琥珀色の戯言

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100円のコーラを1000円で売る方法 ☆☆☆


100円のコーラを1000円で売る方法

100円のコーラを1000円で売る方法

出版社からのコメント
新人商品プランナー・宮前久美が挑んだのは、「Appleにできて日本企業にできない壁」だった。彼女は日本が抱える課題----「高品質・多機能。でも低収益」から脱却できるのか?
コトラーからブルーオーシャンキャズム理論まで、マーケティングがわかる10の物語

「顧客が言うことは何でも引き受ける」という日本人の勤勉さは、高度成長期を通じて無類の強さを発揮しました。しかし、それは同時に過当競争を生み出し、差別化ポイントを失わせ、「高品質なのに低収益」というアイロニカルな矛盾を生み出しています。
本書のテーマ----顧客中心主義とは、「顧客に振り回される」ということではなく、「顧客の課題に対して、自社ならではの価値を徹底的に考え、提供する」ということなのです。
(著者あとがきより)


TSUTAYAでプッシュされていたのを見かけて購入。
小説風で読みやすい、「マーケティング入門」ということなのでしょうけど、僕レベルの「マーケティングに関する入門書くらいは読んだことがある人間」でも、「これはちょっと簡単かつ駆け足だなあ」と思うような内容でした。
この「商品プランナー・宮前久美」というキャラクターも、あんまり魅力的じゃないし、彼女を導く与田さんという人物も、あんまり人間味がない。
題材が「会計ソフト」というのも、ちょっと実感がつかみにくいし……
マーケティングというのは、いまの僕の仕事とはあまり縁がないので、かえって気楽に読めたし、それと同時に、「理解しなければ!」という熱意が薄かったのも事実です。


正直、これを読んでいると、『もしドラ』は、ビジネス書のなかでは、「キャラクター性」や「小説として読ませる力」が有ったのだなあ、と感じずにはいられませんでした。
なんのかんの言っても、「高校野球」っていう舞台は「アツい」しね。
もちろん、「ビジネス書」ですから、「小説としてのデキ」だけが評価対象ではないのだろうけど。

「では、なんでバリューマックス社は高収益なのだと思いますか?」
 久美は気を取り直して、帝国建設に「この価格を受け入れていただけないのであれば、ウチは降ります」と言った明日香の姿を想像しながら、答えた。
「値下げをしないからでしょ」
 与田はニヤッと笑って言った。
「まったく見当違いの答えですね。理由は、”市場シェアがトップ”だからです」
 与田は、今度は参加者全員に向かって問いかけた。
「みなさん、ソフトウェア製品で、一番お金がかかるのは何ですか?」
 参加者の一人が手を挙げた。
「私は開発出身ですが、ソフトでお金がかかるほとんどの部分は、開発費です。ソフトを流通するコストは、開発費と比べると、ほとんど無視できる程度です」
「正解です。では、ウチとバリューマックス社が同じお金をかけてある商品を開発して、バリューマックス社がウチの3倍売り上げると、バリューマックス社の商品当たりの開発コストはどうなりますか?」
 今度は別の参加者が答えた。
「ウチの3分の1になるのではないでしょうか?」
 与田は、会議室全体をゆっくりと見渡した。
「そういうことです。シェアトップのバリューマックス社は、業界の中で一番低コストで商品を提供できる、つまり、コストリーダーシップを握っています。このようなシェアトップの会社に価格勝負をしかけるのは自殺行為です」

 こういう話って、聞いてみれば「当たり前のこと」なのですが、なんとなく、「挑戦者側のほうが小回りがきくし、コストがかからないのではないか?」なんてイメージを僕は持っていたのです。
 これからマーケティングの勉強をしようという人には、このくらい読みやすい内容のほうが、良いのかもしれませんね。
 これだったら、中学生くらいでも十分読めると思うし。


 ただ、ひとつ残念だったのは、タイトルの「100円のコーラを1000円で売る方法」が、あまりにも「えっ、それだけ?」という内容だったということでした。
 このタイトルに惹かれて、「劇的な方法」が書いてあるのかな……と期待して損した、と、ちょっと思ってしまいました。
 キャッチーなタイトルは、売るためには大事なのだろうけど、内容とマッチしていないというか、なんとなく「釣りタイトル感」があるような……


 とりあえず、「マーケティングに興味があるけど、入門書も読んだことはない」という人には良いかもしれません。
 でも、「少しでもかじったことがある」人には、割高なんじゃないかな。

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