琥珀色の戯言

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【読書感想】教科書に載ってないUSA語録 ☆☆☆☆


教科書に載ってないUSA語録

教科書に載ってないUSA語録

内容紹介
週刊文春」連載中の人気コラム「言霊USA」、待望のペーパーバック化です。新聞、テレビ、ウェブでは分からない超大国アメリカの素顔を、現地在住の著者がレポートしています。登場するのは、イスラム教徒扱いをされるオバマトンデモ発言でおなじみのペイリン、上場が落胆に終わったフェイスブック、過激なティーパーティ勢力、ウォール街のプレイヤー、民主主義を主張するレディ・ガガ、ギャル語を話すアメリカの女子高生など。本書のポイントは、「日本人の知らないアメリカ語」を引きつつ解説しているところです。Frenemy (フレネミー)=友だちぶった敵、Chinamerica (チナメリカ)=中国とアメリカの運命共同体、Greater Fool Theory(グレーター・フール・セオリー)=もっとバカがいる理論、Nothing,,, (ナッシング)=別に、、など。アメリカ国内を騒がせたこれらの名言、失言、流行語を通して、政治や経済の仕組みから、キリスト教原理主義、ネット業界の最新動向、陰謀論の真偽、今のアメリカを知ることができます。ちなみに映画監督クリンスト・イーストウッドの「アメリカは今、ハーフタイムなんだ」という言葉に、自信を失ったアメリカ国民はみな涙を流したとか。連載でタッグを組んでいる漫画家・澤井健さんによる、ギャグセンスあふれる爆笑イラストも収録しました。まさに町山ワールド全開!一級のアメリカ批評本です。


2012年11月6日投開票予定のアメリカ大統領選挙
民主党オバマ現大統領と、共和党のロムニー候補による争いです。


この『教科書に載ってないUSA語録』、『週刊文春』に連載されていたもので、アメリカという国で話題になった言葉やスラング、有名人の名言・失言などが採り上げられています。
このコラム、個々の言葉について語られているようにみえるのですが、最初から通して読んでいくと、2009年6月から2012年の夏までのアメリカ社会の動きが実感できるのです。
政治評論家の「俯瞰的な見かた」ではなくて、「そこで実際に生活している人たちの視点」で。


いやまあ、真面目な話ばかりじゃなくて、というよりは、有名人の下半身スキャンダルとか、サラ・ペイリンさんの信じられない行状の数々とか、家族の前で、読んでいるページをあわてて隠さなければならないところもありました。


町山さんの近著に『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』があって、この本と内容が重なるんじゃないかな、と思いつつ読み始めたのですが、大統領選挙に関する内容とか、オバマ大統領の出自疑惑を持ち出す人たちやティーパーティ関連の話題など、政治関連は一部重なっているところもあります。
全体としては、『アメリカ格差ウォーズ』よりも、こちらのほうが政治よりも有名人のゴシップが多くて笑えるポイントは多いと思います。
『アメリカ格差ウォーズ』は、笑ったあと、「でもこのアメリカの現実、笑えないよね……」とちょっと怖くなるようなところがありましたから。


その点、この本のほうは、ひたすら下品で、バカバカしくて大笑いできるエピソードも満載。
あのチャーリー・シーンの行状を書いた回
"I am in a drug, it's called Charlie Sheen."
なんてもう、あまりのすごさに開いた口がふさがりません。

「一夫一婦制なんて凡人がやることだ。俺はもう、自分が火星から来たロックスターじゃないフリするのは飽き飽きしたぜ。フツーの人たちは大人しく俺のショーを見物してな。俺はこんなにエロい娘たちと朝から晩までセックスして、自家用ジェットで世界中を旅行してる。頂点に立つのは孤独だが、眺めはいいぜー」。
 何かキメてるとしか思えない名言の数々だがテレビ局は血液と尿を検査して、72時間はドラッグ未摂取だと確認している。
「俺はヤクをキメてるよ。チャーリー・シーンという名のヤクをね。シロウトがマネすると顔が溶けて体が爆発するぜ」

ダハハハハハハ。
いやー、ぜひ一度、吉田豪さんにインタビューしてもらいたいなあ、チャーリー・シーン
『ベストハウス1・2・3』という番組で、チャーリー・シーンがすごいことになっている、というのを観た記憶があるのですが、この人、『プラトーン』で、ものすごくシリアスな役をやってた人なんだよなあ……
押○学さんも、海○蔵さんもまだまだ、というか、こういうキャラをみんなで楽しんでしまうのは、アメリカの懐の広さなのか、それとも、堕落なのか。
まあでもほんと、スケールの違い、みたいなものを思い知らされる有名人のすごいエピソード満載なんですよこの本。


シリアスな話のなかでは、ビン・ラディン殺害についての、アメリカ国内での反応について、こんなふうに紹介されていたのが印象的でした。

 実際、大統領がビン・ラディン射殺を告げると、ツィッターでは若者たちの「オサマって誰? そいつが死ぬと何かいいの?」などというつぶやきが飛び交った。英語版ヤフーによると「オサマ・ビン・ラディン」のネット検索も通常の1000倍に跳ね上がったそうだ。検索した人の4分の1は24歳以下で、質問のなかで5番目に多かったのが「オサマ・ビン・ラディンって誰?」だった。もちろんオクラホマ大学の学生新聞に「お祭り騒ぎすると、星条旗を焼いて気勢を挙げる暴徒と同じレベルに下がる」と書いたセイジ・モールディンみたいなまともな学生もいるのだが。

 ビン・ラディンの死を聞いて、「USA!USA!」とお祭り騒ぎをしていた映像にうつっていた人の多くは大学生。
 あの同時多発テロのときには小学生くらいの世代です。
 「テロリストの死を無邪気に喜ぶ若者たち」は、「日頃の欲求不満をぶつけ、騒ぐための機会」として、テロリストの死を利用しただけ、だったのかもしれません。
 正直、本当に身内をあのテロで失っていたら、あんなに大騒ぎをするような高揚した気分には、なりにくいんじゃないかと思いますし。
 でも、日本での報道の多くは、あの「お祭り騒ぎ」を「アメリカの総意」のように採り上げているんですよね。
 
 
 こういう報道ひとつをとっても、それが悪意に基づくものではないとしても、「報道する側の主観によるバイアス」は避けられません。
 下品なところやバカバカしいところ、そして、素晴らしいところも含めて、「マスコミが伝えきれないアメリカ」を知ることができる本です。


 個人的には、「アメリカでは、妻のほうが収入が多い夫婦は全体の38%になった。専業主婦は20%にすぎない」という話のなかで、町山さん自身が書かれていた「主夫として生活していたときの、社会の中に居場所がないという疎外感」が印象的だったんですよね。
 町山さんでも、そうだったのか……って。
 僕も「稼げる妻」と生活しているので。
 収入があれば幸せ、ってわけじゃないんだよなあ。
 もちろん、収入もない、よりは、はるかにマシなんだとしても。


それにしても、アメリカ。
いまの世界で唯一無二の大国。
この本のなかでも数々のネタを提供しているペイリンさんが大統領候補になれる国って、ある意味すごいですよね。
ブッシュ前大統領の愛読書が『はらぺこあおむし』っていうのもすごいけど。
いや、それはそれで正直で好感が持てる、と言えなくもないのかな、うーん。

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