琥珀色の戯言

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【読書感想】うちの会社ブラック企業ですかね? ☆☆☆☆


うちの会社ブラック企業ですかね?

うちの会社ブラック企業ですかね?

内容紹介
「週刊SPA!」連載の「B定職」が、待望の単行本化! シャレにならない? だけど笑える。過酷なお仕事ルポマンガ!


内容(「BOOK」データベースより)
悪徳先物業者・消費者金融・ファストフード店員・SE・バス運転手…本当にあった過酷なお仕事のエピソードをもとに、「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」でブレイク中の漫画家・ichidaがブラックに味付け。


ブラック企業ですかね?」って、ブラック企業だよこれ……
でも、これを読んでいると、「日本の企業の半分くらいは、ブラック、あるいはブラック予備軍なんじゃないか?」と感じてしまうのも事実なのですけど。


「悪徳先物業者」に就職した新人たちは、こんなふうに描かれています。

 客がむこうから相談にくれば苦労はしない。
 新人はとにかくテレアポ
 業者から購入したリストに朝から晩まで電話をかけて、会ってくれる人は1%もいない。


 切られる
 放置される
 罵倒される


 社会に出たばかりの若者なら無理はないが、顔がひきつり涙を流す。


 そんな姿を周囲に見せたくないのか
 机の下にもぐって電話をしはじめる。


 すると 他の者も
 それにならって机にもぐる


 毎年恒例の光景だ。

 受ける側からすれば、あの勧誘電話のうざったさというのは類を見ないものなのですが(病院で当直をしていると、他の病院の医者のフリをしてかけてくる業者とかいるんですよ。こっちがどんな気持ちで張りつめて当直しているかも知らず)、やっている側もこんな状況なのだなあ、と。
 ほんと、ああいうのって、誰が幸せになるんでしょうね。
 それでも続いているというのは、結局のところ、辞める人がいても、新しく入ってくる社員がいるってことだものなあ。
 

 その一方で、「ネットでのブラック企業情報を知り過ぎてしまって、就職担当者の紹介を、次から次へと断りまくる人」の話もでてきます。
 うーん、僕の知っている範囲では、「入口からお花畑みたいな企業」って、ほとんど無いんですよね。
 そのほうが望ましいとは思うのだけれど、現実には存在しない。
 で、実際には「ブラックスタートで、その人の持っている人脈とかを吸い尽くされた挙げ句に、ボロボロにされて捨てられるピュアブラック企業」か、「入口はかなりブラックで、理不尽なシゴキやノルマに耐えなければならないけれど、それを超えたら視界がよくなってくる企業」がほとんどなのです。
 

 いやほんと、この本を読んでいると、世の中みんなブラック企業のような気がしてくるのですけど、それは一面の真実なんですよね。
 仕事っていうのは、みんなキツイ。


 でも、「キツイ」=「ブラック企業」と考えると、就職先なんて無くなってしまうかもしれません。
 作家の宮田珠巳さんが『ひとなみのいとなみ』というエッセイ集のなかで、こんなことを書いておられました。
 宮田さんは、大学卒業後に「ものを書く仕事」がしたくて入った企業で、不動産関連部署にまわされて、鬱々とした日々をおくっていたそうでうです。

 サラリーマン人生で虚しいことのナンバーワンはそれではないか。自分の仕事と、自分の願いが、リンクしていないこと。金のためだと割り切れるならそれでもいい。しかし、私は割り切れなかった。
 金よりも、自分の人生のハンドルを自分で握りたい。
 世の中には、自分の人生を自分でハンドル切って生きている人がたくさんいる。そんな当たり前のようでいて、その実大変なことを、多くの人がこともなげに達成しているように見えた。
私は己の力のなさに呆然となる。

 僕も「病院って、いつでも問答無用で呼び出されるし(こうして書いている僕が、30分後には血まみれになって内視鏡を操作しているかもしれないのです)、日勤後に当直して、そのあとまた朝から外来なんてことが当然のように行われるし、責任は重いし、ブラックだよなあ……」ってよく思います。
 でもまあ、「キツイ」=「ブラック企業」じゃなくて、「自分の人生のハンドルを自分で握れないような働き方」こそがブラックなのかもしれませんね。
 僕はまだ、「本当にイヤだったら辞められる」って思えているから。

 
 宮田さんは、その後、自分のやりたい仕事に異動することができ、

 人が変わったように働きはじめ、勢い余って二度も倒れて入院したりもするのだけれど、どうであれ自分の流れに乗っている人生というのは、そうでない人生に比べれば、たとえ仕事が困難で多忙であっても、はるかに生きやすいことを知った。

とのことです。


いや、「ビジネス書」ではみんなそう言うんだけど、実際はすごく難しいと思うんですけどね、「自分の人生のハンドルを自分で握る」というのは。


この本の「おわりに」で、原作者がこんなことを書いておられます。

ブラック企業」が常日頃から会社をあげて真っ黒なのかというと、必ずしもそうとは言えません。
 職場の人間関係の軋轢、相性の合わない上司、苦手な先輩、小心過ぎる同僚、無能な後輩、突然の異動……などといった個々の条件が、ある日カチリとハマり、最悪の職場が生まれるかもしれないのです。

 同じ容れ物でも、中にいる人次第で天国にも地獄にもなる。
 僕自身も、そういう経験をしてきたので、この言葉はすごく印象的でした。
 考えてみれば、自分自身が、一方的な被害者ではなく、「ブラック企業の構成要素」になることだって十分にありえるのです。


 30分くらいで読めてしまうのですが、ディープでいろいろ考えさせられる本ですよ。

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