琥珀色の戯言

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GOSICKVIII‐ゴシック・神々の黄昏 ☆☆☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
クリスマス当日、ヴィクトリカが所望したのは、15個の謎―必死で謎を集める一弥は、村に起こりつつある異変に気づく。それは、大いなる変化、すなわち“2度目の嵐”の前触れにほかならなかった。迫る別れと、自分の運命を正しく予感したヴィクトリカは、一弥にある贈り物をする。一方首都ソヴレムでは、ブロワ侯爵が暗躍、娘ヴィクトリカを武器に権力を握ろうとしていた―大人気ミステリ怒涛の最終ステージへ。


 ついに完結。
 一時は中断していたこのシリーズ、アニメ化を契機に復活し、この『場Q』で大団円を迎えました。
 この最終巻、これだけ読んだら、たぶん、「ベタな少女マンガみたいな話」だと思ったかもしれません(まあ、いきなり最終巻だけ読む人も、そうそういないでしょうけど)。
 でも、「1」から『GOSICKs』と、ヴィクトリカ、久城一弥の冒険と成長を追ってきた読者にとっては、すごく感慨深いというか、心に染みる作品になっていると思います。


 『最終巻』は、ある意味、『GOSICK』らしくない作品です。
 これまでのシリーズは、ある大きな事件があって、それをヴィクトリカが解決する、という、「ミステリ」でした。
 ところが、今回は、ヴィクトリカは「探偵」ではなくて、戦争という歴史の波に翻弄される「当事者」であるため、「謎解き」の面白さは皆無です。
 読者は、ヴィクトリカと一弥の「ドラマ」を追っていくことになります。


 僕は、これまでの『GOSICK』シリーズを読んでいて、最終巻は、きっと、悲しくて、せつなくて、でも希望の欠片は残っているような、たとえば『銀河鉄道999』の最終回のような話になるんじゃないかな、と予想していました。
 これまでのシリーズでは、「アンハッピーエンド」が、匂わされているように感じましたし。
 実際はどうだったかというのは、ファンの皆様は、ぜひ、自分の目で確かめていただければと思います。


 僕は、こんなことを考えてもいるのです。
 もし、東日本大震災がなかったら、この『GOSICK』は、僕が予想していたような終わり方になっていたのかもしれないな、と。
 あの大きな災害による絶望感に対して、桜庭さんは、作家として、この作品が『ミステリ』であるというルールを捨ててまで、立ち向かおうとしたのかもしれません。

「いま、進まねばと思い、それと同じぐらい、いや、もっと強く、もどらねばとも思う」
「うむ」
「わたしには、もういちど逢いたい人が二人いるのだ。行く道には、あの少年が……再びまみえたいと思うだけで、胸がひどく苦しくなる……久城一弥がいる。だが、立ち止まって振りかえると、背後には……愛しいママンがいるのだ。もどってママンのそばにいたい。そこで死んでもかまわないと……。道の先と、後ろに、二つの衝動があるのだ。こんなことはこれまでなかった。人とはこんなにも苦しみながら生きているものなのか。わたしはいままでなにも知らなかった。生きるということのほんとうの苦しみを、大切な人と引き離され、失うおそろしさを。ブライアン……」

 ファンタジーだから、フィクションだからこそ、描ける「勇気」がある。
 最後に、ヴィクトリカは、彼女自身にとっての「最大の謎」を解くことができましたしね。


GOSICK  ―ゴシック― (角川文庫)

GOSICK ―ゴシック― (角川文庫)

シリーズ第一作『GOSICK』の感想はこちらです。

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