琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

中国嫁日記 一 ☆☆☆☆


中国嫁日記 一

中国嫁日記 一

内容紹介
40歳オタク日本人の元に中国から嫁が来た!!
2010年の7月の開始以来、あっという間に話題をよび、メディアでも多数取り上げられた大人気ブログ「中国嫁日記」がついに書籍化!!
公衆トイレに紙があることに感動!
味噌汁に香菜!?
中国嫁・月(ユエ)の珍行動と慣れない日本語に思わず吹き出すこと間違いなし!
そして、いつの間にかこんなお嫁さんがほしくなる!?
書籍化にあたり、ふたりの出会いを描いた約50ページの書下ろし漫画を収録!!

書店のコミックコーナーで探してもなかなか見つからず、「ネットで話題になっていても、地方都市のちょっと大きめの書店では入荷してないのかな……」なんて思っていたら、入り口近くの目立つ場所に平積みになっていました。
だいぶ売れているみたいで、「ネット発」の書籍では、久々のヒットになりそうです。

僕もヘビーネットユーザーなので、「ネット発」の本には、なんとなく感想を書きにくいところがあるのですが(「仲間意識」みたいなものと「ちょっとした嫉妬」みたいなものが入り交じってしまうので)、この『中国嫁日記』は、楽しく読むことができました。

書籍化される前までは、このブログ、あんまり読んだことがなくて、率直に言うと、「日本と中国の経済格差を利用して若い女性と結婚した男の自慢話なんだろ」なんて思っていたんですよね。


いや、実際、このふたりは「経済格差」がなければ出会っていなかったと思うし、夫婦の関係を安定させるには「経済力」って大きいんですよ。
そりゃあ、井上さんは大金持ちじゃないかもしれないけれど、多くの中国人よりは「金持ち」でしょうし、もし僕が中国の若い男だったら、こんな美人(らしい)の女性が、異国の男性と結婚してそれなりに幸せそうにしているのをマンガで読まされたら、「なんだかなあ」と感じるのではないかと思うのです。


そもそも、「夫婦ののろけ話」なんていうのは「犬も食わない」ものだし。
でも、「どうしようもないオタク」で、40過ぎまで独身、月さんと出会うまで「結婚」なんて考えたこともなかった、という井上さんの「月さんとのなれそめ」の話を読んで、僕はなんだか井上さんにすごく親近感を抱きました。
お見合いの際、「日本人とだってうまくいかないんだから、言葉の通じない中国人とうまくいくわけがない」とめんどくさがってしまうところとか、月さんが「若くてカワイイ」のに驚き、喜ぶのではなく、「こんな子が自分を好きになってくれるわけがない」とネガティブ思考になってしまうところとか、「ああ、僕も同じ立場だったら、こんな感じになるだろうな……」と。
日本人の「モテ男ナンパ入れ食い体験記」よりも、よっぽど僕にとっては「共感できる」。
そして、「なれそめはどうあれ、こうやって二人が幸せに暮らしているのなら、それはそれで良いのかな」という気がします。


僕が知っている、日本人と中国人、あるいは東南アジアの人たちとの「結婚生活」は、必ずしも幸せなものばかりではありません(もちろん、不幸なものばかりでもありませんが)。
相手が日本での生活にうまくなじめなかったり、「日本に来るためだけの結婚」「お金の為だけの結婚」で、「金の切れ目が縁の切れ目」になったり。
この本を読んでいると、日本から中国に来ている月さんのことにばかり目が向いてしまうけれど、井上さんだって、いろんなギャップを受け入れるために努力しているはずです。

月さんのおおらかで好奇心旺盛な性格と、こんな自分と結婚してくれるなんて……という井上さんの「感謝」が、いまの生活を幸せにしているのであって、それは、日本人同士の結婚でも、同じこと、なんですよね。


お盆だったので、僕は妻の実家に行き、義父母、義兄夫婦と一緒にごはんを食べ、墓参りに行ってきました。
妻の実家は、毎年お盆にはちゃんと盆提灯をつけて、親族が集まり、亡くなった人をお迎えする、という習慣を続けています。
僕の実家は開明的だったのか、それとも単にめんどくさがりだったのか、お盆には「めったにないお休みだから、旅行にでも行こう」ということが多くて、「日本の伝統的なお盆の行事」は、ほとんど体験したことがありませんでした。
妻の実家に行くのは、正直、気を遣うところもありますし(みんな本当に良い人たちばかりなのですが、僕の性格的に、他人とフラットに接するのは難しいのです)、せっかくのお休みだから、のんびりしたいなあ、という気持ちもあったんですよね。
でも、実際にそうやって一日を過ごしてみると、「ああ、こういう暮らしもあるのだなあ」という新鮮な気持ちにもなりました。
自分の家に帰ってきたら、疲れていて朝までぐっすり熟睡してしまいましたけど。


結婚っていうのは、ひとつの「異文化交流」なのだと思います。
それは、日本人と中国人だから、ではなくて、日本人同士の結婚でも同じ。
井上さんと月さんの場合、「国際結婚」だから、その「違い」が見えやすいけれど、他人だった人と一緒に生活をするというのは、お互いに「驚きと発見と我慢の連続」なんだよね。
とか偉そうに言いながら、僕も「なんで味噌汁にニンジンが入っているんだ……」というような「これまでのお互いの常識のギャップ」を実感しつつ生活しています。
そのなかで、息子はまた、僕たちの影響を受けながら、自分の「常識」をつくっていくのだろうなあ。


月さんは「あとがき」にこう書かれています。

 中国の古いことわざに、「愛屋及烏」というものがあります。「人を愛したら、その人に関するどんな細かい欠点やおかしな癖さえも、愛しく見えるようになる」という意味です。ですから、夫も私の寝坊癖も許してくれるのでしょう(笑)。


「経済力に差がある国のあいだでの国際結婚」という、微妙な話を扱っているにもかかわらず、このブログが、中国の人も含めて広く読まれているのは、たぶん、ここに「人間関係における、普遍的な問題と、それを乗り越えるためのヒント」が書かれているからだと思います。


それにしても、「サンマの頭を取るかどうか」でブログのコメント欄が炎上した」なんて話を読むと、ネットの人たちには、まだまだ「愛屋及烏」の心が足りないなあ、と考えずにはいられませんね。

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