琥珀色の戯言

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心がほどける小さな旅 ☆☆☆


心がほどける小さな旅

心がほどける小さな旅

内容紹介
人気イラストレーター・益田ミリさんが2012年初刊行する書き下ろし女子旅エッセイ!


ときにはひとりで、たまにはふたりで・・・。
晴れ晴れとするステキな日本の景色、ドキドキの非日常空間に出会ってきました。
旅で切り替わる気持ちもある! これで明日もきっと元気になれる!


★行ってみたところ★
桜花賞、鹿児島大声コンテスト、九州の肥薩線郡上八幡のオールナイト盆踊り、新江の島水族館のクラゲナイト、山形県の山寺、奥入瀬渓流ホテル、高知県の牧野植物園、釧路湿原でカヌー、第九の合唱・・・etc


ものすごく新しい知識が得られるわけでもなく、感動するわけでもない。
でも、読んでいて、なんだかちょっと心が和む。
そんな旅エッセイだと思います。


この本におさめられているエッセイ、春夏秋冬と、四季にあわせて、益田ミリさんが「ふと思いついた旅」が書かれています。
ときにはひとりで、ときには、超有能なツアーコンダクター・猫山さん(編集者)と一緒に。


益田さんのエッセイやマンガを読むたびに、僕は「この人は、どんな人なんだろう?」と考えてしまいます。
何も考えていないようで、いきなり心の奥を覗きこまれるようなことが書いてあったり、消極的でうだうだとしてしまいそうでいて、いきなり思いきったことをしてみたり。
いや、ある意味「人間って、そういうもの」なのですよね。
でも、そういう曖昧で掴みどころのないものを、こうして描ける人というのは、そんなに多くはないのです。

 そういえば、指宿で砂むし風呂体験をしているとき、身体に載せられている砂の圧力で、心臓の鼓動がドクンドクンと全身に伝わってきた。最初、もしかしたら「動悸」なのだろうかと心配になったのだけれど、すぐに、これはわたしの心臓のリズムなんだなと気づいた。
 砂むし風呂の施設から、指宿の駅まで乗ったタクシーの中で、運転手さんが言った。
「砂むし風呂、心臓の音が聞こえたでしょう? 普段は気づかないけど、元気に動いていたでしょう?」
 そうだなぁ、そのとおりだと思った。「大きな声」もまた、普段は気づかないもののひとつ。でも、わたしの身体の中に確実に収まっているのだ。


 難しい言葉は全然使われていないのだけれど、心になんだかすごく響いてくるんですよね、益田さんの文章って。
 このエッセイ集のなかでは、郡上八幡の「オールナイト盆踊り」の話が、なんだかすごく印象的でした。

 三時を過ぎると人も減るのかなぁと思っていたが、全然減らなかった。地元のおじいさんやおばあさんも、ずーっと踊っている。大きく踊りたい人は大きく踊ればいいし、手をほんの少ししかあげないで小さく踊ってもかまわない。自分の体力次第である。
 朝までは無理かも……と思っていたのに、
「朝まで踊らないでどうするっ」
 むくむくと力がわいて、疲れなんかちっとも感じないのだ。
 白々と夜が明けていく中、一晩中踊った者たちだけが味わえる親密な空気。女性たちの化粧は汗で流れ、男性陣の浴衣はぐだぐだ。でも、もうそんなことはどうてもよくて、
「最後の曲まで一緒に踊りきろうよ!」
 奇妙な一体感が生まれていた。

 盆踊りに全く興味がない僕でさえ、これを読んでいると、ああ、その光景を見て、できればちょっと参加してみたいなあ、と思いました。
 益田さん自身も、この「オールナイト盆踊り」がとても記憶に残っていると書かれています。


 少しだけ、自分も旅に出た気分になれる一冊です。
 正直、「女子旅」って、何が楽しいのか、よくわからんなあ、と感じるところも含めて、楽しく読めました。

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