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琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

【読書感想】「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます。 ☆☆☆☆



Kindle版もあります。

内容紹介
構想7年、執筆3年。食のプロや業界関係者の間で「食品業界を知り尽くした」と言われる男が
「裏側」の見抜き方、「いい店」「おいしい料理」の見分け方をやさしく解説!今日からあなたの「行く店」と「頼む料理」が変わる!


【1.裏側はすごい!】業界最大のタブーを公開する!
●とても実名では書けない!衝撃の覆面食べ歩きレポート
・某居酒屋チェーン店「ほとんどニセモノ食品だね。ランチは夜の余り物を処分するためでは?」
・某イタリアン・チェーン店「このドリアはチーズとホワイトソースがひどい。イタリア人が食べたら怒り出すよ」 etc


●輸入野菜&ニセモノ食品&成型肉&添加物が使われ放題!
・9割は輸入野菜!2年前の米!添加物だらけの「ヘルシー和食メニュー」!
・立ち食いそばは小麦粉が8~9割!もはや「茶色いうどん」。だから安い!


 さまざまな「食品偽装問題」などもあり、外食産業への信頼は揺らぎっぱなしです。
 率直に言うと、「どの食べ物が危ないか」なんて話は、聞いているとキリが無いから、「どこで食べればいいのか」を教えてくれないかな……とも思います。
 というか、こういう問題が顕在化してきた原因としては、「外食」の価値の変化が大きいのかもしれません。
 僕が子どもの頃、30年前くらいまでは「学生やサラリーマンが利用するような定食屋」を除けば、「外食」=「おめかしして、高いお金を出してごちそうを食べに行くもの」だったんですよね。
 それがいまは「家でつくるのもめんどくさいし、手間を考えると、かえって安いくらいだから、外食にしよう」という感じです。
 一部の高級レストランを除けば「低価格」でなければ、お客さんはなかなか来てくれません。
 でも、ちゃんとしたものを出すには、それなりのコストがかかります。

 安さを売りにしたチェーン店は一様に「うちは大量仕入れ・大量販売でコストを低く抑えているから安い」と胸を張ります。
 しかしそれはウソだと私は思います。
 こと食品に限っては、大量仕入れでは安くならないのです。
 たとえばレタスを大量に仕入れても安くはなりません。
 農家と直接契約し、流通過程を見直し、年間にわたって安定しておいしい野菜を供給できる体制をとらなければ、安価で安定した野菜を仕入れることはできません。
 だから、「食材を大量仕入れするから安く」などということは、素材に関してはありえないのです。


 これがほかの商品、たとえば電化製品や家具であれば大量仕入れで安くなるのはわかります。これらは開発費や特許料が初期費用としてかかるので、それがペイすれば、あとは大量生産することで安くなります。
 しかし食品はそうではないのです。
 ではどこでコストをカットしているかというと、やはり人件費なのです。
 もしくは家賃と設備費。最近は「居抜き」といって、撤退した店舗が影響していたままの状態を受け継いで出店するケースも増えています。「サイゼリヤ」や「ステーキハンバーグ&サラダバーけん」はこの形態で成長したチェーンです。


 著者は、こんなふうに自己紹介をしています。

 私は現在、某大手流通チェーンにおいて、食品の製造・衛生管理(いわゆる品質管理)の仕事を行っています。
 私の経歴は前作『スーパーの裏側』(東洋経済新報社)に詳しく書きましたが、ハム・ソーセージの大手食品メーカーから始まり、大手卵メーカー、コンビニの総菜工場、大手スーパー、コンビニでも働いてきました。職種も、商品開発から営業、製造現場、流通、販売までさまざま経験してきました。
 一般的に、食品工場に就職した方は食品工場で定年を迎えます。私は、畜産大学で学び、食肉加工工場、総菜工場、デザート工場、豆腐工場と、ほとんどスーパーの売り場一軒分の製造工場で働き、小売りの現場でも働いてきました。もちろん一個人としては消費者の立場でもあるので、「農場から食卓まで」の管理をひとりで実践してきたことになります。

 なるほど、こういうキャリアの人だからこそ、さまざまな製造過程での「外食産業の問題点」に精通しているのですね。
 ただまあ、あくまでもひとりの人間の「告発」ではありますし、鵜呑みにするかどうかは、読む人しだい、ではあります。
 それにしても、ここに書かれているような食品添加物とか成型肉の話というのは、読んでみると「ああ、あれはそうだったのか……」と思い当たることばかり。
 多くの場合は「この値段だから、こんなものだよね……」と、納得しているというか、諦めているというか。
 著者は、そういう「値段との釣り合い」についても理解を示していて、「それが悪いというのではないけれども、ちゃんと添加物を使っているのなら、お客さんにわかるように、明示しておくべきだ」と仰っているんですけどね。
 ちなみに、スーパーやコンビニでは、成分表示をきちんとしなければいけないことになっているのですが、この本を読んでいると、外食店では、けっこう曖昧な表示でも「違反ではない」ということになっているようです。


 あと、「外国産の野菜は危ない」と、スーパーでは「国産品」を選んでいる人も、外食では知らないうちに外国産を食べている、ということも紹介されています。
 

 また、こんな「コンビニのおにぎりが美味しい理由」も。

 チェーンのできたて弁当では、古米(1年前の米)、古古米(2年前の米)がじつに多く使われています。昨年の米、一昨年の古い米を安く仕入れて、工場で炊いて各店舗に納品しているのです。
 その際、ふっくらつややかに見せかけるために「品質改良剤」「品質保持剤」あるいは植物性油などが多く使われます。
 コンビニの工場では私の知る限り、古米を使うところはありません。普通の家庭と同じように、秋に収穫された新米を1年間使います。


「なぜコンビニのおにぎりは冷めてもおいしく食べられるのだろう?」
 そういう疑問をもたれたことはないでしょうか。
「コンビニのおにぎりには添加物をたくさん使っているから、そのせいでおいしく食べられるのでは?」と思われるかもしれませんが、ご飯そのものにはほとんど添加物は使われていません。添加物が使われているのは具です。
 では、なぜ冷めてもおいしく食べられるのか。
 それは、コンビニのご飯は、新米が使われているからです。だから、おいしい。それだけです。
 一方、チェーン店の持ち帰り弁当のご飯は、冷えたらとても食べられたものではありません。それは1年前、2年前の米を使っているからです。
 ウソだと思ったら一度試してみてください。それくらい日本人は、米の味に敏感なのです。

 コンビニのおにぎりは、「他のコンビニとの差別化のための重要な商品」であるために、美味しくしなければならない、という面はあるのでしょうね。
 この本を読んでいると、「利益と賞味期限重視で、添加物が多く含まれているのではないか」と僕が想像していたコンビニの食品のほうが、タチの悪い持ち帰り弁当や外食店よりも「良心的」であることに驚きました。
「ちゃんとした表示が義務づけられる」だけで、売る側も、買う側も、かなり意識は変わってくるのです。


 焼き鳥店で、冷凍焼き鳥が使われているかどうかを見分けるために、こんな簡単な方法も紹介されています。

 店で焼き鳥を頼んだとき、鶏肉の大きさも形も見事に同じものが出てきたことはないでしょうか。
 形が揃っていてきれいなものは、ほぼ間違いなく輸入ものの仕入れ品です。各店舗で、肉のかたまりからひとつずつ手作業で切って串に刺すやり方では、大きさや形に多少の不揃いが出るのは当然のことです。
 それからもうひとつ、冷凍焼き鳥かどうかを見抜くコツがあります。
 それは「ねぎま」があるかどうかです。ネギは冷凍・解凍に不向きだからです。
 居酒屋で焼き鳥を頼もうとしたのに、「ねぎま」がなくて不思議に思ったことはないでしょうか。逆にいうと、メニューに「ねぎま」があれば、その店は冷凍焼き鳥を使っていないということです。


 そうか、「ねぎま」か……
 まあ、実際に店に入ったとして、「ねぎま」が無かったら「おやじ、何だこの店は!」ドタドタドタ……というような海原雄山的ふるまいは、僕にはできそうにないのですが、参考にはなりますよね。

 
 今の世の中、「外食」は安くなって、さまざまな店があるけれど、それだけに「良心的な店」を探すのは、なかなか難しいとも感じます。
 逆に、添加物まみれのものを食べたところで即死するわけでもないし、あんまり気にしすぎてもめんどくさいよなあ、なんて考えてしまうところもあるのです。
 ただ、「こういうものだと、知っておくこと」は、すごく大事なのではないかと。


 ちなみに、この本のなかでは、著者が「比較的おすすめできる、全国チェーンの外食店」を紹介しています。
 どんなマニアックなセレクトかと思いきや、ほんとうにどこにでもあるチェーン店ばかりで、拍子抜けしてしまいました。
(だって、カレーはココイチ、コーヒーはスターバックス、とかですよ)
 でも、考えてみれば、これらのチェーン店が同業者のなかで人気を集めているのは、「チェーン店のなかでは良心的であることが、お客にも伝わっているから」なのかもしれません。
 お客も、そんなにバカじゃない。


 外食産業の発展のおかげで、日常生活は、間違いなく「便利」になりました。
 でも、便利であるがゆえに、信頼しすぎてしまうのは、危険なことなのでしょう。
 本当に、考えさせられる内容ですよ。
 知らないほうが幸せなんじゃないか、とも、少し思いますけど。