琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

【読書感想】オカルト 現れるモノ、隠れるモノ、見たいモノ ☆☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
数年ごとに起きるオカルト、スピリチュアルブーム。繰り返される真偽論争。何年経っても一歩も進まないように見える世界。なぜ人は、ほとんどが嘘だと思いながら、この世界から目をそらさずに来たのか?否定しつつ惹かれてしまう「オカルト」。―いま、改めて境界をたどる。

この本は、『職業欄はエスパー2』として『本の旅人』に連載されていたものをまとめ、加筆したものだそうです。
オビには、こう書いてあります。

 エスパー、心霊研究者、超心理学者、スピリチュアルワーカー、陰陽師、UFO観測家、臨死体験者、メンタリスト etc.に直撃!!

まさにこの本は、森さんが、これらの「怪しげな人たち」を直撃したものです。
最初に登場するのが、清田益章さん。
「スプーン曲げ」の清田さん。僕も子どものころ、テレビで観ていました。

 テーブルに運ばれたジョッキの半分ほどを一息に飲み干してから、「……で、オレは今日、森さんのためにスプーンを曲げればいいのかな」と、清田が不機嫌そうに言った。僕の両隣で三人の編集者が、微かに緊張する気配があった。ときおり真顔でこういうことを(しかも不機嫌そうな口調で)言うから、付き合いの浅い人は、もしかして気分を害しているのでは、と緊張する。でも実のところは、店の扉を開けたら初めて会う人が三人もいたので、彼なりに照れているだけなのだ。僕は言った。
「曲げたくなければ曲げなくていいよ。本音は曲げてほしいけれど」
 無言でうなづきながら清田は、ジョッキの残りを飲み干した。ふと思う。初めて出会ってから、もう十数年が過ぎるけれど、この男は不思議なくらいに変わらない。

エスパー清田」の人格、なんて、いままで考えたこともなかったなあ、なんて、僕はこれを読みながら考えていました。
彼らだって、「スプーンを曲げるだけの機械」じゃないのだよなあ。


この本の面白さは、「超能力は、本当にあるのか?」にだけスポットを当てているのではなく、いわゆる「超能力者」とは、どういう人々なのか、を語ろうとしている点にあります。


こういう本は、大きく分けて「信じている人が書いているもの」か「疑っている人が、世間の誤解を解くためのもの」かの両極に分かれているのですが、森さんは、「かなり疑ってはいるけれど、すべてがウソやトリックや妄想だとも言い切れない」という微妙なスタンスで、取材対象に向かっています。
この本のなかで、読者は森さんの目を通じて、彼らのパフォーマンス(と言っていいのかどうかわかりませんが)を体験することになるのですが、読んでいくうちに、僕はどんどん、わからなくなってきました。


カメラマン、住倉カオスさんは、「心霊写真」について、こんなふうに森さんに仰ったそうです。

 例えば心霊写真に関してですが、よく私は「プロが持つカメラに心霊写真は写らない」という言葉を使います。フィルム時代、撮影ともなると36枚撮りのフィルムを50本〜100本くらいは当たり前に撮影しました。それを毎日のように繰り返します。アマチュアなら1日36枚を使い切ることなど滅多にないでしょう。
 単純に枚数だけで言うと、プロはアマチュア数千人分の写真を一人で撮っているわけなのに、心霊写真を撮ったというカメラマンの話は、自分も含めほとんど聞いたことがありません。なぜならプロは、その場に合ったレンズを選び、機材にトラブルがないようにメンテし、ガラスなどの写り込みをチェックし、ハレーションが入らないようにフードをつけ、ミスがないようにあらゆる対策を行うからです。
 知り合いの女性ライターが、心霊写真を撮ったとよく写真を見せに来るのですが、その多くはいわゆるオーブ写真です。
 オーブ写真に関しては、私は「コンパクトカメラ・内蔵フラッシュ・埃や虫」といった条件が揃えば、必ず撮れるものと思っています。ですが彼女は、「また撮れちゃった」と困ったような嬉しいような表情をしています。
 ただしオーブ以外でも、彼女は多くの心霊写真を撮影しています。自宅のリビングで撮ったものに犬の霊が写ったものがあります。テレビでも放映された有名なインパクトのあるものなのですが、ガラスに大きく犬の顔に見える白い影が映っています。彼女曰く、昨年死んだ愛犬とのことです。「ストロボがガラスの汚れに反射して」などと一応の説明はできるのですが、ならば再現しようと思っても、あのように(犬のような霊のような)絶妙な画像として撮影することは、相当難しいだろうとは思います。


これはたぶん、99%くらいは「トリック」あるいは「偶然」なのでしょう。
でも、もしかしたら、トリックのなかに、ほんのわずかに「本当の超能力」みたいなものが紛れているのかもしれない。


もし、本当に「超能力」なんていうものがあるのなら、これまでの人類の歴史、あるいは、ここ50年くらいの「映像で記録できる歴史」のなかで、ひとつくらい「決め手になるような証拠」が残っているのではないか、とも思うんですよ。
その一方で、「本当に無いのであれば、オカルトについての議論が、こんなに長い間続いているのはおかしいのではないか?」とか、ちょっと考えたりもするんですよね。
150キロのボールをホームランできる人間がいるのなら、透視や人の心を読むことができる人間がいる可能性だって、無くはないのではないか?


まあ、率直に言うと、僕はいままでさまざまな参考文献に触れてきて、頭の中では「懐疑的」なのですが、いままでに「どうしてもトリックだと説明できない体験」を2回しているんですよね。
ひとつは、某所で先輩の両親の名前を知らない「超能力者」がいきなり当てたこと。もうひとつは、友人がいきなりスプーンを曲げてみせてくれたこと。
何かトリックやコツがあったのかもしれないけれど、どうやったのかがわからない以上、「トリックだ」とも言い切れなくて、「わからない」と保留するしかありません。


森さんは、こんな話も紹介しています。

 オカルトは人目を避ける。でも同時に媚びる。その差異には選別があるとの仮説もある。ニューヨーク市立大学で心理学を教えていたガートルード・シュマイドラー教授は、ESPカードによる透視実験を行った際に、超能力を肯定する被験者グループによる正解率が存在を否定するグループの正解率を少しだけ上回ることを発見し、これを「羊・山羊効果(sheep-goat effect)と命名した。
 この場合における「羊」は超能力肯定派を、そして「山羊」は否定派を示している。つまり超能力を信じる者たち(羊)が被験者となる実験では、超能力の存在が証明されるかのような結果が出るのに対し、超能力に否定や懐疑の眼差しを向ける者たち(山羊)が被験者になる実験では、超能力を否定するかのような結果が出る現象が羊・山羊効果だ。
 つまりどちらにせよ、現象が観察者に迎合する。媚びようとする。あるいは拒絶する。
 1942年に行われた最初の実験以降、シュマイドラー教授は10年以上にわたって実験を繰り返し、最終的には約25万回に及ぶ透視実験を行った。その結果として羊群の的中率は適正期待値のプラス約0.4%、山羊群はマイナス約0.3%であり、両者の差異は、偶然比で1万分の1未満となり、きわめて有意であった。
 ただし被験者ではなく、肯定的な実験者が肯定的な結果を心情的に得やすい(同様に否定的な実験者が否定的な結果を得やすい)という現象は、特にオカルティックな研究や実験の分野に限らなくても、実験者効果として、ごく普遍的にある現象だ。

「肯定派」が期待しているような「100%の超能力」は無いのだとしても、こういう話を読むと、なんらかの「目には見えない力」というのはあるのかもしれない、とも感じるのです。
「科学的」に考えるのであれば、こういう結果が出るのには、なんらかの理由があるのでしょうから。
それは、いわゆる「超能力」なのか、それとも、なんらかの「実験結果に影響する物理的な変化」なのか?


 25万回の試行というのは、統計的な処理をするためには、十分な数でしょうし。
実験になんらかのバイアスがかかっていたと考えるには、0.3%とか0.4%というのは、かえって小さすぎる数字のような気もします。
もし、「信じることで、少しだけ的中率が上がっている」のなら、それも「小さな超能力」だと言えなくもない。
実用性は、皆無に等しいでしょうけど。


とりあえず、「超能力が絶対に無いことを証明する」のは、非常に困難なんですよね。
いわゆる「悪魔の証明」になってしまいますから。


この本、オカルトに対して真摯に向き合っているだけに、「ニセモノを見分けるためのポイント」も詳しく書かれています。
僕みたいに「信じていない人間」は、読んでいるとかえって揺らいでしまうのですが、「信じやすい人」にとっては、「騙されないために」読んでおくといつか役に立つかもしれません。

 自称霊能者や多くの占い師がよく使う手法は、大きく三つに分けられる。一つめはホットリーディング。事前に得た相談者の情報を利用すること。除霊や墓の販売など謝礼の額が大きい場合には、私立探偵などを雇って相談者の身辺調査などを事前にすることもあるという。特に今はネット社会だ。それなりに著名で社会で活動している人ならば、事前にその名前を検索することで、かなりの情報がつかめるはずだ。あるいはグーグルマップのストリートビューを使えば、相談者の住所を聞いただけで実際に足を運ばなくとも、その人の家の近所の状況が手に取るようにわかる。
 二つめはコールドリーディング。事前に得た情報ではなく、カウンセリング当日に、相談者の雰囲気や様子、あるいはカウンセリングが始まる前の雑談などから得た情報を利用するテクニックだ。表情に感情が表れやすい人は、まさしくこの手法のカモになる。
 三つめがストックスピール。誰にでも当てはまるはずのことをもっともらしく言いながら、相談者の信用を引き出すテクニックだ。つまり大学生の某は、もっとも初歩的なストックスピールに引っかかったわけだ。「何かお悩みのようですね」以外にも、このテクニックのバリエーションはとても多い。「普段はかなり億病だけど、突然大胆な行動をすることがありますね」とか、「普段は社交的で友達付き合いもいいけれど、時おり無理をしてしまうことがあるようですね」や、「自分に対して厳しすぎる傾向があります」、「あなたはこれまでの人生で、もらうよりも与えるほうが多かった」などが、よく使われるフレーズだ。

ただし、森さんは「コールドリーディングやストックスピールがあったからといって、その霊能者や占い師がイカサマだとの断言はできない」とも仰っています。
まあ、たしかに「断言」はできないですよね。


「オカルト」と、それに関わる人たちが丁寧に扱われた、興味深い本でした。
騙されたくない人も、騙されてみたい人も、一度読んでみて損はしないはずです。

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