琥珀色の戯言

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R100 ☆


あらすじ: 男(大森南朋)は誘惑に負け、1年という期限付きでミステリアスなクラブへの入会を決意する。入会の際の条件は、たとえ何があろうとも途中で退会することはできないという内容だったが、当初彼はそのことをまったく気にも留めていなかった。その後、彼の人生には次々と型破りで魅力的なキャラクターの女性たちが出現するようになり……。

参考リンク:映画『R100』公式サイト


2013年30本目。
月曜日の19時からの回(通常料金)を観ました。
観客は、僕も含めて5人。


ネット上では、早くも「(映画館が)ガラガラ伝説」を築きつつある、松本人志監督の『R100』。
僕は『大日本人』『しんぼる』『さや侍』と、松本監督の映画、これまでは全部映画館で観ているんですよね。
映画監督としては、高評価とはいえない松本さんなのですが、僕は松本さんの「既存の映画を打ち破りたい」という志に魅力を感じてもいるのです。
大日本人』とか『さや侍』なんて、「この人じゃなければ撮れない」映画だったと思いますし。


今回の『R100』も、ネットでは評判悪いし、トロント映画祭では、ぶっちぎりの最低評価を食らってしまったらしいけど、海外の「高尚な」映画祭での評論家の評価だし、とりあえず観てみよう、と映画館に足を運びました。


率直に書きます。
つまらなかった。
そして、不快だった。
久々に、椅子を蹴っ飛ばして途中で帰ろうかと思いました。


この映画のいちばん良いところは、上映時間が100分しかないことです。
あとは、冨永愛さんと佐藤江梨子さんの「女王様」がみられること。
僕にとっては、それだけ、でした。


以下はネタバレ感想なので隠します。
いつもなら、「ぜひ観てから読んでください」と書くのですが、今回は、この100分、別のことに使ったほうが良いかもしれません。
ですから、この先も読まなくていいです。
でも、個人的には言いたいことだらけなので、書きのこしておくことにします。


本当にネタバレですよ。
僕は「くだらない映画」って、そんなに嫌いじゃないんです。
「くだらない映画」には「なんだよこれ、ほんと、くだんないなあ〜」と愚痴ったり、その酷さを観てしまった人たちと、一緒に悪口を共有する楽しみがあります。


主人公・片山は、つらい日常からの逃避+性癖もあって、「ボンテージ」という「生活そのものに入り込んでくるSM愛好会」に入るのですが、「女王様」はどんどん片山の日常に現れるようになり、会社や、家庭にも入り込んできます。
うーん、こういう設定だけ読んでみると、不条理コメディ、みたいですよね。
でもね、これがもう、まったく笑えない。


松本監督にとっての「SM」って何なんだろう?
この映画の中に現れてくる「S側」って、みんなボンテージファッションに身を包んだ「女王様」で、片山に対して行う「S行為」って、ムチとかロウソクとか蹴りとか、要するに「暴力」ばっかりなんですよ(そうじゃない場面も少しはあるんですけど)。
「SM」を題材にするのは良いとしても、そんな薄っぺらい「ベタなSM像」ばかり見せられると、「監督は、SMをバカにしているのだろうか?」という冷え冷えとした気分になってくるんですよ。
僕は別にSMの愛好者じゃありませんし、あえてそういう「世間のイメージ通り、ベタに描く」ことによって、「お高くとまっている映画の世界そのものを茶化す」という目的もあるのかもしれませんけど……
「SM」を題材にするのだから、もっと「こんなSMがあるのか……」みたいな深みを感じさせるような作品なのかと思っていたのです。


子どもが縛られて吊るされている光景なんか、もう見ていてイヤでイヤで。
ちょうどあの子どもが、僕の息子と同じくらいの年齢だったこともあって、「映画の世界とはいえ、これが面白いと思ってやってるのかよ……」と腹まで立ってきました。


そして、さらに、この片山関連の描写そのものが「100歳を超えた監督が撮った映画」だということが、物語の中盤で明かされます。


あーよかった!「本物」の子どもがSMごっこに巻き込まれたりしていなくって!


ところが、その後、続けてこの映画をみていると、設定そのものにもムカつき、あきれてくるんですよ。
どんな酷い場面も「どうせ『映画の一部』なんだろ」と、醒めた目で見ずにはいられない。
そして、制作側は「どんなに酷いことを描いても、いざとなったら『いや、あれはフィクションの中のフィクションだから。何冗談にマジになってんの?』と逃げることができる。
この映画、観客と、まったく「勝負」してないよ……
敬遠球を投げて、「どうだ、お前らにはこのボールは打てないだろ!」って大威張り。


「つまんない」「何これ?」という観客の反応すら、エンドロールのあとに、映画のなかの「関係者」たちが代弁してくれます。
でもさ、せめて、「つまんない映画をつまんないと罵倒する快感」くらいは、観客に残しておいてほしかったよ……


「お前らが『つまんない』って溜息をつくことは、お見通しだ!」
あーはいはい、そこまでして、恥をかきたくないのかね……
スベってみせるのが芸だという作品なら、もっと徹底的にスベればいいのに。
つまんない映画をつくっておいて、「つまんない」って言われることを見越して、「あーそう言うと思った!」って予防線を張るくらいなら、「面白い映画」をつくればいいのに。


これはある意味「お前らが日頃薀蓄を語っている『映画』って、こんなにわざとらしくて、御都合主義で、矛盾だらけのものじゃないか。そろそろ気づけよ」という松本監督からの挑戦状なのかもしれません。
まあ、これだけ作品そのものがつまらないと、「そんなふうに観客に解釈をさせて、煙に巻こうとしている」ようにしか思えないんですけどね。


この映画から僕に伝わってくるのは「オレは悪くない」っていう松本さんの言い訳だけでした。
でもまあたしかに、松本さんが監督でなければ「お蔵入り」でもおかしくない映画だったので、これが誰にも止められずに全国公開されてしまうのは、かわいそうだという気もしますね。

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