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琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜 ☆☆☆☆

映画



あらすじ: 大学受験に失敗し高校卒業後の進路も決まっていない勇気(染谷将太)は、軽い気持ちで1年間の林業研修プログラムに参加することに。向かった先は、携帯電話が圏外になるほどの山奥のド田舎。粗野な先輩ヨキ(伊藤英明)のしごき、虫やヘビの出現、過酷な林業の現場に耐え切れず、逃げようとする勇気だったが……。

参考リンク:映画『WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜』公式サイト


2014年17本目の劇場での鑑賞作品。
月曜日の夕食どきの通常料金の時間帯で、観客は10人くらいでした。


この『WOOD JOB』は『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』などで知られる矢口史靖監督の最新作。
三浦しをんさんの『神去なあなあ日常』の映画化なんですね、これ。
舟を編む』といい、最近映画化が続いているなあ、三浦さん。
そして、この作品もまた「幸福な映画化」だと思います。


この映画、矢口監督の最新作ながら、いまひとつ盛り上がりに欠けている気がします。
アナと雪の女王』が歴史的な大ヒット中で、ファミリー向け映画には『テルマエ・ロマエ2』、ハリウッド派には『アメイジングスパイダーマン2』、ちょっと年配向けには『相棒』など、ライバルが粒ぞろいのため、『週間興行ベスト10』でも、最初の週は6位に終わってしまいました。
でも、ネットでも評判は良いし、観てみると「面白くて、元気が出る映画」なんですよね。
ストーリー的には「珍しい職業もの」であり、「若者の成長記録」という、ありきたりのものなのですが、この映画で描かれている「林業」という仕事の世界は、すごく新鮮です。


「○○業という仕事といえば?」というクイズがあったとしたら、「農業」「漁業」の次くらいにきそうなものじゃないですか「林業」って。
ところが、林業に従事している人たちが、普段どんな仕事や生活をしているかって、僕は全然知らなかったのです。
三浦しをんさんの『神去なあなあ日常』は、現場での取材にもとづいて、「林業の世界」を描いていたのですけど、そこで描かれていた仕事や「祭り」の様子は、こうして映像化されると、すごくわかりやすいし、圧倒されてしまいます。
近くの町まで、車で2時間。
「緑に囲まれた自然豊かな」というよりは、大自然のなかで、人間がささやかに生かしてもらっている、そんな世界。
緑がいっぱいの画面を観ているだけで、なんだかすごく満たされた気分になるんですよね。


この映画のなかに、都会から来た人たちが、神去の人たちの暮らしをみて「すごいなあ。よくこんな携帯も通じないところで生きていけるよねえ。こんなところで、自分は絶対に生活できないよ!」なんて感心してみせるシーンがあるのです。
ああ、僕もこういうリアクションをやりそうだ、と思いながら観ていたのですが、画面越しに第三者として観ると、地に足を付けて生きている人の前で、そういうふうに言うことの薄っぺらさが伝わってきて、恥ずかしくなりました。
「こんな不便なところで暮らさなくても、よそに移ればいいのに」という言葉に対しての「都会の人にはわからないかもしれないけど、ずっと住んできたところを、そう簡単には捨てられない」という反応にも、なんだかぐっときてしまったんですよね。
僕は子どもの頃から転校、転勤が多くて、「故郷」と呼べるような土地を持っていない人間です。
だから、「故郷」にこだわる人には、愛憎半ばしてしまいます。
「羨ましい」「そんなに地元にこだわる必要があるのか?」
でも、最近ようやくわかってきたような気がします。
それでも人は、自分のルーツみたいなものを、大事にしたいんだな、って。


これは神去村の話です。
しかしながら、矢口監督は、東日本大震災の被災地の人たちのことも考えながら、この「不便だけれど、いとおしい故郷の映画」を撮ったのではないかなあ。


そうそう、この映画の最大の見どころは、あまりにもハマリ役の伊藤英明さんの熱演です。
「こういう人、絶対いそう!」って思いながら、何度も笑ってしまいました。
体育会系の理不尽な先輩みたいな感じなので、苦手な人も多いかもしれませんが、僕はこの映画の伊藤さんを観ているだけで、もう楽しくてしょうがありませんでした。
なんなんだそのマッチョすぎる身体!
優香さんもコメディエンヌとして、なかなかの熱演。
ちょっと楽しみにしていた長澤まさみさんは、『モテキ』のようなインパクトはありませんでしたが、「地味かわいい感」満載で、存在感をみせてくれています。


ほんと、この時期の公開は、ライバルが強力すぎて気の毒なのですが、これ、「五月病で、ちょっと気分がすぐれず、落ち込みがちな人」にとっては、「気分転換ができ、押しつけがましくなく元気を与えてくれる、ちょうどいい映画」だと思うのです。
僕がまさに、そうだったので。


神去なあなあ日常 (徳間文庫)

神去なあなあ日常 (徳間文庫)