あらすじ: 昭和39年、日本中が高度経済成長と東京オリンピックに沸く中、東京・夕日町三丁目はいつものように住民たちが和気あいあいと暮らしていた。小説家の茶川(吉岡秀隆)は間もなく新しい家族を迎えようとしており、鈴木オートの則文(堤真一)も事業を軌道に乗せ、三丁目中が活気にあふれていた。しかし、そんな中転機を迎える人もいて……。
2012年8本目の映画館での鑑賞作品。
公開初日からかなり時間経っており、3D版、2D版ともに1回ずつの上映になっていました。
3D版、19時からの回を観たのですが、観客は10人くらい。
『三丁目の夕日』を3Dにしなくても……と思っていたのですが、冒頭の東京タワーの先端に手が触れられそうになるシーンはすごかった。
3Dにも、こんな見せ方があるんだなあ、と感動してしまうくらいに。
思わず、東京タワーに触ろうと手が出てしまったくらいです。
まあ、3Dに関しては、その場面がいちばん印象的で、あとは「町の雰囲気の再現に、それなりに貢献している」というくらいだったんですけどね。
やはり、この映画の「主役」は、東京タワーなのだろうか。
正直、ストーリーはちょっとお粗末でした。
もちろん、ある程度「狙ってベタな話にしている」のであって、それがこの映画には合っているという制作側の判断なのでしょうが、あまりにも「ほら、泣け、泣け」っていうのが透けて見えすぎます。
「伏線」的に仕込んでいる話が、あまりにあからさますぎて、「これで、観客が驚くと思ってるの?」と呆れてしまうくらいです。
「ねえ、今日の夜、ご飯食べにいかない?」と看護師に声をかけまくる医者。
どうみても、「ナンパ野郎」だろそれ……
あおの理由が、看護師と「少しでも仲良くなろうと思って」。
そんな雰囲気にはまったく見えないって。
「そこまでして、『どんでん返し』を演出したいのか?」と。
茶川の淳之介に対するやりかたも「感動」というよりは、「自分の思い込みで、『負の連鎖』をコンティニューすんなよ……」と言いたくなりました。
しかも、あのタイミングでやられたら、ふつう「ああ、俺はこの家族の邪魔者なんだな」ってグレるよ。
もしかしたら、これは、「1964年の観客を感動させるための演出」なのだろうか。
「じゃあ、つまらないの?」と言われると、「まあ、平均以上のエンターテインメントではある」という感じではあるんですよね。
少なくとも、あの時代を再現した小道具やセット素晴らしい(って、僕にとっては、生まれてもない時代、なんだけどさ)。
「家族と幸せ」というのも、なんかちょっと考えさせられたし。
とはいえ、あんな濃密な人間関係には、いまの僕は絶対に耐えられないとは思うけれども。
五木寛之さんの『下山の思想』っぽかったけど、前作までの昭和33〜34年の「右肩上がりの時代」から、『東京オリンピック』という「戦後のひとつの頂点」をへて、少しずつ落ち着いていく(あるいは、「個人の時代」になっていく)雰囲気を、うまく切り取ってはいるんですよね。
僕は、いままでのシリーズ2作品のほうが好きでした。
今回は「感動の大安売り」が、気になってしょうがなかったので。