琥珀色の戯言

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箱根駅伝 ☆☆☆☆


箱根駅伝 (幻冬舎新書)

箱根駅伝 (幻冬舎新書)

内容紹介
早稲田vs東洋、「山の神」の歴史、留学生問題etc…。テレビ観戦が100倍おもしろくなる!

正月最大のイベント、箱根駅伝。往復200キロ超、11時間の行程には、監督の手腕、大学の生存戦略、日本長距離の未来が詰まっている。大学スポーツの枠を超えた、感動の舞台裏を徹底分析。
メディアに後押しされ、関東のローカル大会が、大学スポーツの枠を超えた全国的人気を誇るまでになった。宣伝効果も絶大だ。レースの結果は、大学の入学志願者数を大きく左右し、監督には激しいプレッシャーがかかる。一方、箱根重視の練習は、その後の選手生命に響くとも指摘される。往復200キロ超の感動の舞台裏を徹底分析。

とりあえず、この本、この話題を紹介するのなら、今日しかないだろうということで、新年早々の更新。
この新書を書店で見かけたときは、「箱根駅伝の歴史」や「感動的なエピソード」が紹介されているのだろうな、と思っていたのですが、実際には「箱根駅伝のいま」が、けっこう詳しく語られていたんですよね。


「箱根で勝つ」ために、有力大学のスタッフは、どのような「戦略」を考えているのか?
「外国人留学生」が減ってきたのはなぜか?


駅伝という競技、箱根の場合は、10人のランナーたちがタスキをつないでいくわけですが、「誰が何区を走るのか」が非常に重要になってきます。
その「走る順番」にもトレンドがあって、昔はなんといっても最初に出遅れては勝負にならない、ということで、往路を重視する「先行投資型」(昭和の時代は「これしかなかった」そうです)。

 とにかく二区にエースを投入。これが基本。


その後、駒澤大学の大八木監督による「後半投資型」という発想が出てきます。

 とにかく相手の弾薬が切れる復路にチームの主力を持っていくのだ。

この作戦の場合は、選手層が厚くないと往路で決定的な差をつけられてしまうこともあるし、往路は我慢のレースが続くため、ストレスがかかってしまうという難点もあります。
また、最近は十区の距離が23.1㎞に延びたため、「後半投資型」でなくても、十区がかなり重視されるようになってきたそうです。

 もともとの力、調整段階での仕上がりが甲乙つけがたい選手、AとBがいる。Aは二年生、Bは四年生だ。さて、どちらの選手を起用するか?
 これは箱根駅伝だけでなく、どの学生スポーツでも長年繰り返し問われてきた命題だ。「力が同じであれば下級生を出す」という不文律を持っているクラブもあれば、『最後の箱根にかける四年生の力を信じる」クラブもある。どちらがいいとは言えないが、現実的にはチーム状況と、将来のビジョンによって変わってくる。
 今年よりも、来年の方が上位進出を狙える――そんな思惑があれば、下級生を出す監督の方が多いはずだ。箱根を一度でも経験しているか否かで、翌年の走りがまったく違ってくるからだ。それは箱根が終わってすぐのトラックシーズンから違いが出てきたりするから、一度でも箱根を走るというのは、選手に自信を与えるのだ。
 一方で、かたくなに上級生にこだわる指導者もいる。教育的な配慮、と言えなくもないが、最上級生であれば四年間積み上げてきたものが期待できるし(走りの安定感につながっている場合が多い)、メンタルの部分でのプラスアルファも期待できる。
 箱根の場合、四区をのぞいて一区間20㎞以上の長丁場なので、最近は練習をしっかり積んできた四年生を起用する指導者が多いように思う。
 箱根は他の駅伝以上に、「経験」がモノをいう大会だからだ。

この本によると、選手には「往路キャラ」(スピードがあって、集団で走るほうが得意、派手好き)と、「復路キャラ」(地道で自分のペースで走れる、距離が長いほうが持ち味が出せる。上級生に多い)なんていうのもあるそうです。
そういう「性格」までみて、監督は選手起用を決めているのです。
箱根駅伝は寒い時期の大会ということで怪我や体調不良で出られなくなってしまう選手も多く、選手層の厚さも重要なのです。


近年は、距離が23.4㎞と長く山登りの巧拙でタイム差がつきやすいの「五区」こそが、勝負のカギを握る区間となっています。
今年も活躍が期待されている「新・山の神」こと柏原竜二選手も、五区を走る予定です。
ただし、著者によると、2005年に五区の距離が延長されてから、この区間の勝負への影響が高くなりすぎてしまったがために、近い将来、区間距離の見直しが行われる可能性が高いようです。
箱根駅伝って、実は、けっこう区間距離が変わっているんですよね。


この新書では、大学陸上で箱根駅伝ばかりがクローズアップされ、「山のスペシャリスト」が養成されていくことの問題点も語られています。
「箱根」があまりに特殊なレースであるにもかかわらず、それを重要視せざるをえない日本が、世界の陸上界のなかで低迷しているのも現実です。
何もかもが「箱根のせい」ではないのだとしても。
箱根駅伝が盛り上がる一方で、冬のマラソン大会への興味は、たしかに、失われていってますよね。


あまりにドラマチックで魅力的な箱根駅伝の「魔力」。
この新書を読んで、「箱根に向けての、各大学の戦略」なんていうのを考えながら中継を観るのも、なかなか面白そうです。
まあ、だいたい箱根駅伝って、お酒を飲み、こたつで居眠りしながら観ていることが多いんですけどね、僕の場合は。

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