琥珀色の戯言

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ガッチャマン ☆☆



あらすじ: 21世紀初頭。謎の侵略者によって、たったの17日間で地球の半分が壊滅的な被害を受ける。侵略者から地球を守るため、“石”という特殊な結晶体の力を引き出せる適合者が集められる。適合者は800万人に1人。施設に集められた適合者は特殊エージェントとしての訓練を受け、石を操る忍者、ガッチャマンとして侵略者と戦うべく立ち上がる。

参考リンク(1):映画『ガッチャマン』公式サイト


2013年24本目。
月曜日のレイトショーで鑑賞。
観客は10人くらい。
チケット売り場で僕の前に並んでいた怖そうなヤンキーカップルが『ガッチャマン』御指名で、『スター・トレック』に逃げようかと思いましたが、初志貫徹。


冒頭でいきなり『ダイバスター』みたいな『おはよう戦隊』とかいうのがはじまって、なんかくだらないギャグをチャカチャカやっていたので興醒め。
いちおう、『ガッチャマン』はけっこう真面目なヒーローものなんだからさ……『機動戦士ガンダム・めぐりあい宇宙』の前に『SDガンダム』やるか?
ダイバスター』はけっこう好きなんですけどね、『おはよう戦隊』はサービスのつもりなのかもしれないけど、『ガッチャマン』観に来ている客にいきなり冷水ぶっかけてくるなよ……


で、本編開始。
いきなり説明的なセリフ全開です。
設定をほとんどテロップとセリフで説明してくれます。ああ親切。
この世界のギャラクターは、強いんだねえ。
冒頭のアクションシーンは、どこかでみたようなタイヤ型転がり系の巨大な敵とのバトル。
おお、けっこう強いじゃないかガッチャマン
それにしても、通常兵器がまったく効かないというギャラクターに一般兵士たちが虐殺されているなか、不敵な笑みを浮かべて「ご心配なく、作戦はもう発動しております」と語る南部博士!あんた鬼だよ鬼!事件は会議室で起こっているんじゃないんだ!


この『ガッチャマン』、セリフを聞いていて「ああ、これが伏線なんだろうな」と思うところが、すべて予想通りの伏線だったり(例:ベルク・カッツェは、女だったのか……)、子供のころから訓練されていたはずのエージェントたちが、いざというときになって「任務よりも仲間だろ!」とか言い出すのにはちょっと驚きました。
おお、アニメ・特撮ヒーローにも「ファスト風土化」の波が……
ケンとジュンが休日にイオンモールで買い物をして、びっくりドンキーでハンバーグを食べている姿が見えるようです。


でもまあ、僕はいろいろと戦争についての本を読んできましたが、最前線の兵士なんていうのは、「お国のため!」「任務第一!」という建前は建前として「うまいもん食いたいなあ」とか「あの女の子元気かなあ」なんて考えているのが、かえってリアルなのかもな、などとも思うわけです。
そういう意味では、人類の危機より自分の恋愛のほうが大事なジュンのキャラクターも、「リアルすぎて、ヒーローものとしてはちょっと受け入れがたい」と言うべきなのか。
何が本当に「リアル」かなんて、よくわからんですよねほんと。


ジュンがケンにふられた、という話を聞いたとたんに、「ああ、それはナオミのせいだな」とみんなの前で言い放つジョー。なんて口が軽いヤツ!というか、上映時間遵守のために幼馴染三人の戦いで世界の運命が左右されたり、ベルク・カッツェがいる基地がやたらと過疎化して、えっ?っていうくらいあっさり、潜入直後にベルク・カッツェがお出迎えしてくれるのもなかなかオツなものです。
僕が子供のころの特撮って、こんなもんだったよな、よく考えてみればさ。


しかし、この映画を観ていちばん痛々しいのは、作っている人たちの『ガッチャマン』への愛情があんまり感じられない、あるいは、昔『ガッチャマン』を観た人たちが持っているイメージと、作り手が「僕たちは『ガッチャマン』を知ってますよ」とアピールしているポイントが、ことごとくズレているところなんですよね。


実は、これを書く前に、いちおう、Wikipediaなどで、アニメの初代『ガッチャマン』のことを調べて、記憶を掘り起こしてみたのです。
アニメの『ガッチャマン』は1972年から74年の放映で、僕にとっては「物心がついていない時代」でした。


参考リンク(2):科学忍者隊ガッチャマン(Wikipedia)


もちろん、再放送では何度も観ていますし、あの主題歌のレコード(ソノシート)が家にあったことも覚えています。


ガッチャマン』といえば、あの主題歌と独特の鳥をモチーフにしたコスチューム、そして「科学忍法・火の鳥」。
……なんですけどね……うーむ。
僕は「人気アニメを実写化したもの」はけっこう好きで、これまで『宇宙戦艦ヤマト』『ヤッターマン』『あしたのジョー』から、『CASSHERN』まで、わりと楽しめたんですよ(残念ながら『デビルマン』は未見)。
これらの作品は、なんのかんの言っても、作中にアニメの曲がほんの少しでも使われていたり、名セリフが再現されたりしていました。
コスチュームや設定も、いじられているところはあるものの「原作になるべく近づけたい」という志が見えていたんですよ。
ところが、この『ガッチャマン』を観ていると「とりあえず、なんかパワースーツみたいなのを着た、男女5人組のヒーローアクションならいいんだろ」「ドロンジョさまの使い古しのようなボンテージっぽい恰好の悪役出せばいいんだろ」「火の鳥出しとけばいいんだろ」という、「やっつけ仕事感満載!」なんですよ。
僕が好きな「アニメの実写化」は、「実写をアニメの世界に少しでも近づけようとしている」。
でも、この『ガッチャマン』は、「アニメの設定をなるべく最低限しか利用せず、原作とは違う世界を描こうとしている」。
それが一概に悪いとは言えないのかもしれません。
かの宮崎駿監督は、初監督作品として打診された人気アニメの映画化を、原作はあまり好きではなかったのに引き受けたそうです。
監督として作品をつくってみたい、という欲望から。

そして、宮崎駿監督が完成させたのが『ルパン三世 カリオストロの城』でした。
素晴らしい映画で、僕も大好きなのですが、あれは「『ルパン』のキャラクターを借りているだけで、中身は『(未来少年)コナン』」です。
天才は、そういうことができる。
(ただし、モンキー・パンチさんは、『カリオストロの城』に関して、素晴らしい映画なのだけれど、あれが『ルパン』のイメージになっているということに困惑もしている、という話を聞いたことがあります)


まあでも、そういう「興味がない原作ものの仕事を、天才でもない監督が引き受けたらどうなるか」というのを、体現してみせたのが『ガッチャマン』なんじゃないかと思うんですよね。


僕もすっかり忘れていたのですが、Wikipediaで確認してみると、ジュンがケンに懸想しているという設定はアニメの『ガッチャマン』にあったそうですし(というか、ジュンは16歳でスナックを経営しているんですよ!で、料理は下手という設定で、甚平がそのスナックの料理担当!『ザ・ベストテン』の伊藤つかさもビックリです。
ケンは18歳でそのスナックの常連!
あと、ギャラクターも、とくにベルク・カッツェは、「お笑い担当」みたいなところがあったみたいです。


当たり前のことなのでしょうけど、作った人たちは、『ガッチャマン』のことを知らないわけじゃなかったのです。
でも、当時の子供たちが、『ガッチャマン』のどこに燃えたぎっていたかは、わかんなかったのかもしれないなあ……
そこに忠実につくるんだったら、5人そろったときの決めポーズとか、コスチュームとか、火の鳥とかをちゃんと作れよ……と言いたくもなるんですけどね……


ツッコミどころ満載で、これはけっこううれしいところでもあります。
ギャラクターは自由だ!人間は争いばっかりやってる!
って言っているにもかかわらず、実際のギャラクターの人たち(人、なのかあれ……)は、殺戮マシーンみたいなのばっかりで全然「自由」には見えなかったり、ジョーが何考えて行動しているのか、最後までよくわからなかったりもしますし。
カーランド博士、という外国人っぽい名前の博士を演じていたのが光石研さんだったのには、正直失笑を禁じえませんでした。
確かに、昔の特撮って、そんな感じだったけどさあ……
しかもこのカーランド博士が激烈バカで……


このご時世に「任務よりも仲間だ!」と声高に叫ぶ特撮ヒーローが登場する、というのは、逆に健全なことなのかもしれないな、なんて考えてみたりもするのです。
救われる側としては「そこも含めて、ちゃんと訓練しとけよ南部博士!」って思うのですが、「ゆとり教育時代のヒーロー」って、「人類よりも自分や仲間の命!」と考えるのが自然なのかもしれません。
むしろ、太平洋戦争で特攻機に乗って出撃していった昔の日本人や、原発事故に立ち向かっていってくれた人たちのような存在のほうが「特別」なんだよね。


ああ、なんかもう脱線しまくりなので、そろそろまとめてしまいますが、松坂桃李さん綾野剛さん、剛力彩芽さんのファンが、彼らの姿を観たい、ということであれば、僕は止めません。
ちなみに、この映画の剛力さんは、けっこうよかったですよ。
この映画の世界から取り残されてしまっているところに、けっこう親近感がわきました。
浮いている剛力さんを見ると、ちょっとホッとする。
初音映莉子さんとの「作品に恵まれない女優・頂上決戦」も、ある意味見どころかも。


でも、この作品、現代によみがえった『ガッチャマン』を観たいというオールドファンには、残念ながらおすすめはできません。
「ツッコミどころも含めて、特撮の魅力だ!」という人にとっては、けっこうイジリがいがある作品だとは思うのですが……


個人的にオススメはしませんし、これが『ガッチャマン』だと言われるのは悲しいのですが、1本の娯楽映画としてみれば、長い人生のうち2時間くらいは、こういうの観たいときがあってもおかしくないよね、という感じです。


観ながら、「おお、僕はいま、未来の『新・3大』が誕生する瞬間に立ち会っているのだ!」
という、妙な感動もありましたし。
これ、いつ『怒り新党』で採り上げられるのかな。


♪誰だ 誰だ 誰だーーー  こんな映画を撮ったのは
 原作破壊の   ガッチャマーーーン

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