琥珀色の戯言

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【読書感想】言える化 ー「ガリガリ君」の赤城乳業が躍進する秘密 ☆☆☆☆


内容紹介
「会社のために働くな。自分のために働け! 」
ゆるいけど、ぬるくない日本一遊び心のある会社の秘密とは??


氷菓ガリガリ君』でおなじみの赤城乳業。次々と話題となるヒット商品を生む同社の商品開発を支えているのは、「言える化」。
自分が思いついたアイデアや知恵を年齢・役職に関係なく自由に言い合える社内の環境づくりが、
同社の業績を大きく伸ばしているのだという。


あの『ガリガリ君』をつくっているのは、どんな人たちなのか?
最近では『ガリガリ君 コーンポタージュ味』が、かなり話題になりましたが、あらためて考えると、よくあんな企画が通ったものだと思いますよね。
この本は、その『ガリガリ君』の赤城乳業を綿密に取材して書かれたものです。
読んでいると、けっこう古めかしい「昔の日本的な『社員は家族』型の企業」のように思われるのですが、いまの時代だからこそ、こういうやり方に魅力を感じる人も多いのかもしれません。
いまどき「社員全員が参加する社員旅行」とかがあって、社長のところに、みんながお酒を注ぎにくるそうですし。


赤城乳業は、まさにいま絶好調です。

 業績は好調だ。2012年の売上高は353億円。成熟化し、低迷が常識となってしまった日本市場で、6年連続増収(V6)を達成した。
 2003年と2012年の売上高を比較すると、191%の伸び。10年間で売上高をほぼ倍増させた。
 看板商品である『ガリガリ君』はここ数年驚くほどの勢いで売上を伸ばし、2012年の売上本数はなんと4億3千万本。子どもだけでなく、幅広い層に支持される国民的アイスキャンディになった。
 売れているのは、「ガリガリ君」だけではない。「ドルチェ Time」や「濃厚旨ミルク」、「ガツン、とみかん」「BLACK」など話題性の高いヒット商品も連発している。

平均すると、日本国民ひとりあたり、1年間に4本は『ガリガリ君』を食べているという計算になります。
僕自身も、ちょうど平均くらいは食べている、かな。
ちなみに、『ガリガリ君』が生まれたのは1981年。


それまでの赤城乳業の主力商品は『赤城しぐれ』という、カップ入りのかき氷だったのですが、売上が頭打ちになり、開発陣は試行錯誤を繰り返していました。

 そんな時、新商品開発会議であるアイデアが出された。それはカキ氷に棒(スティック)を刺して、片手でも食べられるアイスというコンセプトだった。
「赤城しぐれ」はカップアイスだから、片手にカップ、もういっぽうの手にスプーンを持って食べる。それでは、子どもたちは食べることに専念しなければならず、アイスを食べながらゲームをしたり、走り回ったりすることができない。
「遊びながらでも食べられるアイスがあったら、子どもたちは喜ぶはずだ」
 カキ氷はカップで食べるものという常識を否定したのだ。カキ氷を片手で持つという”ワンハンド化”は、子どもの目線で考えた独創的なアイデアだった。
 商品名を決める際に、アイデアを出したのは井上だった。カキ氷を食べる時にガリガリと音がするからという理由で、「ガリガリ」という商品名が決まりかけていた。そんな時、井上が発案した。
「ガリガリだけでは楽しくないから、『君』をつけよう」
 価格は1本50円。味はソーダ味、コーラ味、グレープフルーツ味の3種類。当時の子どもたちが最も好んで口にした飲料から選んだ。

ガリガリ君」が出たあとでは「片手で食べられるカキ氷の棒アイス」なんて、誰でも考えつきそうな気がしますが、当時の業界では、独創的なアイデアだったのです。
 そして、そのアイデアを実用化するのは、簡単そうにみえて、けっこう大変だったそうです。
 商品化されたあとも、最初は品質が安定せず、すぐに溶けたり棒が抜けてしまったりと不具合も少なくなかったのだとか。
ガリガリ君」の成功は、アイデアの勝利ではありますが、それだけではなく、そのアイデアを形にする技術陣の力も大きかったのです。
 それにしても、「楽しくないから『君』をつけよう」という発想がすごい。
 この「楽しもうという遊び心」が、赤城乳業を支えてきたのです。
 もし『ガリガリ』という名前だったら、ここまでの大ヒットにはならなかったのではないかと思います。


ガリガリ君』は、30年以上売れ続けており、とくに近年はすごい勢いで売上を伸ばしています。
ガリガリ君』が年間1億本をはじめて突破したのが2000年だそうですから、最近10年あまりで4倍増、ということになります。
 しかしながら、それは「順調な右肩上がり」だけではなく、2004年に1億5000万本を達成してから、2005年、2006年は、ほぼ横ばいになってしまっていました。
 まあ、このあたりがピークなんだろうな……と、思わなかったのですね、赤城乳業のスタッフたちは。
 積極的な新しいフレーバーの開発や、コンビニでの販促、サッカー日本代表とのコラボレーション、『ガリガリ君』のキャラクターの多方面への展開などにより、その停滞を打ち破ることに成功したのです。
 

 赤城乳業では一人ひとりの裁量権がとても大きい。たとえ新入社員であろうが、まとまった大きな仕事をいきなり任される。普通の会社なら、課長や係長が担当するような仕事を入社数年目の若手社員が進めている。
「コンポタ」を開発した岡本は、商品化が決定した後、アイスの基となる原料を調達するために原料メーカーとの打ち合わせをセットした。原料メーカーからは課長以下数名の担当者が来社したが、相手をしたのは25歳(当時)の岡本ひとり。
 もちろん不安だらけだったが、経験不足を商品にかける思いと責任感でカバーし、乗り切った。原料メーカーの担当者から「若いのにしっかりしてますね」と声をかけられたと岡本は振り返る。
 赤城乳業では、こうした仕事の進め方が当たり前になっている。若いうちから、大きな責任を与え、思い切り任せる。社内では「放置プレイ」と呼ばれるほど、任せたら余計な口出しはしない。
 無論、これは無責任に「放置」しているわけではない。ギリギリまで泳がせてみる。本人がアップアップするまで、追い込んでみる。これが赤城乳業流の人づくりの極意なのだ。

 若手に仕事を任せるという風土は、「安易に人は増やさない」という赤城乳業の人事政策とも絡んでいる。売上高約350億円に対して、正社員数はわずか330名。1人当たり売上高は1億円を超えている。これだけの生産性の高さは、少ない人数で効率よく仕事を捌いていることの証左でもある。
 実際、部門別の人数を見ると、限られた人員であることがよく分かる。たとえば、影山や岡本、菅野が所属する開発部の人員は、部長以下20名足らず。この陣容で年間約140もの新商品を開発している。

 赤城乳業は、まさに「少数精鋭」であり、けっして、ぬるい職場ではないのです。
 新人にだって、大きな仕事を任されるし、実力があれば、責任ある立場に抜擢される。
 昇進も、学歴ではなく実績重視なのだとか。
 もちろん、こういうやり方ができるのは、日本国内が主な商圏の企業だから、という面もあるのですが。
 いまの世の中でも、こういう企業のありかたというのも「アリ」なんですね。
 古そうにみえるやりかたのほうが、かえって新しいことって、少なくないのかもしれません。

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