琥珀色の戯言

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【読書感想】金持ちになる方法はあるけれど、金持ちになって君はどうするの? ☆☆☆


こちらはKindle版。紙の本より少し安いです。
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内容紹介
2013年3月27日に仮釈放された堀江貴文の新刊。
収監中も鮮度の高い情報を発信し続ける著者による、若者のためのビジネス書。
獄中という状況を感じさせない未来を見据えたビジネスアイディアの数々に加え、本書では、それを実現するためのメソッド、思考を読み解く手引きとして、メールマガジン読者とのQ&Aを再構成の上、収録。
さらに特別解説として、著者のよき理解者である文化人類学者・船曳建夫氏、夏野剛氏、藤沢数希氏、西村博之氏ら識者が、著者の思考の補助をしつつ、合理的思考を説く。カバーイラストは漫画家の西原理恵子氏。

堀江さんが仮出所してから、もう3か月になるんですね。
すでにいろいろなプロジェクトが始まっているようなのですが、この本は、獄中でなされたメールマガジン読者との質疑応答をメインに、各界の堀江さんと親交のある人たちの「解説」を加えたものです。


堀江さんの言葉を読んでいると、ものすごく率直な人柄を感じるのと同時に、「身も蓋もないというか、頭では理解できても、それを実行するのは僕には難しいなあ」と感じることも多いんですよね。
でも、この本を読んでいると、「金の亡者」的な僕のイメージは、間違っているんじゃないかと思えてきました。

(Q:読者、A:堀江さん)


Q:東大中退、特にやりたいことはないが、なるべく早く金持ちになりたい。苦労は厭わない。という状態だったら、堀江さんは何をしますか?


A:やりたいことが見つかるまでダラダラします。でも、やりたいこともないのに金持ちになってどうするんですか?


この本を読んでいると、収監され、すべてを失ったようにみえる堀江さんは、ある意味「とにかく金を稼いで、会社を大きくしなければならない」という束縛から解放されたのかもしれないな、という気がしてくるのです。
「お金を稼ぐ」ことの先、「何のためにお金が必要なのか?」を、あらためて考えているのではないか、と。


ここで紹介されているQ&Aを読んでいると、堀江さんの「情報収集力」に圧倒されてしまうんですよね。
堀江さんの「本業」とは関係なさそうなさまざなまエピソードが、次から次へと出てきて驚かされるのです。

(カレー屋を開業したいのだが、インドカレー専門店のようなカレー粉から作って味にこだわった店か、業務用カレールーを使い、味もそこそこ、回転率重視なココイチのような店と、どちらが良いか?という質問に対して)


A:1店舗でやるなら、ココイチに勝つのはまったく問題ないでしょう。その店舗の調理場で1日分のルーを作りお客さんに出せばいいのですから。
 しかし、2店舗になるとどうでしょうか?同じ味のブランドでやる場合、当然お客さんも同じ味を求めますから、1つの店で2つ分のルーを作るか、自宅か、あるいは作業場を作らなければならなくなります。数店舗になるとスパイスの安定供給やセントラルキッチンの必要性が出てきますが、さすがにそこまでの投資はできないので、ハウス食品やS&Bからカレールーをオリジナルブレンドで調達することになります。
 実はカレー・スパイス業界はその2社の寡占状態にあるので、ココイチのようにどちらかの傘下に入らないと、安定したスパイス供給がされなくなります。
 こういった流れがカレー業界にはあるので、どういう方向性で行くかという問題です。

 プリウスなどのハイブリッドカーがブームだ。エコカー減税の際に、プリウスは半年待ちになるほどだったらしい。
 あの燃費向上には回生ブレーキングシステムが役に立っているらしいが、自動車業界関係者に言わせれば「プリウスはそこそこまともだけど、他のはあまり電力に回生できていない」のだという。あの燃費向上はエンジンの構造を改良した部分も大きいのだそうだが、もっとも大きいのは”運転する人”の意識が変わるからなのだという。
 プリウスを運転すると、モーター駆動している時とエンジンで走っている時と分けて表示するモニターがあるので、その瞬間からエコに目覚め、できるだけモーターだけで運転するように運転方法を改めるのだ。確かに街を走るプリウスは、急加速をしないように思える。
 つまり、車そのもの以上に燃費がよくなるような運転をしているからこそ、燃費が向上する、ということなのだそうだ。

 業務用のカレーを大量につくろうとすれば、ハウス食品かS&Bの傘下に入らなければならない、なんて、僕は初めて知りました。
 スパイスを確保できなければ、大きなカレーチェーンをつくるのは無理ですよね。
 こういう話を教えてくれる人が、堀江さんの周囲にはいるのだなあ、と感心してしまいましたし、堀江さんも、そういうことをきちんと記憶している。
 そして、こういう話を、堀江さんは、さまざまな形で「ビジネス」に結びつけようとしています。
 ヒントはどこにでもあるし、そういう糸口を持ってさえいれば、獄中でもアイデアはどんどん浮かんでくるのです。


 この本のなかには、そういう派手な新ビジネスの話だけではなくて、けっこう身近な「仕事のやりかた」についても書かれています。

Q:堀江さんは過去に自ら営業に出てらっしゃったそうで、営業成績も、ものスゴく優秀だったと聞いています。
 大変失礼極まりないのですが、堀江さんは笑顔を振りまき言葉巧みに営業を行うタイプには見えないのですが……。


A:いわゆる営業マンみたいにスーツをビシッと着て、売るのが難しい商材を飛び込みで売っていたわけではないですからね。普通に仕事をくれたお客さんにきっちり納期通り注文通りのものを納品することを心がけていたら自然にお客さんが口コミでひろがったという感じです。
 営業に行くときのポイントは断らないことです。で、技術者をうまく動かしてちゃんと納期通りに仕事をするのもポイントです。納期を守らない会社はたくさんあるし、「こんなのできません」と断る営業マンも結構多いのです。

 
「営業の秘訣」って、「いつもニコニコしていなければならない」とか「話上手」みたいなものをイメージしてしまうのですが、堀江さんは「とにかく約束通りの仕事をきっちりやることだ」と仰っています。
そうすれば、その評判が口コミでひとがって、お客さんが増えていくのだ、と。
こういうのって、当たり前のことのようで、なかなかできていないこと、なのです。
頼む側からすれば、愛想が良いだけの営業マンより、無愛想でも、ちゃんと仕事をしてくれる人に、次も仕事を頼みますよね。
そんなこと、相手の立場になってみればすぐわかることのはずなのに、自分が「売る側」になると、なかなか見えないものだよなあ、と。
堀江さんは、仕事に関しては、至極真っ当というか、基本に忠実な考えの人なんですよね。
自身が有能なプログラマーだからこその自信なのかもしれませんが。


この本を読んでいて、すごく印象的だったのが、「解説」を書いているうちのひとり、ひろゆきさんのこんな言葉でした。

 テレビやネットの普及で、東京のギラギラしたマネーゲーム社会が、日本のスタンダードみたいに思われちゃったせいかもしれないです。でも、あんなの幻想だと思うんですよ。地方とかで特に定職もなく毎日ゲームしながらゴロゴロしてるのが、本当に幸せな人生だと感じるなら、僕はそれでいいと思います。

 地方在住の僕には、これ、実感として理解できます。
 この2013年でも、地方には、というか、日本のなかの多くの地域には、そんなにギラギラせずに生きている人のほうが多いのではないでしょうか。
 テレビやネットのおかげで、本来、「マネーゲーム社会に向いていない人」までも、それに参加しなければならないような雰囲気になっているのは、ものすごく不幸なことなのかもしれません。
 実際は、地方で地元の「仲間」とつながりながら生きている人というのもたくさんいて、そういう人たちは、ネットで「意識高い系」に感染することもないみたいなのですけど。


 お手軽に読めそうに見えるのですが、読んでいると、かなりの情報量がある一冊です。
 堀江さんの話って、「堀江さんなんて、嫌い」と思いがちな、「真面目なんだけど仕事を効率化するのが苦手な人」のほうが、役に立つんじゃないかな、本当は。

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