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琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

らもトリップ ☆☆☆☆


内容紹介
中島らもが急逝して早7年。
彼が生前よくつぶやいていた言葉「いいんだぜ」。
どんな人間がいてもいい。どんな生き方があってもいい。
本作品は東京芸大生が中島らものそんなメッセージを受け取り映画に仕上げた。
中島らもの生き方に強くシンパシーを抱いたからである。
このよくわからないもやもやした世の中、何か突破口が必要だと感じた。
中島らもを描きたい」
中島らもなら何かをぶちこわす力を与えてくれるのではないだろうか。」
その一心で本映画は企画から制作、配給、公開までのすべてを東京芸大が中心となり製作した。
それでも中島らもの意志を汲み、決して説教臭くならず、湿っぽくならず、パワフルに破天荒に描き出したのが本作品である。
著作小説のオムニバス映像化と関係者インタビューから映画を構成し、アーティストをとことん味わい尽くす「アーティスト体感映画」が誕生!


【キャスト】
「らも語り」
石田長生 宇梶剛士 大槻ケンヂ 竹中直人 チチ松村 中島さなえ 中島美代子 原田伸郎 古田新太 宮前賢一 山内圭哉


僕はこの作品の存在を知らなかったのですが、TSUTAYAで見つけて「おお、らもさんお久しぶりです」って思いながら借りてきました。
3本の短編小説の映像化と、その合間に挟まれる関係者へのインタビュー「らも語り」から成っているのですが、率直に言うと、短編小説の映像化は、あんまり面白くないというか、関係者インタビューが面白過ぎるんですよねこれ。
小説の映像化部分は、たしかに「中島らもワールド」なんだけど、ちょっと上品すぎるかなあ、なんて思いますし。
でもこれ、東京芸大生がつくったんだよなあ、すごいなあ。


僕にとってのこの作品は、とにかく関係者の「らも語り」を観るだけですごい価値がありました。
らもさんのライブ映像(とくに、ライブ中にガラの悪い客にからまれたとき、メリケンサックを弱々しく振りかざしながら「執行猶予中なんや」とボソッと呟き、観客が大ウケしているシーン!)や、『かねてつ』のCM映像、自宅で飼われている動物(アロワナ(ピラルク?)とかいるんだよ!)なども、ファン必見です。
無頼派のように見えていたらもさんが、実際は「仕事人間」だったと身近な人たちが証言していたのは意外でした。
実際の仕事ぶりなども、かなり具体的に語られています。


古田新太さんが舞台の脚本を頼んでいたら、「書けなくなった」と突然言われ、病院に尋ねていったときの話とか、中島さなえさんの「唯一、両親が授業参観に来てくれたときの話」なんて、亡くなってしまった人の話なのに、面白くて大笑いしてしまいましたし。
若くして、事故で突然逝ってしまった人なのに、らもさんを語る人たちは、みんな「らもさんの話ができるのが嬉しくてしょうがない」ように見えるのです。


僕にとっては、冒頭の山内圭哉さんの「ひとことで言うなら、らもさんは、いつも『弱いものの味方』だった」という言葉がすごく印象的でした。
最後に流れる『いいんだぜ』という曲を聞きながら、僕は、「見えないふりをしてやりすごして生きてきた自分」のことが、ちょっと情けなくなりました。


できれば、この関係者インタビューだけで2時間くらいのドキュメンタリーにしてもらいたいくらいなのですが、らもファンは、とにかくこの「らも語り」だけでも観る価値があると思います。


ああ、そろそろまた『ガダラの豚』を読み返さなくては!

ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)

ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)