琥珀色の戯言

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【読書感想】家めしこそ、最高のごちそうである。 ☆☆☆☆


簡単、なのに美味い! 家めしこそ、最高のごちそうである。

簡単、なのに美味い! 家めしこそ、最高のごちそうである。


Kindle版もあります。

内容紹介
人気ジャーナリストが提案する、家庭料理革命!
外食より、家めしの時代です。


シンプルにつくるほど、料理は美味い。


3ステップで、無理なく献立をつくる方法、
冷蔵庫にあるものだけで3品つくる合理的テクニック、
今日から生かせる実践法が満載。


・安い旬の素材をフル活用
・美味い料理は見た目が9割
・タイムラインで時間短縮


第1章 バブルを経てわかった結論。家の料理が一番の贅沢。
第2章 道具はシンプル、食材は旬のもの。お金をかけずに、続ける方法。
第3章 食材をまず決め、7種の味から、違うものを選ぶ。最後に調理法。
第4章 手順も大事。さらに美味しく食べるための実践ポイント。
第5章 ひと手間で美味しさアップ。我が家で人気のレシピのコツ。


そうか、「家めし」かあ……
僕の人生、これまで「食」の優先順位って、そんなに高くなかったんですよね。
「何か食べないと死ぬから食べる」というくらいどうでもいいわけじゃないし、美味しいものは好きなのですが、「口に入ってしまえば、結局最後はおんなじなのではないか」なんて思ってもいて。


外食ならともかく、自炊となれば、さらに興味がありませんでした。
仕事柄、帰りが遅く、時間も不規則なため、家で自炊をする元気もなく、外食や買ってきたものをそのまま食べることばかり。
料理が苦手な僕が1時間かけてつくった不味いものを食べるよりは、1時間の仕事で稼いだお金で外食したほうがいい、とか、考えていたのです。


しかしながら、子どもがいる生活では、そこまで割り切るわけにもいかず。
そして、僕自身も、なんというか「外食疲れ」を感じてしまっていて。
コンビニ弁当とかは、みんな同じ味みたいな気がしてしまうのです。
焼肉とかも、そんなに高頻度じゃなくても、たくさん食べなくてもいい(ときどきは食べたいけど)。


そんななか、佐々木俊尚さんが、料理本を出すと聞いて、Kindleで読んでみたのです。
でもまあ、僕にはあんまり役に立たないだろうけど、などと思いつつ。

 ポイントは、三つ。
(1)外食ではなく、健康的で美味しい日々の食事を自分のものにするということ。
(2)そういう食事は、実は安価だし、つくるのにも時間はかからず、調理も難しくない。
(3)そこから始まる生活は、とてもセンスが良く気持ちの良いものであるということ。


率直に言うと、僕のように「ほとんど自炊の習慣がない人間」にとっては、「この本を読むだけで、すぐに料理がつくれる」というものではありません。
「料理レシピ本」のように、分量や手順がキッチリと書いてあるわけではないので、実践しようとすると「うーむ、これ醤油をどのくらい入れればいいんだ……」と悩むことになるでしょう。
(もちろん、まったく分量が書かれていないわけではなく、大まかに基準が示されているものもあるのですが)
ただ、この本、もう少し、「日常生活」ってやつを、大事にしてみようかな、と考え、一歩踏み出すきっかけになる一冊ではあると思うのです。
佐々木さんのように格好良くは、できないかもしれないけれども、


個人的には、前半の「日本の家庭料理史」の話が、読んでいてすごく懐かしかったです。
1961年生まれの佐々木さんは、1970年代の家庭料理の例として、作家・向田邦子さんの料理を妹さんが再現したという『向田邦子の手料理』という本のレシピを紹介しています。

 この本のレシピ、いまつくってみてもとても美味しいのでお勧めです。ところが驚かされるのが、食材や調味料の種類が少ないこと。最近はスーパーマーケットに行くと、各種ハーブやアボカド、ロメインレタス、チコリ、ラディシュ、セロリアックといった西洋野菜が普通に売っています。聖護院ダイコンや賀茂ナスなどの京野菜も普通に東京で手に入るようになりました。
 でも向田さんの料理本にはそういう野菜はめったに出てきません。ナスやキュウリ、ピーマン、キャベツ、トマトなどが中心。あとはチコリやブロッコリー、アボカドなどが顔を出す程度でしょうか。こういう野菜は当時としてはかなり珍しい部類だったんじゃないかと思います。
 調味料も同じで、醤油と味噌、サラダ油、それにウスターソースケチャップとマヨネーズぐらいでしょうか。ナンプラーバルサミコ酢、エクストラバージンオイル、豆板醤、アンチョビなどといった調味料は影もかたちもありません。
 でもそういうありきたりの食材と調味料で、70年代のあのころはヨーロッパ風やエスニック風の料理を工夫してつくっていたということなんです。

 ピッツアなんて洒落たことばは存在せず、宅配ピザもありませんでした。日本で最初の宅配ピザであるドミノ・ピザがサービスをはじめたのは、1985年になってからです。
 70年代の地方の高校生には、ピザと言えば冷凍ピザか、そうでなければ喫茶店のピザトーストぐらいしかありませんでした。厚切りの食パンの上に、ピザソースとチーズとピーマンをのっけて焼いた料理です。

昔の食べ物のことって、思い出しはじめるとキリがありませんね。
この本の前半部の食についての佐々木さんの記憶を読んでいると、「ああ、僕がマクドナルドのハンバーガーをはじめて食べたのは小学校高学年のときで、地方都市についにできたマクドナルドは、すごい人ごみだったなあ!」とか、「あのピクルスが苦手で、なんでこんなものが入っているんだ……と思っていたなあ」なんて、次から次へと、僕の記憶もこぼれ落ちてくるのです。
僕はとにかくカレーが好きで、いつも母親にねだってバーモントカレーをつくってもらっていました。
何も特別な材料は使っておらず、同じバーモントカレーのはずなのに、当時母親がつくってくれたものと同じ味に出会うことは、もう二度とないのだろうな、なんて考えてしまって、しんみりしていたのです。


1970年代に比べたら、日本の家庭料理は、なんて豊かになったのだろう!
ハンバーグも、「イシイのハンバーグ」以外は、家族でレストランに「お出かけ」して食べる時代だったんですよね、70年代って。


外食の種類が豊富になり、安くいろんなものが食べられるようになった一方で、たしかに、「画一的で、味の濃い食事」の割合が増えてきています。
ただ、現実問題として、世間の「意識が高い人たち」が推奨しているような「きちんと手間隙かけてつくられた、スローフード」は、毎日の食事としては、あまりにも敷居が高い。
たぶん、同じように考えている人は多いと思うのです。

 珍しくて高い食材を使い、お金がかかり、ブランド志向な「美食」ではなく。
 お金はかからないけど、不健康で太ってしまうスーパーの総菜や半調理品、コンビニ食のような「ファスト食」ではなく。
 さらにいえば、健康的かもしれないけれど、意外とお金はかかるし、つくるのに手間がかかって面倒そうな「自然食」でもなく。
 そうじゃない中間のあたりに、もっと健康的でもっと美味しくて、お金もかからず、そしてかんたんで「シンプル食」があるということを提案したいのです。


僕も含めて、多くの人が向かってしまいがちな「両極端」のあいだにあるのが、この佐々木さんの「家めし」なのです。


ちゃんとしたレシピとして、分量などが細かく書かれていないのは、それを試行錯誤するのも「家めしの愉しみ」のひとつなのだ、というメッセージなのかもしれません。
マニュアル通りにひとつの料理をつくることよりも、「発想法」を身につけたほうが、応用がきくものですし。


「タマネギを薄くスライスして」なんて書いてある時点で、「タマネギ、スライスできるかな……ネットでやり方を検索してみなければ……」なんて考えてしまう料理音痴にとっては、けっこうつらいところはあるんですよ、正直。
でも、「そこから、自分なりにはじめてみる」、そして、失敗することも含めて「日常を楽しむ」姿勢が、きっと大切なのでしょうね。

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