琥珀色の戯言

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【読書感想】日本全国「ローカル缶詰」驚きの逸品36 ☆☆☆☆



Kindle版もあります。僕はこちらで読みました。

内容紹介
いまや日本は超・缶詰ブーム。次々と高級缶詰が発売されヒットになったかと思えば、イナバのタイカレーシリーズが1個100円の価格帯にもかかわらず、「へたなカレー店より断然うまい!」と品切れ続出の事態に。もはや保存食を飛び越えて、嗜好品の世界に突入しています。
本企画では、数ある缶詰のうち、日本ローカルで生産されているユニークかつ実力派の「ご当地缶詰」を、缶詰博士・黒川勇人氏が厳選して36種紹介。
ラジオのパーソナリティーやテレビ企画の仕掛けなど、多方面で活躍中の黒川氏は、日本全国津々浦々、それどころか世界中の缶詰を調べつくし、そのディープで魅力的な世界を発信し続けています。雑学ネタ、テレビ「シルシルミシルさんデー」ばりの製造工程の裏側、ご当地ならではの人情話、意外な食べ方(たとえば、経堂の美登里寿司の大将が、缶詰だけで絶品おまかせ寿司をプロデュースしましたが、その仕掛け人が著者の黒川氏なのです)まで、読めばいますぐ缶詰を買いに走りたくなるストーリーが盛りだくさんの、ワクワク感満載の1冊です。
もちろん、ネット等でお取り寄せも可能。楽しく読んで、最後には自分のビジネスに生かすヒントまで見えてくる、究極の雑学実用書!

そうか、いま日本は「缶詰ブーム」なのか!
そういえば、ちょっと前に『黄金伝説』でも、日本全国の面白い缶詰食べ尽くし、なんて企画を見たような記憶があります。
僕自身は「缶詰の缶を開けるのすら、めんどくさい」という人間なので、最近は缶詰をほとんど手にしたことがなく、幼少時の「シーチキン」と「パイン缶」「桃缶」(あの汁の背徳的な甘さ!いまだったら怖くて飲めないと思う……)の記憶くらいしかないのですけど。
いまは、缶切りがなくても開けられるような缶詰も、けっこうあるそうなのですが(伝聞)。


この本、「缶詰博士」黒川勇人氏が、全国の「ご当地缶詰」36種を紹介したものなのですが、テレビ番組で紹介される「びっくり缶詰」みたいなものは、ほとんどありません(とかいいつつ、『またぎ汁』なんていうのも紹介されていたりもするのですが。でもこれ、熊とかイノシシの肉が入っているわけじゃなくて、骨付き鶏肉入り、なんですね)。
そして、紹介されているものには、魚介類の缶詰の割合が多いのです。
缶詰というと、鮮度がちょっと落ちてしまったり、形が悪いものを材料にしているのではないか、という感じがしていたのですが、この本に掲載されている良心的なメーカーは「地元でしか食べられない良質の食材を使うこと」にこだわっている場合が多く、これまでのイメージが覆されました。
そりゃあ、もともと美味しいものを缶詰にしたほうが、美味しくなるに決まっていますしね。


作る側も、「缶詰だから」と妥協するのではなく、「缶詰という形態でいちばん美味しく食べてもらうためには、どうすればいいのか」を追究しているのです。

 日本人は、大トロやサーモンを好んで食べるようになったことでもわかるが、脂っこいものが好きになっている。だから、一般的な国産サバより約2.5倍も脂が乗っているというノルウェーサバを使ったサバ缶があり、これは非常に評価が高い。しかし、このサバ缶を作っている「福井缶詰」では「脂が乗ってりゃあいい、という安易なものじゃない」と、絶妙な蒸し加減で脂をほどよく落としてから使っているのだ。


青森県の「本格鯖」という缶詰の紹介には、こう書いてありました。
(このサバ缶には「八戸沖秋サバ」という脂が乗った特別なサバの、大型で鮮度のよいものだけを使用している、という話に続いて)

 さらにさらに……、このサバ缶がほかのサバ缶とまったく違う点は、その製造後にある。
 なんと、製造後1年以上は自社倉庫で寝かせてから出荷するのだ。
 読者諸賢よ、缶詰を寝かせているんであります!
 同社社長いわく、
「サバ水煮は缶に詰めた後も熟成していきます。だから寝かせているのです」
 実はサバに限らず、ほとんどの缶詰は、「できたては美味しくない」
 と言われている。これは缶詰業界(缶界)の常識なのだ。
 とはいえ、日本の缶詰は賞味期限がほぼ3年。この「本格鯖」も同じで、1年以上寝かせるということは、賞味期限が残り2年を切ってしまうことになる。
 何となれば、販売できる期間が2年以下に短くなってしまうわけだけれど、それでも、
「もっとも美味しい状態で食べて欲しい」
 良かれと思う心で貫いてきた。これぞまさしく至誠。

 缶詰も、「さらに熟成したほうが、美味しくなる」なんて……
 非常食というか、日持ちするのが缶詰の最大のメリット、という気がするので、賞味期限が短くなるというのはデメリットも大きいと思うのですが、それでも「美味しさ」が優先されているのです。
 この「本格鯖」、3缶セット、税込で2100円だそうです。
 缶詰としてはけっして安くはありませんが、一度食べてみたくなりますよね。
 少し前までは「缶詰はひと缶300円以下じゃないと売れない」と言われていたそうですが、最近では「高級缶詰」の人気が高まっているようです。
 かなり美味しくなっているみたいなんですよ、実際に。


 また、この本のなかでは、「コンビーフ缶」の食べ比べなども行われています。
 そのなかで、著者は、こんな話をされています。

 僕はよく、缶詰の試食イベントを行うのだが、そこでときどき出会うのは、
「今までコンビーフを食べたことがない」
 という人だ。
 世代は、20代から30代前半までがほとんど。性別は関係なく、男女どちらでも、そういう人がいる。
「どんな味か想像もつかない」
「これ、どうやって開けるんですか?」
 信じられないかもしれないが、こういう人たちは決して少なくないのだ。
(なんだか、自分がずいぶん歳を取ったような……)
 落剥感さえ感じる瞬間ではある。
 しかし、だ。
 そういう若者は、何の先入観も持たずにコンビーフを食べることになる。

 著者は1966年生まれだそうですから、僕より少し年上です。
 でも、いま40歳ちょっとの僕にとっても、コンビーフは「子どもの頃には比較的食卓にのぼっていたけれども、中学校以降は、ほとんど見たことがない」のですよね。もちろん、あの缶を見かけなくなっただけで、中身はいろんなところで口にしていたのかもしれませんが。
 いまの子どもは、前述の「桃缶」とか「パイン缶」も知らなかったりするのだろうか。


 この本によると、缶詰が注目されるようになったきっかけのひとつは、2011年の東日本大震災だったそうです。
 あの震災で、非常食として缶詰を買い置きしていた人たちが、少しずつ日常生活に戻っていく際に、大量に買いだめした缶詰を食べてみたら、予想外に美味しい、と感じたのだとか。
 多くの人が「缶詰なんて」と思っているなか、ひっそりと、しかしながら確実に進化していった缶詰たち。
 根強い缶詰ファンというのが、少なからずいるのでしょうね。


 日本の大部分の人たちが、24時間コンビニで食料品を買える世の中ではありますが、大きな災害のときには、やっぱり頼りになりますしね。

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