琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

八日目の蟬 ☆☆☆☆


八日目の蝉 通常版 [DVD]

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【ストーリー】
今日まで母親だと思っていた人が、自分を誘拐した犯人だった。
1985年に起こったある誘拐事件―。


不実な男を愛し、子を宿すが、母となることが叶わない絶望の中で、男と妻の間に生まれた赤ん坊を連れ去る女、野々宮希和子と、その誘拐犯に愛情一杯に4年間育てられた女、秋山恵理菜。
実の両親の元へ戻っても、「ふつう」の生活は望めず、心を閉ざしたまま21歳になった恵理菜は、ある日、自分が妊娠していることに気づく。
相手は、希和子と同じ、家庭を持つ男だった。過去と向き合うために、かつて母と慕った希和子と暮らした小豆島へと向かった恵理菜がそこで見つけたある真実。
そして、恵理菜の下した決断とは・・・?


参考リンク:『八日目の蝉』感想(小説版)


上記にあるように、僕はこの『八日目の蝉』の原作小説があまり好きではなかったので、この映画版にも、そんなに期待していなかったのです。
どうせまた、「負の再生産の話」なんだろうなあ……って。


でも、この映画は、けっこう良かった。
世界の中心で、愛をさけぶ』の映画を観たときも思ったのだけれども。小説としては「ベタな人が死ぬ話」でも、実際に長澤まさみさんが死んでいく映像を見せられると、けっこう「かわいそう……」な気分になってしまうんですよね。
この映画では、永作博美さんの「母親」っぷりが、なんだかせつなくて。
彼女がやったことは、もちろん犯罪です。
この映画のように「相手が誘拐犯でも、愛されていたんだから、救われる」というようなものではないはず。
少なくとも、「本物の母親」は、ずっとずっと救われない。
そして、いくら「あんたなんて空っぽ」と本妻に責められたとはいえ、不倫をしていたのは事実だし、そんな男を選んだのも自己責任。


そんなことを、何度も自分に言い聞かせながら、僕はこの物語を観ていたのです。

それでも、「母親っていうのは、こういうものなのだろうか……」と、考え込まずにはいられませんでした。


井上真央さんは相変わらずの井上真央さんっぷりなのですが、挙動不審なライター役の小池栄子さんは、いい仕事をしていたと思います。
この人の「ウザイ人をウザく演じる才能」は素晴らしい。


原作を2時間20分くらいにまとめているのですが、おかげで、お金の算段とか、誘拐犯の女のドロドロした内面の葛藤とかが「省略」されて、「美しい偽りの母子の物語」になっています。


しかし、男としては、この映画を観ていると、なんというか、「ひたすら責められている」あるいは「置いてけぼりにされている」ような気がします。
いや、いちばん悪いのは、自分の都合しか考えていないのに、子供ができてしまうような行為をしてしまう男なんだよね、きっと。
なんだか、「もう男なんて要らない」って宣言されてしまったような映画でもありますね。


これが「感動的な、泣ける映画」なのかどうか、僕自身は保留せざるをえません。
でも、原作を読んでいたにもかかわらず、「親というものの喜びと悲しみ」みたいなものをあらためて考えさせられる映画ではありました。
ある意味、役者さんたちの力によって、原作よりも「わかりやすくなった」(それは功罪あるのでしょうが)良作だと思います。
あと、小豆島の風景には、物語を忘れて、引きこまれてしまいました。