琥珀色の戯言

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エリジウム ☆☆☆



あらすじ: 2154年スペースコロニーエリジウム”で生活する富裕層はパーフェクトな居住空間で過ごす一方、荒廃した地球に暮らす貧困層はひどい搾取に苦しんでいた。エリジウム政府高官のローズ(ジョディ・フォスター)が地球の人間を消そうと動く中、地球で暮らすマックス(マット・デイモン)はエリジウムに潜入することを決意。残り5日しかない寿命を懸けて戦いに挑む。

参考リンク:映画『エリジウム』オフィシャルサイト

2013年27本目。
金曜日の19時からの回を鑑賞。
観客は15人くらい。公開初日+三連休前夜ではありますが、まだ少し時間が早ったのか、大盛況とまではいかない感じでした。
僕の個人的な感覚として、金曜日から公開される映画って、内容的にいまひとつなものが多いような気がするんだよねえ……


第9地区』が第82回アカデミー賞作品賞などにノミネートされた新鋭ニール・ブロムカンプ監督が、マット・デイモンを主演に迎え、手がけた「大作」で、僕はけっこう楽しみにしていました。
第9地区』がけっこうおもしろかったので。


……ごめん、寝た。
寝不足だったのは事実ですが、こんなに何度も寝落ちしながら映画を観たのは、『ツリー・オブ・ライフ』以来です。
ブロムカンプ監督、どうしちゃったんだろう……
いや、ただ綺麗なだけで現実感がまったくないエリジウムはともかく(わざとそうしているんでしょうけど)、「選ばれていない人間たち」が雑草のごとく住んでいる地球の貧民街のような描写の緻密さは、さすが『第9地区』の監督だなあ、と思ったんですよ。
でも、率直なところ、この映画の見どころって、「荒廃した地球に住む貧困層のリアリティとバイタリティ」以外に、何も思いつかないのです。
予告を観て「ああ、この男がエリジウムに潜入して、エリジウムを破壊するのだな」と予想していた皆さま、その脳内で想像した映画の登場人物を3分の1くらいに減らして、あんまり本筋に関係なさそうな男同士のむさくるしい殴りあいをイヤってほど盛り込み、全体を大幅にスケールダウンしたのが、この『エリジウム』です。


アクションシーンも特筆すべきことはなく、ストーリーも「エリジウムって、そんな杜撰な管理システムで動いていて、ジョディ・フォスターのさじ加減ひとつでなんでもできるのか?」と呆れてしまいます。
そういう大事なことは、もうちょっとセキュリティをしっかりしろよ……
エリジウムじゃなくて、ゴールデンバウム王朝じゃないのかこれ……


ほんと、最後の15分くらいまで「ああ、なんであの『第9地区』を撮った監督が、こんな毒にも薬にもならない、エスプリのかけらもない、あまりにも平凡な作品をつくってしまったんだ?」ということばかり考えていました。
最後は少し盛り上がった……ような気がするんだけど、あらためて考えてみると「それで解決するんだったら、そのくらいの余裕があるんだったら、エリジウムの人たちはすでにそうしているはずじゃないのか? そのほうが地球の庶民たちの生活は安定するし、社会不安も解消されるはずなのに。
ところが「持てる者」たちは、自分たちの分け前が減ってしまうことを恐れて、「みんなで分け合う」ことを頑なに拒否しつづけているのです。


ん?
これ、感想書きながら、この映画が、いまの時代のアメリカで作られたということを考えてみると、実はこれ「富者と貧者の戦いを描くSFアクション」じゃなくて、ベタなSF映画という羊の皮をかぶって、「医療資源や社会保障を貧しい人々にいきわたらせることを拒絶するアメリカ人たち」を、強烈に批判している映画なんじゃないか、と思いついたのです。
民間保険産業の力があまりに強くなってしまい、「世界唯一の大国なのに、先進国で唯一国民皆保険から取り残された国」になってしまったアメリカ。
経済力と医療システムがあれば「国民皆保険」のほうが、大部分の普通の国民にはメリットが多きいはずだ、と日本人である僕は考えています。
ところが、アメリカでは(移民が多く、多民族国家であることもあり)、「自分たちの医療資源の『分け前』が減ってしまう」「国民皆保険は、社会主義国家がやることだ」などと、多くの国民が思っているそうです。
もちろん、彼らの大部分は、大富豪とはほど遠い存在です。


僕が「このくらいで済むんだったら、エリジウムの人たちも、さっさとこうしておけばよかったのに」と思ったのは、「アメリカの医療制度改革も、実際にやってみたら、そんなものなんじゃないか?」という監督からの提言だったのかもしれません。


いやまあ、実際のところは、マット・デイモンとか、ジョディ・フォスターにも出てもらうんだから、売れる映画をひとつ頼むよ、なんて言われて、迷走のあげくに、こんなことになってしまった、という可能性もありそうですけどね。


あんまり面白くないので、オススメはしません。
とくに『第9地区』のような面白さを期待していると、かなりガッカリするかも。
正直、僕は剛力さんの『ガッチャマン』のほうが、「次に何が起こるか、あまりにもカオスでよくわからない」という点だけでも、この『エリジウム』より面白いんじゃないかと思ったくらいです。

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