琥珀色の戯言

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【読書感想】いいとこ取り! 熟年交際のススメ ☆☆☆☆


いいとこ取り! 熟年交際のススメ

いいとこ取り! 熟年交際のススメ

内容紹介
ただいま人生で一番幸せです。これまでが酷すぎたのかもしれませんがっ! 長年の親友だった、高須クリニック院長の高須克弥氏との熟年交際を公表したサイバラ毎日かあさんやりながら、一生懸命仕事して、大好きな人とときどき楽しい時間を過ごす。酸いも甘いも噛み分けた年齢から始まる恋愛ならではの楽しみすべてを大暴露。サイバラ流熟年交際10ヶ条、カラー漫画2本、爆笑対談のおまけ付き!

西原理恵子さんっていうのは、本当に「生きざま」を作品にし続けている人だよなあ、と、ちょっと感動しながら読みました。
高須院長と付き合っている、というのは、すでに公表されていたことなのですが、ここまで赤裸々に、ふたりの交際の様子が語られているとは思いませんでした。
僕にとっては、「恋愛指南書」ではなく、「世の中にはこういう人たちもいるんだなあ」という、ふたりの稀代の「奇人」の私生活を知るための一冊だったんですよね。
人気漫画家の西原さんと大富豪の高須院長、ともに配偶者とは死別していて、現在は独身。


この本を読んでいると、大人同士の「熟年恋愛」って素敵だな、と思うんですよ。
ただ、それを成り立たせるための前提条件を満たせる人は、なかなかいないだろうな、とも思います。


西原さんは、自身の恋愛遍歴や「好きになる男性のタイプ」についても語っておられます。

 私は漫画家なので、笑えるってことはメシのタネであり、いい漫画を描けるってこと。だから、男はとにかく面白い人を好きになる。
 笑える=ハッピーとか、笑顔あふれる温かい家庭とか、そんなノンキな話じゃなくて。男も友達も子供も全部ネタ。私の墓碑銘は「何でも売った女」にしてもらいたい。
 よく言うでしょ、男と女が付き合う際に、「お互いを高め合える関係」とか「共通の価値観」とか。そういうのは一切関係ないんです。とにかく私を笑かしまくってくれる人。面白い=お金。私にとって価値があることだから。

この本を読んでいると、高須院長の「タダモノじゃなさ」も大概だよなあ、と驚くばかりです。
いきなり2人でヒマラヤにヘリコプターで行っちゃったりとか、西原さんに、「漫☆画太郎みたいな漫画を描いてほしい」なんてリクエストしてみたり。
普段の生活についても、こんな記述があります。

 かっちゃん(高須院長)はお酒を一滴も飲まない。しかも食事は1分でがーっと済ませる。単純にガソリン補給なんですよ、食事が。お酒を飲まないから余計に研ぎ澄まされちゃったんだろうね。美味しいモノを味わうとか、栄養のバランスとか、そういうものはいらなくなった、みたいな感じ。でも、私はお酒も好きだし、美味しいレストランで美味しいものを時間をかけて食べるのが大好き。


(中略)


 ただ、1時間だけとか、時間を決めると我慢して付き合ってくれる。銀座のお鮨屋のカウンターで、我慢してくれるんです。でも10分もすると、
「何が楽しいのか、こんなことをして」
 とかブツブツ言い始める。しまいには、
「まだ? まだ? もう食べたでしょ?」
 って超ディスりはじめて、うっせーな、子供かよ! ってね。こんな具合ですよ。

 いきなりヒマラヤ、みたいな「ときどきのすごい奇行」よりも、こういう「日常生活でのギャップ」みたいなもののほうが、取扱いが難しいんじゃないか、という気もします。
 二人とも多忙で、毎日一緒に過ごしているわけじゃないのが、この点ではプラスになっているのかもしれません。
 一般的な結婚生活だったら、1日に最低一度くらいは、一緒に食事をしなければならないわけだから……
(ちなみに、西原さんと高須院長は、週に1回は逢うようにしているそうです)


正直、西原さんの「マッチョな仕事論、生きざま論」に関しては、「これはついていけないなあ……」と思うんですけどね。
昔の西原さんには、なんとなく「親近感」を抱いていたのだけれど、今は「すごい人だけど、こりゃマネできないな」と。

 はい、こっから先は、かわいいお嫁さんになりたい人にはカンケーない話です。何があっても仕事してメシ食いたい若い娘さんに言います。
「仕事のできる男とヤっとけ」
 って。不倫でも何でもいいから、仕事ができる男と「ハメとけ」と。そして、自分のとこを特化したらいいのか、寝て教えてもらえ。
 寝て仕事をもらえ、じゃない。寝て習え。コレを私は、
「夜のスピードラーニング」と言うております。
 だってそのほうが早いもん。業界で何年もいらん苦労するよりも、ピロートーク教室のほうが早いから。

 第二の分岐点は、東京でエロ本のカット描きの仕事がもらえた瞬間。みんなが知っているエッチな本のイラストを描いている、ってことで東京の一員になれた気がした。
 最初の仕事をしたとき、
ペンネームとかどうする?」
 って聞かれたんだよね。
「本名でお願いします!」
 って大声で即答した。都会はどうか知らないけれど、昔はエロ本といえば地方の最有力コンテンツだったからね。普通にスーパーにも置いてあって、死ぬほど売れてたんですよ。そこに名前が載るってことはすごいことだから。エロ本でも自分の名前をみんなに知ってほしかった。

 これほどまでの「飢え」を持てたことが、西原さんの成功の理由だったのかな、とも思うんですよ。
 そして、これほど成功しても、西原さんの「飢え」は、満たされることがない。

 そもそも男の人を直そうとか、ダンナを調教しようということ自体考えたこともない。無理だって。あの人たちは日本語の上手な回教徒だと思ってんの。生活様式から習慣から何もかもが違うんですよ。
「ああ、日本語お上手ですね」
 って褒めてやってください(笑)。そうすると自分も腹も立たない。
 逆に、男から「お前を直してやる」「オレ好みの女に調教してやる」なんて言われたら、どう思う? ゾッとするでしょ?

 『夫は犬だと思えばいい。』という本がベストセラーになっていましたよね。
 僕はあのタイトルを書店で見るたびに、「じゃあ、犬と結婚したってことなのかな……」と、ちょっと悲しい気持ちになっていたんですよね。
 まあ、「犬のほうが、まだ言うことを聞いてくれる」なんて言われたりもしていたのですが……
 確かに「男が女を矯正する」のが気持ち悪いのと同じように「女ができない男を調教する」という言い方も、僕はイヤなんですよ。
 お互いに相手の言いなりにならないのは当たり前、なんだよねえ、本来は。
 

 僕は西原さんの『毎日かあさん』を読みながら、「でもこれって、子どもたちは嫌がっているんじゃないかなあ」と思っていたのです。
子どもにとっては「大人にとっては微笑ましいようなエピソードでも、こうしてネタにされること自体で傷つけられる」のではないか、と。
 ところが、西原さんは、こうおっしゃっています。

毎日かあさん』でもさんざん言われた。
「こんなに子供のこと描いて子供が嫌がりませんか? グレませんか?」とか、
「自分が子供だったら耐えられない」
 とかね。でも、うちの子はこれが当たり前の環境で育ってきてて、
「普通にもっと描いていいよ」
「へへへ、ネタでしょ?」
 ってね。面白いね、って言ってくれる。ありがたいよ。息子の持ち物に漫画を描いたら、
「お母さんありがとう、これぞ漫画家の子供の醍醐味」
 ってツイッタ―に書いてくれて、エヘヘってなった。
 うちのばあちゃんが私のこと漫画に悪く描いたって逆上したときも、息子が、
「母さんが仕事をしてくれているおかげで俺らはうまいメシ食ってるし、旅行にも行けるんだから、ばあちゃんはそんなことを言っちゃいけない」
 ってね。

この本のなかで、僕にとっていちばん印象的だったのが、この西原さんの子供たちの「生きざま」だったのです。
もちろん、自分がネタにされることに対して、ノーダメージなわけないと思うんですよ。
子供って、「親がママ友と自分の話をしている」だけでも、嫌がる時期があるから。
でも、西原さんの子供たちは、自分たちがネタにされることも含めて、母親に感謝しているのです。
むしろ、自分たちもネタにされることで、母親を支えていると感じているのかもしれません。
いろいろ苦労があって、なのだとも思うし、西原さん自身が、そうやって「自分をネタにしても生き抜いてきたことに、誇りを持っている」からこそ、子供たちも「恥ずかしい」と言わないのかな、という気もしたんですよね。

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