琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

万引き少年未満


 小学校高学年のときのこと。
 僕はひとりで、地元の小さな百貨店のなかの書店にいた。
 とりあえず面白い本はないかな、と店内をうろうろしていたら、見知らぬ大人に声をかけられた。
 「ちょっと君、ポケットの中身を見せてごらん」
 僕のズボンのポケットは、四角くふくらんでいた。
 その人は、たぶん、補導員だったのだろう。

 僕は「ああ、めんどくさいことになってしまったなあ」
 と思いつつ、少し震える手で、ポケットの中のものを取り出した。
 先日、家族旅行で買った、四角い、財布。
 高崎山のサルの絵がついていた。

 僕も内心、膨らんだポケットを見て、これはまぎらわしいな、と感じてはいたのだけれど。
 その大人は、僕が出した財布を見て、「ああ、そう」という顔をして、黙ってその場を去っていった。

 万引きと間違われたのは、イヤではあったけれど、状況的にしょうがないかな、という気持ちはあったのだ。
 むしろ、僕にとってショックだったのは、「他人を万引き少年よばわりして、それが間違っていたのに、『ごめんね』の一言すら言わない大人がいる」ということだった。
 「相手は、所詮子ども」なのかもしれない。
 少なくとも、その大人にとっては、そうだったのだろう。

 僕はずっと、「子どもを子ども扱いできない」のだが、そのきっかけは、あのときのことだったのではないか、という気がしている。


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