琥珀色の戯言

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【読書感想】おかあさんの扉 ☆☆☆☆


おかあさんの扉 (オレンジページムック)

おかあさんの扉 (オレンジページムック)

内容紹介
伊藤理佐、40歳で母になる!
産休明け第1弾は、日々成長する我が子の姿をライブ感覚で描く失笑、苦笑、爆笑の三重笑4コマ144連発。
雑誌『オレンジページ』の人気連載が一冊になりました。
オットの人・吉田戦車さんの書きおろしコラム「おとうさんの扉」5本つき。

伊藤理佐さんと吉田戦車せんの結婚というニュースを聞いたときにはちょっと驚きました。
これは、おふたりのあいだに生まれた娘さんの「子育て4コママンガ」。

 40歳で産んだということで、子供20歳の時、60歳

僕が40代はじめで、うちの子はいま4歳ですから、なんだかとても身につまされます。
親が年を重ねてからの育児って、体力的なキツさと、それなりに物事を客観的にみてしまうくらいの人生経験とで、「若い夫婦の子育て」とは、ちょっと違うところもあるのかもしれません。
「子育ては、きつい!つらい!」でも、「子供って、こんなにかわいい!」とか、「おもしろい!」でもなく、やるべきミッションを淡々とこなしつつ、娘さんの成長を観察しているような「余裕」もあるし、それと同時に、「子育てをしている自分に酔えないという諦め」みたいなのもあるんじゃないかな。
20歳になるとき、もう自分は60歳か……っていうのは、ある意味「まあ、なんとかなるだろ」っていう開き直らないと、不安でもありますしね。


このマンガのなかで、41歳になった伊藤さんが、「41歳の春だから」(天才バカボン)って、一生に一度のギャグを言うのを忘れた!と嘆くシーンを読みながら、僕は30歳になったとき、「なんで何も悪いことやってないのに、30歳にならなくちゃいけないんだ!」を(心の中で)やったなあ、なんて思い出したり(ちなみに元ネタは『銀河英雄伝説』です)、「うちの子ピアノの才能があるかもしれないし病」に、「そうなんだよなあ!」なんて頷いてみたり。
子育てって、「みんな似ているところがあって、でも、それぞれちがう」。


しかし、平和で仲良し、協力しあっているこのご夫婦にも、東日本大震災、そして原発事故の影響はあったようです。
吉田戦車さんは、この本のなかの「お父さんの扉」というエッセイのなかで、

 この時期、私も伊藤も(吉田さんは奥様のことを「伊藤」とずっと書かれています。なんか「戦友」っぽいんだよなあ、このふたり)自分たちの不安や悲しみや憤りを作品に出さないように懸命だった。明るくさらりと描けているところがプロの仕事である、と伊藤理佐を誉めたい。家の中では「どこかに逃げるべきでは」「何を信じていいのか」等々、日々口論に近い会話をかわしていたのだった。
「おかあさん」である伊藤は、当然ながら私よりも神経質に放射能をおそれている。花見の時はそれほどでもなかったが、その後さまざまな情報を仕入れ(トンデモ情報まで)急速に過敏になっていった。『花見で子供に余計な被曝をさせてしまったかも……』という後悔は今もあるだろう。

うちの子も含めて、この時代に幼少時代を送った子どもたちは、どんな影響を受けて生きていくのだろう?
そんなことを、つい考えてしまいます。
いやもう、それこそ、「20歳のときに、自分は60歳になる」と考えると、「まあ、なるようにしかならないよね」と開き直るしかないのだろうけど。


そんなに強烈なキャラクターが出てくる子育てマンガではありませんが、だからこそ、「ふつうの子育てをしている人」には、共感できるところも多いのではないかと思いますよ。

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