

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