琥珀色の戯言

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ホビット 思いがけない冒険 ☆☆☆☆☆



あらすじ: ホビット族のビルボ・バギンズマーティン・フリーマン)は、魔法使いのガンダルフイアン・マッケラン)から思わぬ旅の誘いを受ける。それは、ドラゴンに乗っ取られたドワーフの王国を奪取するというものだった。ドワーフの戦士トーリン(リチャード・アーミティッジ)が率いる13人のドワーフたちと、最初の目的地“はなれ山”を目指してワーグ、オークといった怪物や魔術師がひしめく荒野を進んでいくビルボ。そんな中、ゴブリンが巣食うトンネルに入っていった彼は、そこでゴラム(アンディ・サーキス)という醜悪な化け物と出会う。

参考リンク:『ホビット 思いがけない冒険』公式サイト


2013年1本目。
3D吹替え版を鑑賞。
公開は昨年12月半ばからだったので、ようやく観ることができた、という感じです。
20時半からのレイトショーで、観客は10人くらい。


ロード・オブ・ザ・リング』のデキがかなり良かったので、ピーター・ジャクソン監督は二匹目のドジョウを狙っているんだろうけど、どうやって「差別化」するんだろう?原作ファン以外にとっては「似たようなもの」に見えるんじゃないかな、と心配していたのです。


でも、それは杞憂でした。
この『ホビット』、とにかく「明るい」し「面白い」んですよ。
序盤のビルボが旅に出るきっかけの場面でも、『ロード・オブ・ザ・リング』の「世界を滅亡から救う」というような深刻さはあまりみられず、ビルボが巻き込まれるような形で、しかも意外とアッサリとドワーフたちとガンダルフのチームに加わります。


その後の旅も、もちろん本人たちにとっては切実なのでしょうが、次から次へとトラブルに見舞われるドワーフ御一行様をみていると、「なんだかこの人(ドワーフ)たち、『お笑いウルトラクイズ』でひどい目に遭わされる芸人みたいだ……」と笑えてきたんですよね。


そんなふうに笑うのは「不謹慎」なのではないか、と最初はちょっと思ったのですが、これがまさに、「『ロード・オブ・ザ・リング』との大きな違い」なのです。

終始重厚な雰囲気で進む『ロード・オブ・ザ・リング』に比べて、ジェットコースターのように次々と起こるイベントを眺めて笑いながら、作り込まれたファンタジーの世界に浸る快感。


映像的にも『ロード・オブ・ザ・リング』以上の圧倒的な風景やファンタジー世界の住人たちに、思わず見とれてしまいます。
ニュージーランドでは、この映画のロケ地が見られるそうなのですが、ぜひ一度観てみたいなあ。


あと、まだ若い(?)ガンダルフのやんちゃさが残っているところとか、「説教オジサン」というサルマンの扱いなど、『ロード・オブ・ザ・リング』のファンならニヤリとしてしまう場面もたくさんあります。


写真や予告編では同じような絵柄だし、『ロード・オブ・ザ・リング』観たから、もういいや、って人も少なくないのでしょう。
でも、この映画に関しては、大画面で、できれば3Dで観ておいて、損はしませんよ。
いろんな映画があって良いと思うけれど、この『ホビット』は、まさに「映画でしかできない、忘れられない体験」になるはずです。
家のテレビで観るより、世界に入り込みやすいですし。
うちの子ども(4歳)が、もうちょっと大きかったらなあ!
(いまは1時間がじっとしていられる限界なので)
でも、3部作の最後くらいには、間に合うかな?


この映画を観ていて、気になったこと。
故郷を追われ、流浪の民として暮らしてきたドワーフたちに、エルフの有力者は、こんなふうに説得しようとするのです。


「お前たちのこの旅は危険で無謀だ。せっかく放浪先で平和な生活を送っているのに、わざわざこんなことをする理由がわからない。そこまでして、荒れ果てた故郷に帰ろうとする必要があるのか?」


ああ、これはまさに、震災や原発事故で「故郷に帰れなくなってしまった人たち」に対する、第三者の「理性的な説得」そのものじゃないか……
失ってしまった故郷への「想い」は、故郷を当たり前のように持ち続けている人には実感できないのです。
それは「理性」でもなんでもなくて、「面倒なことを起こして、自分を巻き込んでほしくない」という「思考停止」にしか過ぎないのに。
まあ、これはいまの日本人として「染みる」のですが、考えてみれば、ずっとユダヤ人たちが抱えてきた問題でもありますし、この「当事者」と「当事者を心配しているつもりの人」との温度差というのは、そう簡単に埋まるものではないのでしょうね。


これだけの傑作にもかかわらず、日本では客入りがあまり良くない(らしい)のが、個人的にはすごく残念です。
ドラゴンクエスト』をはじめとするRPGは、ドワーフとかエルフとかホビットという生き物の名前を多くの人に知らしめましたが、僕が『ロードス島戦記』にハマっていた時代に比べると、「ドワーフという生き物と体型くらいは知っているけれど、それがどんな特性を持っているのか?」というような知識を得る機会って、あんまり無いような気がするのです。
「エルフ」とか「ドワーフ」はゲームで有名になったから「常識」と解釈されているのか、とくに解説も加えられなくなりました。

そういう点では、いまの子どもたちにとっての「ファンタジー世界」への親近感は、むしろ形骸化しているような印象があります。
もちろん、好きな子は、『指輪物語』とかを読んでいるのだろうとは思うのですけど。


冒頭の「これまでの経緯」の映像だけで「この何十秒かの状況説明のために、こんな細かいセットをつくるなんて、全部でいくらかかっているんだろう……」なんて驚いてしまいました。
本当に「面白くて、浮世を3時間、キッチリ忘れられる」素晴らしい映画でした。


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