琥珀色の戯言

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【読書感想】ゲバラ最期の時 ☆☆☆☆


ゲバラ最期の時 (集英社文庫)

ゲバラ最期の時 (集英社文庫)

内容紹介
チェ・ゲバラとはどんな男だったのか。彼とともに生き、ともに闘い、その最期を見届けた人々の証言から浮かび上がる伝説の革命家の実像を追う。ゲバラの生涯を追い続ける作家、戸井十月は何度も自ら中南米に足を運び、現地取材を重ねている。中でも本作はゲバラの殺された場所を訪ね、偶然にもその最期の様子を知る人々に出会い、貴重な証言を得ている。最期の生身のゲバラに出会う圧巻の内容である。


プロローグ:2005年の5月から8月、4カ月かけてバイクで南米大陸を一周した。1997年から始めた「五大陸走破行」の4番目の旅だった。
南米に限っては必ず訪ねると決めていた場所が一カ所だけあった。ボリビア共和国サンタクルス州カミリ北方イゲラ村と、そこから60キロ離れた山間の町、バージェ・グランデ。エルネスト・“チェ”・ゲバラが殺された村と、その遺体が30年間秘密裡に埋められていた街である。」著者は、キューバを離れた後ゲバラボリビアでゲリラ戦を展開し、チューロ渓谷の戦闘で捕らえられて小学校の教室で謀殺された現場を訪れる。そこで彼は偶然にも当時ゲバラに最後の食事を運んだ少女に会う。さらに遺体に触れたジャーナリストに会い、生家にも遭遇し、貴重な証言をひとつひとつ集め、ゲバラがいかに生き、殺され、隠蔽されたか、最後の瞬間をリアルに浮かび上がらせてみせる。

ゲバラボリビアで政府軍に捕えられてから殺害されるまでの経緯を検証した本……だと思ったのですが、大部分は、ゲバラの生涯を紹介する内容となっています。でもねえ、本当にかっこいいよねゲバラ。僕にはこんな生き方はできないとわかりきっているのだけれども、こんな人生があるというだけでも、たしかに勇気が出てくるような気がします。


題名からは、「ゲバラが捕虜となり、謀殺されるまでの詳細が描かれているノンフィクション」だと思っていたのですが、読んでみると、「ゲバラのおおまかな伝記」+「詳しいゲバラの死の前後の様子」という感じです。
チェ・ゲバラ初心者が読んでも、彼の人生の概略を最低限は理解できるはずです。
まあ、「チェ・ゲバラがどんな人か知らない」場合には、これより先に読んだほうが良い本は、いくらでもありそうですけど。


個人的には「ゲバラが死ぬ間際そして、死んだ直後偶然ゲバラに接してしまったために、人生が変わってしまった普通の人々」が興味深かった。
本当に「ゲバラのオーラが彼らを変えた」のか「思い込み」なのか?
偶然ゲバラの元に食事を運んでいくことになり、最後に会話した人物となった村の女性、元教師のフリア・コルテスさんの話。

 その時のゲバラは、どんな表情をしていたのか?
「私には優しかったですが、兵隊たちを見る目は怖いほどでした。まるで、周囲の人間たちを支配するような視線で威圧していました。多分、負傷して捕えられ、空腹で疲れ果てていたと思います。にもかかわらず、チェは自分の意志で兵隊たちを威圧し、支配しようとしていました。彼は、信じられないくらい強靭な精神の持ち主だったと思います。
 それは、私にとって衝撃的な体験でした。人を見て、そんなふうに感じたことはそれまでありませんでしたから。ぼろをまとったような姿なのに美しかったのです。あの時18歳の私には、そう映ったのです」 

フリアさんは、その後、「ゲバラ最後のオンナ」とタブロイド紙にデマを流されるなど、波乱万丈の人生を送ってきたそうです。
大怪我をして、敵に捕らえられていたゲバラが、彼女に何ができたかなんて、少しでも取材し、考えてみればわかりそうなものなのに。


ゲバラの遺体に「謀殺の証拠」を見つけてしまった医師レヒナルド・ウスタリス・アルセさんの人生も、そのことで大きく変わってしまいました。
彼らは、ゲバラとの出会いがなければ、もっと「普通の人生」をおくれていたはずです。
しかし、「歴史的な人物」との偶然の出会いは、「普通の人」の人生を変えてしまうものなのか、それとも、「普通の人」であることがイヤだから、彼らが「ゲバラとの一瞬の邂逅が、自分の人生を変えたことにしてしまった」のか、僕には結局わかりませんでした。
ゲバラとともに戦った「仲間」たちが「彼との出会いが人生を変えた」というのは、よくわかるのだけれど。

 タマヨも、山中の学校で読み書きを学んだ者の一人だ。
「あの頃の私は読み書きができなかったので、識字教室の授業に最優先で参加させられました。当時のバチスタ政権下での教育は無きに等しく、ほとんどの貧しい者たちは読み書きができなかったのです。
 チェは教育を重視していました。革命軍の兵士たちが最低限の知識と教養を身につけることは彼にとって最優先事項の一つだったのです。彼は、革命を前進させるためには銃が撃てるだけでは駄目で、教養と知識を身につけて一人の人間として成長しなければいけないと考えていました。
 チェは、ゲリラ兵士は社会変革者であり、破壊者ではなく創造者なのだといつも言っていました。創造するためには知識も教養も技術もいる。だからこそ、人間として常に学ぶ姿勢が必要なんだと。これこそ、彼が生涯抱いていた、最も重要な新年の一つだったのです。チェは、それを他人に強制するのではなく、自分自身が率先して誰よりも学ぶ男でした。チェは、キャンプの中でもいつも本を読んでいましたよ」

この本では、ゲバラと共に戦い、いまは70〜80代となった仲間や部下たちが、著者の「もし、チェが今も生きていて、次の旅にあなたを誘ったらどうしますか?」の問いに答えています。
彼らはみな、当たり前のような顔で「もちろん一緒に行くさ」と、目を輝かせて答えたそうです。
もちろん、「彼らは結局、生き延びることができているし、自分がやってきたことを否定したくない」はずです。
ゲリラ戦が、「楽しかった」とも思えません。
それでも、彼らは「幸せ」なんだろうな、と感じます。
ゲバラも、いろいろとやり残したことはあったのだろうけど、悪くない人生だったのではないかなあ。
僕はもちろんゲバラのようには生きられませんし、彼が目指した「革命」の成果については、評価が難しい。
でも、チェ・ゲバラは、カッコいいんだよね、それだけは言える。

 もし我々が空想家のようだと言われるならば
 救いがたい理想主義者だと言われるならば
 できもしないことを考えていると言われるならば
 何千回でも答えよう



 そのとおりだ、と。


――チェ・ゲバラ

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