琥珀色の戯言

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これでいいのだ!!映画 赤塚不二夫 ☆☆


内容(「キネマ旬報社」データベースより)
天才ギャグ漫画家・赤塚不二夫の破天荒な生き様を、浅野忠信主演で描いた痛快コメディ。人気絶頂のギャグ漫画家・赤塚不二夫を担当することになった新人編集者・武田初美。遊びとギャグに命を懸ける赤塚に、初美は振り回されていたが…。通常版。


「これでいいのだ!」
……これじゃダメだよ……


最後に思わずそう呟いてしまう映画でした。
この映画、武居俊樹さんという赤塚不二夫担当の名物編集者が書かれた本を原案にしているのですが、映画化にあたって、男性だった武居さんを、「武田初美」という女性編集者にしているんですね。
で、その武田さんを堀北真希さんが演じています。
僕は堀北さん好きなんですけど、この映画に関しては、この設定変更が大きなマイナスになってしまっています。


最初のほうのシーンで、「赤塚不二夫担当」になった武田さんは、「歓迎会」と称して、赤塚先生たちに夜の街に連れ出されます。
酔っぱらってバカ騒ぎした赤塚プロの面々は、いわゆる「土人」の格好をして、武田さんを拘束します。
そして、酋長という設定の赤塚先生が、酒など一滴も飲んだことがないという武田さんに迫ります。
「さあ、このコップ一杯のウイスキーを飲むか、それとも、酋長の口移しでジュースを飲むか!」


うわー、これって、パワハラ&セクハラだろ、しかもかなりタチの悪い……
観ていて「不快だった」としか言いようのない場面でした。
制作側としては、「こういうのが『昭和のバカな遊び』なんだ。『あの時代』なんだ」と言いたいところなのかもしれませんが、少なくとも、2012年の観客には「なんてひどい連中なんだ」と感じる人が多いはずです。
相手が新人男性編集者だったら、こういう「遊び」もOK、だとは思いませんが、やっぱり、「女性相手だと、より一層ひどく感じられる」のは間違いないところ。
担当編集者が女性で、堀北さんでよかった、と思えるのは、堀北さんがサディスティックにムチをふるう場面くらいです。


あとはもう、赤塚先生が「こんなバカなことをやっていました」と紹介する場面がことごとく、いまの僕の感覚では、「パワハラ」だったり、「セクハラ」だったり、「迷惑行為」だったり。
この映画からは、「マンガ家としての才能と活躍」がいまひとつ伝わってこない、ということもありますし。
武田(武居)編集者との「絆」を描きたかったのかもしれませんが、『レッツラゴン』って、みんなそんなに読んだことないはずだし……


僕は赤塚先生に関する本もけっこう読んだので、『バカボン』以降の赤塚先生は「実験的なギャグ」で活躍されたものの、以前のような人気マンガを描くことはできなかった、という史実を知っています。
だから、赤塚先生と一緒に『レッツラゴン』をつくった編集者に対しても、「結局、『延命治療』をやっただけだろ」とか考えてしまうのです。
中途半端な「恋愛感情」みたいなものが、この映画に必要だったとも思えません。


「昭和のバカ」は、いまの時代では「ハラスメント」なのか……
この映画をつくった人たちには、そういう「感覚」がなくて、「昭和の偉人の物語」として、何の抵抗もなく、こういう映画をつくってしまったのかなあ……


実際に観ると、浅野忠信堀北真希佐藤浩市などの錚々たる役者さんたちが出ていながら、なんでこの映画が全然話題にならなかったのかがよくわかります。
これほど作り手が「空回り」してしまっている映画は珍しい。
観客を不快にさせようとしているのならともかく、この映画って、観客を一生懸命笑わせようとすればするほど、その場面で観客が不快になってしまうんですよね。
なんだかもう、観ていて痛々しかった。



赤塚不二夫のことを書いたのだ!! (文春文庫)

赤塚不二夫のことを書いたのだ!! (文春文庫)

参考リンク:赤塚不二夫のことを書いたのだ!!☆☆☆☆ (琥珀色の戯言)
↑の本は、すごく面白かったんですけどねえ……

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