琥珀色の戯言

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【読書感想】再会 ☆☆☆


再会 (講談社文庫)

再会 (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
小学校卒業の直前、悲しい記憶とともに拳銃をタイムカプセルに封じ込めた幼なじみ四人組。23年後、各々の道を歩んでいた彼らはある殺人事件をきっかけに再会する。わかっていることは一つだけ。四人の中に、拳銃を掘り出した人間がいる。繋がった過去と現在の事件の真相とは。第56回江戸川乱歩賞受賞作。

数か月前に文庫で読んだのですが、「読みやすい佳作ではあるけれど、なんというか、良くも悪くも引っかかるところのない作品だったな」というのが率直な印象でした。


少なくとも、ミステリとしては、読者には開示されていない情報が多すぎるので、「読みながら犯人当てができる」タイプのものではありません。


仲の良い同級生だったのに、いまはすっかり疎遠になってしまった(とはいえ、そのうちの2人は、一度結婚して離婚後なんですが)4人の再会と過去との対峙の「人間ドラマ」として読むと、なかなか味わい深いものがありました。


「どんなに仲が良かった小学校時代の知り合いでも、こんな事件の際に、ここまで協力しあえるものなのだろうか?」なんて考えるのは、僕がすっかり昔の友達と疎遠になってしまったから、なのだろうか。


文庫ではけっこう分厚い感じがするのですが、とにかく、サラサラと読めて、この話をどうやってまとめるのか気になって読んでいるうちに、驚くわけでも、「こんなの反則だ!」と腹が立つわけでもない結末に着地する、そんな話なんですよね。


ただ、かなり強引な叙述トリックや、職業ミステリ、登場人物の家族関係や性格などを濃密に描く海外ミステリなどを読むことが多かった僕にとっては、「胃がもたれていたところだったから、お茶漬けはありがたい」という感じでした。
まあ、こういう作品も必要なのではないか、と。


文庫の巻末の末國善己さんによる「解説」には、このように書かれています。

 乱歩賞には”傾向と対策”があるといわれる。少し前は、特殊な職業の人物を探偵役にすると受賞しやすいといわれたし、最近は、トラウマを抱えた主人公が事件を捜査したり、過去と現在の二つの事件を重ねたりする受賞作が増えている。これは、過去の因縁や”心の傷”を使えば登場人物に陰影を付けられ、簡単に複雑かつ重厚なドラマが作れるというのも大きいのではないだろうか。
 本書も、二十三年前と現在の事件がリンクしていくので、乱歩賞の”傾向と対策”をなぞっているように見える。だが著者は、キャラクターの造形に深みを与えたり、現在の事件の切っ掛けを作ったりする単純な理由のために、過去の事件を出しているのではない。現在の事件を解くことが過去の事件の真相を暴くと同時に、過去の謎が解かれると自然に現在の事件の真相も浮かび上がる重層的な物語になっているのだ。
 しかも過去と現在の事件では、謎解きのベクトルを変えている離れ業にも驚かされる。

「離れ業」っていうのは、ちょっと過大評価な気もしますが、とりあえず「佳作」ではあります。
そして、読みながら「これはドラマ化、映画化しやすそうだな」とも思っていました。


今夜(2012年12月8日)、フジテレビ系列でドラマが放映されるそうなのですが、主人公の同級生4人のキャストが江口洋介常磐貴子、堤真一香川照之という豪華メンバーなんですね。
こういう「癖のない正攻法の人間ドラマ」のほうが、かえって「この役者さんたちは、どう演じるのだろう?」と興味が湧いてくるところもあり、僕も観てみようと思っています。

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