琥珀色の戯言

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官僚に学ぶ仕事術 ☆☆☆


内容紹介
みなさんは官僚というと、どのようなイメージが思い浮かぶでしょうか。

「何か悪いことをしていそう」「自分たちのことばかり考えていて、日本のことを考えていない」というネガティブな印象から、「国のために身を捧げてがんばっている」「死ぬほど残業の多い過酷な労働環境でよくやってるなぁ」というポジティブな印象まで、そのイメージは十人十色だと思います。

しかし、官僚の頭脳が優れていることは、多くの人が認知していることではないでしょうか。

本書では、中央省庁の現役キャリア官僚が、霞が関で培ってきた仕事術について紹介しています。
日本最高峰の頭脳集団が実践する、最小のインプットで最良のアウトプットを生み出すテクニックをあなたもぜひご覧ください。

「官僚に学ぶ」なんて、なんかこうちょっと嫌な感じだな、と思いつつも、「日本を代表するエリート集団なんだから、先入観は抜きにして、学べるものも多いのではないか」と考え直して購入。

 結論から言うと、「まあ、普通のビジネス書・自己啓発書」だったんですけどね。
 著者が「官僚」でありながらも、「自分はちょっと他のみなさんが思っているような『官僚』とは違いますよ」ってほのめかしているところは感じ悪かったし、頻出する(○○ですが、笑)なんていう表現には「なんでこういう読者に不快感を抱かせるような「笑えない、(笑)」を編集者は直さなかったんだ?」と疑問にもなりました。

 ただ、この新書は、以下の人たちには役に立つと思います。
(1)官僚の仕事内容に興味がある人
(2)英語の勉強、とくに、TOEICで高得点を取るような「英語の勉強」をしたい人
(ただし、これはもっと有効な書籍がたくさんあるかもしれません)

 ……うーん、他には思いつかない……

 官僚になって驚いたことは、政策立案に関わっている実感がほとんどないにもかかわらず、あまりにも多くの仕事量があることでした。資料をコピーして関係者に配布したり、局内の意見を集約したりするだけで、毎晩の帰宅時間は深夜2時とか3時を過ぎてしまい、土日出勤も含めて月に150時間残業していました。中でも、霞が関からほど近い「永田町」に関係するような、国会答弁や法案作成という業務では、霞が関全体が文字通り「不夜城」となり、多くの職員が夜を徹して働いています。
 この業務量の多さに耐えかねて、朝、起きられないほどの腰痛に悩まされたり、原因不明のイボが手の指にできたこともありました。冒頭に述べたように、大臣用の国会答弁書作成の徹夜業務がたたって、国会内で倒れたこともありました。

 「官僚」っていうのは、本当に激務であることがよくわかります。
 でも、そういった生活をおくっている、官僚たちの余裕のなさが、「効率化」「根回し」重視の「つまらない政治」の元凶となっているような気がしてなりません。
 
 著者は、たぶんすごく頭の良い人なのでしょう。
 でも、そのおかげで、この本は、「読みやすいけど、実行するには敷居が高い内容」になってしまっています。
 「勉強するためには、通勤時間に電車で本を読め」「仕事を早く済ませて、なるべく残業をせず、自分の時間を持とう」
 多くの人にとっての問題は、「通勤時間には疲れきっていて堅い本など読む余裕がない」「そもそも、仕事を早く済ませようと思っても、なかなか終わらせることができない」ってことなんですよね。
 この新書のなかで、「政治家に説明する時間が3分しか与えられない状況」の話が出てきます。某大物政治家の場合は、「最初の30秒で興味を持ってもらえなければ、残りは聞いてすらもらえない」そうです。
 その話を読んだ僕は、「ああ、ここで、その『最初の30秒で心をつかむためのノウハウ』が明かされるのだな」と期待したわけです。
 ところが、この新書のなかでは、「このためには、例えば、その政治家の地元のデータを示すことも役に立ちます」というようなちょっとしたコツが、5行程度書かれているだけ。
 たぶん、「普通のビジネスマン」が悩んでいるポイントは、著者にとってはあまりに簡単すぎて、「飛び越えてしまっている」のです。
 こういう「読者が求めているものとの乖離」とか、先ほどの無駄な(笑)の濫用に対してあまりにも無頓着ところなどは、「編集者も、もうちょっと仕事しろよ……」と言いたくなります。

 基本的に、この新書は「他人とちょっと違う生きかたをしてみたいエリート向け」なのでしょう。
(まあ、ビジネス書、自己啓発書なんてみんなそんな本ばかりで、結果的に、「みんなが同じ『ちょっと他人と違う生きかた』をしてしまっている」のですが。そういえば、「他人とは違うサブカル好きで個性的なワタシ」と自称する奴らが好きなサブカル・アーティストはみんな同じ人、っていう話もあったな)

 正直、「つまらなくはないのだけれど、心に引っかかるところが、ほとんどない新書」ではありました。

 仕事上のアウトプットを得るためには、様々なインプットが必要となります。業務マニュアルを読み込んだり、その分野の書籍・専門誌等を読み込むことが必要なこともあるでしょう。しかし、その分野のことを何でも知っている専門家でない限り、一般の行政官にとってはインプットというのはやり始めると際限がないので、ハマりすぎないようにむしろ気をつける必要があります。特に、担当分野の知識を多く身につけることは、仕事をしたような気になりますが、実際にはその知識をアウトプットできなければ社会に貢献するという本当の意味で仕事になっておらず、自己満足に終わってしまうため、注意すべきです。
 このため、私はアウトプットに必要な部分だけ、つまみ食い的に知識を入れるようにしていました。必要な用語等も、専門誌を漠然と読むより、アウトプットを意識しながら厳選して頭に刻み込んでいったほうが、効率がよいのです。

 頭の良さを、「効率」を極めることにしか使えない人生に、僕はあまり魅力を感じないんです。
(しかも、この新書では、こういう話のときに「アウトプットに必要な部分をどうやって見分けるのか?」というような「役に立つノウハウ」が紹介されているわけでもありません。それをみんな知りたいはずなのに)

 せっかく、「日本最高峰の頭脳集団のひとり」として生をうけたのなら、「最小のインプットで最良のアウトプット」なんてことよりも、もっとスケールが大きいことに、その頭脳を使ってほしいよなあ。

 なんというか、日本という国は、「エリートたちの使い方」を根本的に考え直したほうが良いのではなかろうか。

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