琥珀色の戯言

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陽だまりの彼女 ☆☆☆☆


陽だまりの彼女 (新潮文庫)

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
幼馴染みと十年ぶりに再会した俺。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、俺には計り知れない過去を抱えているようで―その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる!誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらいの切なさもすべてつまった完全無欠の恋愛小説。


この文庫、オビにこんなコピーが書かれていました。

「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1」

うーむ、ということは、赤裸々な「女の本音」みたいなのが描かれているのか?
だとしたら、あんまり読みたくないなあ、僕は基本的に「恋愛小説」苦手だし……


でもまあ、売れているみたいだし、丸っこい女の子が描かれている、黄色い表紙が気になって、結局読んでみました。

 あらためて見てみると、真緒はけっこうかわいい。きょろきょろとよく動く目が放つ悪戯っぽい光は人を惹き付けるものがあるし、黒すぎてかえって青く見える髪は撫でてみたくなる。きゅっと結ばれた小さな唇なども、ついつい見とれてしまうような魅力があった。でも、バカだ。


ああ、甘い、これは甘い。
そして、あまりにもピュアな二人すぎる……


とか思いつつも、読みやすい作品でもあり、けっこう楽しく読んでいました。
リアルな設定の「恋愛小説」だと、「こんなヤツらいねえ!」と食ってかかりたくなる「非モテ」の僕なのですが、このくらい開きなおっている「ベタ甘の心地の良いフィクション」だと、かえって「ま、たまにはこういうのもいいか」って気分になるんですよね。
恋愛っていうのは、多かれ少なかれ、「バカップル的な要素や状況」を内包しているものですし。


この作品を読んでいて感じたのは、「ウソをウソだと思いながら読んでも、人というのは感動できるものなのだな」ということでした。
この『陽だまりの彼女』設定とか「謎解き」の部分は、もうメチャクチャです。
「なんでそうなるのか?」という理由を、作者は説明しようとすらしません。
「伏線」も、「ああ、なんかもうバレバレだと思うのだけれど、いくらなんでも、そんなベタで理不尽なオチにしたりは、しないよね?」
と思ってしまうようなわかりやすさ。


自分では「真緒の『秘密』とは何か?」を確かめてやろうと思って読んでいるつもりなのに、その「秘密」が「なんじゃそりゃ?」みたいな結果でも、読み終えて「騙された!」なんて感じなかったんですよね。
ま、いいか、って。
むしろ、「この甘ったるくて、せつない物語の世界に、しばしの間触れていられて、なんだかちょっと気持ちよかったな」と。
「リアリティ」だけが、物語の力じゃない。


正直、なぜこれが「女子が男子に読ませたい」のかよくわからないのですが(男子が男子に読ませたい、というのなら、ちょっとわかる)、僕はこれ、けっこう好きです。
「大人の男女のリアルな恋愛小説」に気後れしてしまう、恋愛帰宅部所属の男性諸氏に、ちょっとおすすめしてみたい作品です。

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