琥珀色の戯言

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【読書感想】タブーすぎるトンデモ本の世界 ☆☆☆☆


タブーすぎるトンデモ本の世界

タブーすぎるトンデモ本の世界

内容紹介
天皇の霊言からキリスト教と浣腸、食品添加物オスプレイ、人権啓発アニメや放射能デマ、在特会君が代、サンカやフリーメイソン、慎太郎閣下の問題作まで、「豪華」なトンデモ世界を堪能ください!


第1章 皇室・神様・新宗教等にまつわるトンデモ本
第2章 右翼・左翼・任侠・人権問題等を扱ったトンデモ作品
第3章 医療と食を扱ったトンデモ本
第4章 政治・時事・差別問題を扱ったトンデモ本・映画
第5章 芸能界・文壇・オカルトのトンデモ本<コラム>
・皇室をめぐるトンデモ説
嫌韓レイシストたちの奇妙な世界
・オススメのサンカ本
・トンデモ放射能デマの世界
・猟奇と佐藤春夫――昭和5年のタブー
フリーメイソン・おススメ本50連発


久々に「と学会」の本を読みました。
1995年に『トンデモ本の世界』を読んだときには、「世の中には、こんなにトラップがたくさんあるのに、それをちゃんと教えてくれる人っていうのは、これまでいなかったんだなあ」と感動したものです。
ノストラダムスの大預言」とかを僕もけっこう本気で信じていて、30歳にもならずに死んでしまうのか、それなら勉強とかする必要ないんじゃないか、と小学校の同級生と相談していたものです。
まあ、弱虫なので「もしそれで地球が滅亡しなかったら困るから」ということで、結局イヤイヤながら、少しは勉強したんですけどね。
当時の小学生は、けっこうみんな本気で「1999年に地球は滅亡する」って信じていたんだよなあ。
しかし、それで商売している大人がいたと考えると、悪質極まりない話です。


でもまあ、最近はネットでデマの検証も行われているし、「と学会」の活動も、「ツッコミを入れやすいものを嘲笑する」ような感じになってきたようにみえて、僕もあまり「と学会」の本を手にとらなくなっていました。
今回、これを読んだのは「なんだかちょっと懐かしくなって」でした。
そして、読みながら、自分がすっかり年をとってしまって、「デマと、それを検証する作業」を読み進めることに、1995年ほどの熱意も忍耐力も持てなくなったことを自覚せずにはいられなかったのです。


いやまあ、そういいながらも、笑ったり、感心したりするところも少なからずあったんですけどね。
「と学会」のライフワークともいえる、某宗教団体が多量に出版している本へのツッコミは、やはり、この本のなかでも白眉です。

 ついに「幸福実現党」結党。いよいよ政界に打って出んとするとき、「昭和天皇」は再び大川総裁を通じてご降臨なさいました。
 それに先立ち、畏くも明治大帝がお出ましになられ、賜ったという霊言を収録したのが『明治天皇昭和天皇の霊言』です。まえがきには「明治帝(原文ママ)には、ここ数年、ことに様々なアドバイスをいただいている。感謝に堪えない」(2ページ)とあります。

 
 背筋を正して本文を繙きます。

――それでは、明治天皇の御霊言を賜りたいと思います。


明治天皇明治です。


――有り難うございます。(11ページ、太字はサイゾー編集部による)


 この一言にどれだけ多くの幸福の科学ファンが腹筋を鍛えながら涙したことでありましょう。ましてその場にいた信者さんも感動いかばかりであったことか。
 あまつさえ幸福の科学を知らぬネット住民の中でも話題沸騰。一気に幸福実現党の名前が広まりました。


 ううっ、僕の腹筋もここでかなり鍛えられたことを告白しておきます。
 「明治天皇」は一言しか発していないのに、ツッコミどころ満載すぎる。
 これ、信者さんたちは「おお、明治天皇だ!」と、そのまま受け入れることができたのでしょうか……
 「幸福の科学」の信者さんには、偏差値が高い人が多いと言われているので、いろいろと自分の中で折り合いをつけるのが大変なのではないかな……


 食品添加物に関する誤解やオスプレイは「突出して危険な兵器」だとは言い切れない、という検証、いまや会長の山本弘さんのライフワークと化しているようにすら思われる「放射能デマとの闘い」。
 しかし、「と学会」のみならず、ネット上では多くの人がデマの検証を行い、それを参考文献とともに無料で公開しているにも関わらず、デマはなかなか消えず、新しいデマや誤解は生まれ続けています。
 ネット慣れしている僕にとっては、こういうまとまった形での「検証本」を読むのは、ちょっとめんどくさい感じもしたんですよ。
 でも、あらためて読んでみると、(「と学会」が書いていることだからといって、鵜呑みにしてはいけないのだけれども)ネットで、他人による評価がたくさんされている情報を、その反応も含めて読むよりも、こうやって書籍化されているもので、著者の意見にまず素直に触れてみることも、けっこう大事なのではないか、という気がしてきたのです。
 ネット慣れしてくると、「一次情報」そのものよりも、「それに対する周囲の反応」で、自分の立ち位置を決めてしまいがちになりますし。
 ほんと、デマの多くは、そのメーカーのホームページを確認したり、Googleで一度検索してみれば、すぐに疑わしさが漂ってくるようなものなんですよ。
 ところが、その「ひと手間」を省いて、つい、信じたいものを信じてしまうのです。

 郵政記念日である2012年4月20日、福島県伊達市で園児が感謝をこめてポストの清掃をした……という微笑ましいニュースの写真に、『幼稚園児除染チーム』というキャプションをつけられてツイートされたことから、「園児に除染活動をさせた!」と思いこんで激怒する人続出。元のニュース、ちゃんと読もうよ……。
この話については、こちらを参照してください


 山本弘さんは、こんなふうに述べておられます。

 先にも書いたように僕は反原発派だが、こうした危険デマの数々は許せない。
 第一に、あまりにもバカなデマが広まることは、「反原発派は頭が悪い」という印象を大衆に与えてしまう。本人たちは反原発のために活動していると思っているのだろうが、結果的に、反原発運動に対する強力なネガティヴ・キャンペーンになってしまっているのだ。
 また、危険デマは人々に無用の不安や混乱を与えるだけでなく、被災地の福島の人たちへの差別につながる。福島産の農作物は現在、放射線が基準値を下回るものだけが消費されており、まったく安全なのだが、それらを消費者が忌避する傾向がある。瓦礫焼却の問題もそうだが、人体に害のないレベルの微量の放射能を「危険だ!」と騒ぎ立てることが、復興の妨げになり、被災地の人々を苦しめていることを認識してほしい。
 本当に人々の安全と健康を願うなら、デマは慎むべきである。

 本来は「反原発派」と「放射能デマを信じ、拡散する人」は、イコールではないはずなのに。
 両者のイメージが重ねられることによって、反原発派が受けているデメリットは、かなりあるはずです。
 「自分が理性的であることをアピールしたいだけ、あるいは放射能デマを信じている人たちをバカにしたいためだけ」に『原発維持派』というより、『反・反原発派』になってしまっているようにみえる人もネットでは見かけます。
 あの震災と原発事故によって、どんなにネットが発達し、多くの情報にアプローチできるようになっても、人は「信じたいものを信じる」のだな、それはずっと変わらないのだな、と、あらためて思い知らされました。


 このネット時代に、紙の本で「と学会」?
 その気持ちは、僕にもわかります。
 でも、そう思う人が増えれば増えるほど、「と学会」の活動には、これまでとは異なる意義が生じてくるのではないか、そんな気がするのです。

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