琥珀色の戯言

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【読書感想】ハイスコアガール ☆☆☆☆☆



Kindle版もあります。
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話題沸騰! 面白さ100メガショック超え!!


『ポリゴン』って何? 食えんの? そんな2D全盛期だった古き良き格ゲーブーム到来の1991年。ヤンキーとオタクとリーマンが蔓延る場末のゲーセンに、彼女は凜と座していた──。

『ピコピコ少年』の押切蓮介さんの作品。
この『ハイスコアガール』、まあなんというか、「僕にとってはすごく面白いけど、ものすごくストライクゾーンが狭そうなマンガだよなあ」と思っていたのです。
でも、『このマンガがすごい! 2013 オトコ編』の第2位に入っていたりもして、あらためて、いま30〜40代にとっての、テレビゲームの存在の大きさ、みたいなものを感じずにはいられません。
ぶっちゃけ、「こんな女、当時のゲーセンにいるわけねー」し、「格闘ゲームオタクが、こんなにモテるなんておかしい」はずなんですよ。
なんで僕たちがテレビゲーム系男子で集まって、『アウトラン』でテスタロッサに乗っているカップルに罵声を浴びせていた時代に、こんな「オイシイ思い」をしているヤツがいなきゃいけないんだ!と。


……でも、これって不思議と腹が立たないんだよなあ。
単純に僕が年をとってしまったからなのかもしれないし、ヒロインの「ハイスコアガール」が人間の女の子というより、攻略不能の難関ゲームみたいに見えるからなのかもしれないけれども、なんだか、「自分でも自信が持てなかった、テレビゲーム漬けの学生時代」を、このマンガが肯定してくれているような気がするんですよ。
「別にいいじゃん。お前はそれが楽しかったんだから。それ以外の生き方なんて、なかったんだろ?」って。


恋愛的な描写よりも、『ストリートファイター2』の対戦のディテールとか、『ネオジオ』への蘊蓄とかのほうがはるかに熱く、「よく商業誌で許可が出たなあ!」なんて感心してしまうところもあります。
ゲーメスト』は、たしかに僕たちのバイブルだった!


そして、僕も学生時代に、ゲームにけっこう勇気をもらっていたことを何度も思い出しました。
源平討魔伝』の「行け そして頼朝をうて」なんて、激烈にイヤだったマラソン大会の前に、僕も自分に言い聞かせていたし。


なんというか、「ゲーマーにならわかる!」マンガだし、「ゲームのことしか頭になかった自分」が少しだけ好きになれるマンガなんですよこれ。
バカだったよな、その時間に英単語のひとつでも覚えておけば……と思う一方で、スポーツが得意でもなく、カッコよくもなく、『ログイン』と新作ゲームの発売日が人生で至福の日だった頃の僕を成仏させてくれるマンガなんだよなあ、この『ハイスコアガール』って。


しかし、これを読んでいると、この『ハイスコアガール』には「悲劇の予感」がつきまとっていることを感じずにはいられないんですよね。
スト2』であれだけ盛り上がった対戦格闘ゲームが、そして、アーケードゲームが、その後20年間でどうなっていったかを、僕たちは知っています。
そして、人はいつまでも、10代でも、学生でもいられないことも知っている。
いつのまにか、ゲームを買うお金があっても、やるための時間がなくなってしまって、気づいたときには「子供が寝たあと、同じようなバラエティ番組を観ながら、力なく笑うだけの大人」になってしまう。
いやまあ、プロゲーマーになって世界をまたにかけて活躍している!なんてオチなのかもしれないけれど……


これを読んで、「気になった人」「自分のためのマンガじゃないか?」と思った人はぜひ。


人は選びます。
でも、このマンガがこんなに売れていることそのものに、僕はけっこう癒されてもいるのです。

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