琥珀色の戯言

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【読書感想】解錠師 ☆☆☆


解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

解錠師 ハヤカワ・ポケット・ミステリ

解錠師 ハヤカワ・ポケット・ミステリ

内容紹介
このミステリーがすごい! 2013海外編
週刊文春海外ミステリーベストテン海外部門
第1位


八歳の時にある出来事から言葉を失ってしまったマイク。だが彼には才能があった。絵を描くこと、そしてどんな錠も開くことが出来る才能だ。孤独な彼は錠前を友に成長する。やがて高校生となったある日、ひょんなことからプロの金庫破りの弟子となり、芸術的腕前を持つ解錠師に……
非情な犯罪の世界に生きる少年の光と影を描き、MWA賞最優秀長篇賞、CWA賞スティール・ダガー賞など世界のミステリ賞を獲得した話題作

『このミス』と『週刊文春海外ミステリーベストテン』で1位、2冠達成というふれこみだったので、Kindle版をそれなりに期待して読んだのですが……


 うーん、これは困った……
 正直、僕にはこの作品のどこが良いのか、よくわからなくて……

 そこから先はむずかしくなる。ダイヤルをまわしながら、ドライブカムに刻まれた切れこみを頭に浮かべる必要がある。レバーが切れこみの片側のふちにふれているのを感じとり、それからダイヤルを少しだけまわして、もう一方のふちを感じとる。その範囲が接触域だ。
 錠の内部に何枚のディスクがあるかをあらかじめ知っていれば別だが、そうでない場合はダイヤルを何回かまわしてすべてのディスクを動かし、接触域のほぼ反対側で止める。それから逆方向にダイヤルをまわし、ディスクについた突起が隣のディスクに引っかかった回数を数える。その回数こそが錠に使われているディスクの枚数だ。それは解錠番号の個数でもある。

 唯一、「読みどころ」があるとすれば、著者が「本物」に取材したという錠を開ける場面のリアリティ、なんでしょうけど、僕は金庫破りの技術にそんなに興味があるわけがないので……


 これ、どこから主人公の「秘密」が明かされたり、「意外な展開」になっていくのだろうか……
 あれ、もう半分まで来たんだけど、なんか急に青春してるな……でも、あんまり何も起こらないままどんどん話が進んでいるみたいだけど……いや、最後の最後に「驚愕のどんでん返し」が……えっ、これで終わり?

 
 こういう「トラウマ系」は、日本のミステリでは珍しくないからなのかもしれないけど、あまりに御都合主義な展開(とくにヒロインの「ゆるさ」と言ったら!)など、これは絶対に何かの伏線に違いない!と思ったんですけどねえ。


 ………………どうしちゃったんでしょうね、本当に。
 これが「1位」なんて……
 『湿地』が『このミス』の4位と聞いて、「えーっ、あの程度(失礼!)で4位なの?」と思ったのですが、これは正直、その『湿地』のほうがマシなのではなかろうか……

 
 いや、激烈につまらない、とまでは言いませんし(とりあえず最後まで読めたので)、「2冠」でハードルを上げすぎてしまった面はあると思うんですよ。
 それは、この作品にとっては、かわいそうなところもある。
 先入観無しに読めば、読後感はそんなに悪くないし、『解錠師』という邦題も、「なるほどね」って思えます。


 僕は、海外ミステリが得意ではないのですが、それでも、『ミレニアム』とか『チャイルド44』、『ウォッチメーカー』など、「これはすごい!」「この登場人物の描写へのこだわりは、日本のミステリとは違うなあ」と感心した作品はたくさんあります。
 でも、『解錠師』に関しては、けっこう自信をもって、「これを読むのなら、まず『64』や『ソロモンの偽証』を読んだほうがいいよ!」って言えます。
 

 これが、今年に限った「海外ミステリの不作」だったら良いのですが……
(その一方で『64』『ソロモンの偽証』が極上の作品であるのも事実)


 まあ、「金庫破り」に興味がある人にとっては、興味深い作品ではないでしょうか(投げやり)。

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