琥珀色の戯言

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【読書感想】衝動買い日記 ☆☆☆


衝動買い日記 (中公文庫)

衝動買い日記 (中公文庫)

衝動買い日記 (中公文庫)

衝動買い日記 (中公文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
毛沢東スターリン握手像にはじまり、腹筋マシーン、時計、財布、トランクス、猫の家からご存じ挿絵本まで。女たちにはわかってもらえない、男の衝動買い心理をも絶妙に描写した顛末記。「衝動買いグッズたちのその後」を付した、異色・抱腹エッセイ。

 Kindle版で読みました。
 ちょうどセール中で、200円+Kindleランキング上位だったので。
 ちなみに、単行本が出たのは2000年ですから、いまから13年も前の本なんですね。
 一昔前までは、「買い物好き」というのは女性の特性、というイメージがありましたが、いまでは、Apple製品をはじめとする、男の「ガジェット愛」もかなり認知されている印象があります。
 もちろん、「そういうものがあることが世間で知られている」というのと、「妻がiPad miniを買うのを許してくれる」というのは、全然別の話で、「iPhoneがあるんだから、そんなに欲しければ、虫眼鏡でiPhoneの画面を見たら?」とか言われてしまうのが現実なんですけどね。

 
 まず、最初の「腹筋マシーン」という話で、新聞のオリコミ広告の読み方、の話が出てきます。

 たとえば、このエステのモデルは、股の間からむこうが見える痩せぎすな「エステ後」の姿よりも「エステ前」の丸ぽちゃ姿のほうがはるかに可愛く見えるから、モデルに使ったのは失敗だとか、この学習塾の戦果発表は、「ここ数年間の合格者」と銘打っているので、今年の戦果はよほど悲惨だったにちがいない、だとか、それぞれの業界によって、オリコミの味わい方のコツがあるのだ。

 この素晴らしい「裏読み」っぷり!
 この「学習塾の戦果発表の読み方」みたいなのが、「メディアリテラシー」の基本なのかもしれません。
(もしかしたら、「1年だけの実績では信頼してもらえない、というような業界の慣習があるだろうか?)
 その気になって読めば、折り込みチラシだけでも、けっこう楽しめるものなのだな、と。

 

 それにしても、鹿島先生がここで書かれている「物欲」は、けっこうヘンなものばかり。
 にもかかわらず、「あー、こういうのが欲しくなる気持ち、わかるなあ!」と頷いてしまうものばかりなのです。

 しかし、では、そういうお前はお土産を買うことが嫌いなのかと聞かれると、じつは、これが大好きなのである。少なくとも、他人のために買うのではなく、自分のために買うのは本当にたのしい。以前、ニューヨークに取材に出掛けたとき、同行してくれた女性編集者が、私があまりに紋切り型の安ぴかお土産を次々に買うのに呆れ果てて、「先生、いくらなんでもエンパイヤ・ステート・ビルの模型まで買うことないでしょう」とたしなめてくれたが、私は、未知の土地に行って、そこの代表的な建物の模型を買って帰らないと、どうしても気が済まないたちなのである。台湾に行ったときも、台北一の超高層ビル「新光三越」の模型を買うの買わないので女房と口論になった。結局、私のほうが譲歩して買って帰らなかったのだが、今ではこれをひどく後悔している。

 東京タワーに修学旅行で来た小学生じゃないんだから……
 というか、「毛沢東スターリン握手像」みたいな、土産物屋にたくさん置かれている「置物」なんて、一体誰が買うんだ?と日本の観光地で僕はかねがね疑問だったのですが、鹿島先生(みたいな人)が買っているのか!
 でもねえ、なんか「旅行先で、記念になるようなものを買おうとしてしまう習性」って、わかるんですよ、僕も。
 僕の父親も「鮭をくわえた木彫りのクマ」という、「一度は見たことがあるけれど、誰が買うのかわからないお土産」をいつのまにか購入していたのを思いだしました。


 そして、ちょっと前の本だけに、「いま、自分が『常識』だと思い込んでいるものは、昔からそうだったわけではない」こともわかります。
 ブリーフとトランクスについての話。

 では、私自身はどうだったかというと、ある体験をするまではトランクス派だった。その「ある体験」とは、ほかでもない初体験のことで、このとき、女の子から、「なんか、子供みたいなパンツはいてるのね」と言われて、大ショックを受けたのである。そうか、いまどきの若者はみなブリーフ派なんだ、と、そのとき初めて知ったのである。そういえば、遊び人だった高校時代のブリーフ派の友人から、「おまえ、まだそんなパンツはいてるのかよ」と言われたことがあったのを思い出す。女の子と付き合うなら、ブリーフ派でなければならないんだ、と、そう思った。

 この本によると「昭和の40年代に、突如ブリーフというものが登場してきた」そうです。
 いまの僕のイメージでは、「ブリーフをはいているのは、子供か中年のオッサン(いやまあ、僕も中年のオッサンであることは、否定できない事実ではありますけど)、一部の『肉体派』を除く若者はトランクス一択!」なのですが、一昔前は「ブリーフのほうがカッコイイ」時代だったんですね。

 日用品から、ワインやチーズ、高価な挿絵本の話まで。
 鹿島先生、ネット通販にハマって、大借金をこしらえていなければいいけれど……とか、ちょっと心配になってしまいました。
 この本を読んでいるかぎりでは、ネットで売っているようなものには、あまり興味がないような感じもしますけど。

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