琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

【読書感想】バーナード嬢曰く。 ☆☆☆☆


内容紹介
読むとなんだか読書欲が高まる“名著礼賛"ギャグ! 本を読まずに読んだコトにしたいグータラ読書家“バーナード嬢"と、読書好きな友人たちが図書室で過ごすブンガクな日々──。 『聖書』『平家物語』『銃・病原菌・鉄』『夏への扉』『舟を編む』『フェルマーの最終定理』……古今東西あらゆる本への愛と、「読書家あるある」に満ちた“名著礼賛"ギャグがここに誕生!!


「読書家」とは、いったいどんな人間なのか?
僕は本が大好きで、子どもの頃から、本とゲームにうつつを抜かして生きてきた人間なのですが、「あなたは読書家ですか?」と問われたら、「なんか違うような気がする……」と思うんですよね。
こんなにたくさん読んできたはずなのに、「日本文学全集」は読んでいない小説だらけだし、図書館に、『チボー家の人々』全巻が、ズラッと並んでいるのを観ると、もう溜息しか出ない。


 そもそも、「真の読書家」と「難しい本を小脇に抱えて理解しているふりをしているだけの、カッコつけ偽読書家」の境界は、どこにあるのだろう?
 僕自身にとっては、読書って「背伸び」の連続なんですよね。
 本当は『怪盗ルバン』とかのほうが好きなのに、誰が見ているわけでもないのにカッコつけて『存在と時間』を借りてしまい、何だこれは、と身もだえた日々。
 にもかかわらず、自分が年をとってみると、後続者には「ふーん、僕はハイデッガー、小学校高学年のときに読んだけどねえ。なかなか面白かったよ」とか言ってしまう厚顔無恥さ。
 なんだか、そういうのって、40歳を越えても続いていて、本当は芸能人の暴露本とかホビー業界の内幕とかを読みたいのだけれども、書店では「海外情勢」とか「哲学」とかのコーナーで、とりあえず話題書を買ってしまう、という「背伸び」を続けています。
 いやむしろ、年齢とともに、『ハダカの美奈子』を噛みしめてしまうようになった自分がいたりもするわけで。
 

 このマンガを読んでいると、もしかしたら「ずっと背伸びしている『読書家モドキ』」って、僕だけじゃないのかな、と、ちょっと嬉しくなってくるんですよね。
 そして、「読書自慢の人」って、客観的にみると、なんだか滑稽にみえるものなのだろうな、と苦笑せずにはいられません。

 ニーチェの名言っていっぱいある
「誰も学ばない 誰も知ろうとしない 誰も教えない  ――孤独に耐えることを」
「人間とは神の失敗作にすぎないのか それとも神こそ人間の失敗作にすぎぬのか」
「地球は皮膚を持っている そして その皮膚は さまざまな病気を持っている そのひとつが人間である」


………


 えっ 中二!?
 この人 ラノベとか好きじゃね!?


 きっとニーチェって友達いなくて、休み時間は一人図書館ですごしてたタイプだなー

わはははははは。
たしかに、そう言いたくなるわなあ。
もちろん、「読書家的見解」からすれば、ニーチェはこのような言葉を「神の存在を(建前上でも)信じなければ、生きづらい時代」に世間に発表したことが重要、ではあるのですけど。


あと、SFについての、こんな言葉にも勇気づけられます。

グレッグ・イーガン 現代を代表するハードSF作家
SF好きなら誰もが彼の作品を読んでると思って 間違いはない
しかし……しかしだ


実は私も結構な部分 よくわからないで読んでいる


私だけじゃない…みんな実は 結構よくわからないまま読んでいる…


「そうだったの!?」


……に決まっている!


そりゃそーだろ!
いくらSF好きだからって、誰も彼も量子力学やら宇宙物理学やら高等数学やら認知科学やら先端医療やらに詳しいわけじゃないんだから!
でも わからないからって 踏み留まってちゃ 前に進めない!
難解な論文っぽいくだりは そーゆーモノだと割り切って読むんだよ!!

よくぞ言ってくれました!!
そうだよね、そうに決まっている!
……と、僕も思いたい。
そういえば、何年か前、中学校の頃に挑戦して挫折したJ.P.ホーガンの『星を継ぐもの』を読んでみたことがありました。
あれから30年近く。
今度は、ちゃんと最後まで読めたんですよね。
もちろん、作中に出てくるメカなどには「2010年には実現されているもの」がいくつかあったし、僕の基礎知識も、それなりに向上してはいるのだと思う。
でも、読み切れた最大の理由は「わからないところは、流し読みして、なんとなくわかったような気分になるだけでOK」と割り切れるようになったことだったのです。
中学生の頃は、その「論文っぽいくだり」をどうしても理解できないのが引っかかって、そこでいちいち立ち止まってしまっていたんだよなあ。
もちろん「わかったほうが楽しめる」のだろうけど。


ガチの「読書家」というよりは、カッコつけて背伸びしているうちに、なんとなく「読書家っぽい人生」を送ってきた僕にとっては、なんだかとても元気づけられる作品でした。
「グータラ読書家」だけど、本の話って、やっぱり楽しい。

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