琥珀色の戯言

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【読書感想】レゴはなぜ世界で愛され続けているのか ☆☆☆☆


レゴはなぜ世界で愛され続けているのか 最高のブランドを支えるイノベーション7つの真理

レゴはなぜ世界で愛され続けているのか 最高のブランドを支えるイノベーション7つの真理

内容紹介
わずか3年で脅威のV字回復を果たした北欧を代表する玩具メーカー。顧客の心をつかんで放さないために80年守りつづけてきた経営哲学とは。アップルをしのぐイノベーションの宝庫、その知られざる裏側を初めて明かす。


知育玩具としても人気の「レゴブロック」、たった一つの製品群だけで世界を代表する企業になった同社の経営理念を解明。企業幹部、従業員、取引先などへの取材から、レゴのイノベーションの源泉を惜しみなく披露しており、ローテクでも稼げるしくみづくりは日本企業にとって参考になり、北欧の優良企業研究としても価値がある。


内容(「BOOK」データベースより)
3億ドルの大赤字から驚異のV字回復。アップルをしのぐイノベーションの宝庫、その知られざる裏側を初めて明かす。フォーブス誌記者が選ぶ2013年ベストブック。


僕も「レゴ」大好きなんですよね。
子どもの頃から、あのブロックが、カチッとはまる感覚が心地よくて、いろんなものを作っていたものです。
そんなに器用ではないんだけれども、あの四角いブロックの組み合わせで、世界が広がっていくことに喜びを感じていて。
ですから、息子がレゴで遊べるようになったときは、ちょっと嬉しかったのです。
レゴショップではしゃいでいたのは、むしろ僕のほうだったりして。

 玩具メーカーが一世紀近くにわたって、いかに世界中の、何百万人もの子どもたちを魅了してきたのか? みんなに愛されていた企業が、なぜ顧客や自社の歴史とのつながりを失い、その結果、倒産寸前にまで追い込まれたのか? 経営陣が愛と奮闘努力によって、どのように自社を存亡の危機から救ったのか? わたしはイノベーションマネジメントに関する学術的な本を書くつもりが、一企業の起伏に富んだ凋落と復活の物語を書くことになった。


この本は、「レゴ」の歴史、その栄光と苦悩について書かれたものです。
イノベーション」なんていう言葉が高頻度に出てきて、けっこう「ビジネス書色」が強いのは僕にとってはややとっつきにくかったのですが、それでも、「レゴ」が歩んできた道を辿っていくのは楽しかったのです。
しかし、僕にとっての「レゴ」は、自分が子どもだった30年以上前の記憶と、自分が親になってからの最近5年間くらいのイメージしかなくて、その間に、この会社が深刻な経営危機に陥っていたなんて、全く知りませんでした。
ずっと、地道にレゴブロックだけを売りつづけて、ファンに支えられている堅実な会社、というイメージが、これを読んで一変しました。

 なぜわたしたちはレゴとそのイノベーション戦略にもっと注目すべきなのか? 
 レゴは創業以来80年にわたって、一貫して、革新的であり続けてきた企業だ。まず何より、全世界の四億人に「手と頭と心」で製品が受け入れられたという実績がある。そして、妥協を許さない。創意工夫に富んだレゴの取り組みからは、毎年すばらしいおもちゃが世に送り出されている。押し入れにしまわれて、埃をかぶってしまうなどというおもちゃはめったにない。レゴはその独創性において玩具業界で比類なき地位を築き上げた。レゴが子どもたちに人気があるのは、楽しいからであり、親たちに人気があるのは、教育的な効果があるからだ。両者の組み合わせが功を奏し、レゴの売上は数十年間、記録的な伸びを維持してきた。
 しかし20世紀末、子どもたちの生活が変化するにつれ、ブロックというおもちゃは試練にさらされた。テレビゲームや携帯音楽プレーヤーなど、ハイテク機器に夢中になる子どもたちの心をつかもうと、玩具メーカーがしのぎを削り合い、おもちゃの世界で生き残るのはどんどんむずかしくなっていった。アナログのおもちゃを主力商品にしていたレゴが気づいたときにはもう、変化のめまぐるしい、競争の熾烈なデジタルの世界で、遅れを取っていた。
 レゴは遅れを取り戻そうとして、21世紀初頭から広く普及していたイノベーション理論のいくつかを取り入れ、野心的な成長戦略を立てた。すなわち、未開拓の「青い海(ブルー・オーシャン)市場に進出し、「破壊的イノベーション」を起こし、「クラウド(群衆)の知恵」に開発を手伝ってもらうという戦略だった。しかし、ほかの企業にはみごとな成果をもたらしたかもしれないそれらの21世紀のイノベーションの処方箋も、レゴには壊滅的な結果を招いた。2003年、レゴブロックがフォーチュン誌とイギリス玩具小売業協会から20世紀を代表するおもちゃだと讃えられてからわずか三年後、レゴは創業以来最大の損失を計上した。識者のあいだでは、世界でもっとも愛されるブランドが身売りを余儀なくされるのではないかという憶測が飛び交った。


20世紀の後半になると、子どもの遊びにも、劇的な変化がおとずれました。
テレビゲームが普及し、それで遊ぶ子どもがどんどん低年齢化していくにつれ、「もう、子どもたちは、自分の手を使って、レゴブロックで遊ばなくなるのではないか?」という危機感に、レゴはとらわれていくのです。
そして、レゴは、さまざまな試行錯誤を続けていくことになります。
大量の人員整理も行われました。
製品ラインナップを増やしたり、教育に進出したり、レゴブロックをデジタル化し、コンピューター上でレゴブロックを組み立てるシステムを開発したり、といった、さまざまな挑戦が行われたのです。
なかには、『スター・ウォーズ』や『ハリー・ポッター』のキャラクターのレゴブロックでの大ヒットや、『バイオニクル』シリーズの成功などの成果もあったのですが、試みの多くは失敗し、レゴは経営危機に陥ったのです。


失敗してから考えてみると、「レゴは自分の手で組み立てるから、面白いんじゃないのか?」と言いたくもなるのですが、「時代の変化」と「会社の危機」に戦々恐々としていた当時のレゴの経営陣やデザイナーたちは、レゴの本来の魅力を見失って、迷走してしまったのです。
もっとも、ずっと「大丈夫に決まってるだろ」と、同じようなブロックを組むだけの商品を作っていたとしたら、やはり、時代遅れのメーカーとなってしまったかもしれないんですよね。
結局のところ、レゴは「レゴブロックという、ブランドの柱」重視に回帰し、レゴを愛するユーザーの意見を取り入れていくことによって、V字回復を果たしていくわけですが、その陰には、この「やることなすことうまくいかなかったけれど、新しいことに挑戦した時期」に積み重ねたものがあったのです。
「原点回帰」すればよかったわけではなくて、レゴの業績が急激に回復した2004年以降には、地道な経営努力とともに、テレビゲームのほうが、少し飽きられてきた、という時代の変化もあったのではないかと思います。
「原点回帰」も、適切な時期に行われなければ、意味がない。
ただ、レゴには、冬の時代を生き延びることができるだけの、信頼と実績の積み重ね、そして、諦めない企業風土があったのは事実でしょう。
そして、レゴはいまも立ち止まっているわけではなくて、ボードゲームをつくって大成功を収めたり、オンラインゲームに進出しようとして大失敗したりしています。
そうやってトライアンドエラーを繰り返しつつも、最近のレゴは、しっかり業績を上げてきています。
現在のレゴは、伝統に忠実なだけの企業ではないのです。

 デンマークユトランド半島の農村地帯にあるビルンという小さな町に、レゴグループの本社はある。ビルンはいろいろな意味で、「ブロック」で築かれてきた町だ。住人の言葉を借りれば、「どこからも三時間以上離れ」ていて、もっとも近い大都市であるコペンハーゲンハンブルクに行くには、見渡すかぎり畑ばかりの平野をえんえんと車で走らなくてはいけない。都会から遠く隔たったこの町の住人の四人に一人は、レゴ関連の仕事で生計を立てている。町のあちこちにある工場では、一時間に220万個のブロックが生産され、世界中に出荷されている。

 1932年、ビルンでレゴを設立した大工オーレ・キアク・クリスチャンセンは、社名に会社の基本理念を刻み込んだ。「LEGO」とはデンマーク語で「よく遊べ」を意味する「leg godt」の頭文字二字ずつを組み合わせた造語だ。世のなかが暗いときほど、親は子どもを楽しませたいにちがいないという思いから、オーレ・キアクは大工の腕を活かして、質の高い木製のおもちゃを作り始めた。


今では、「テレビゲームをやっているより、レゴで遊んでいるほうが、創造性が養われる」というようなイメージが持たれがちなのですが、インドア派の子どもだった僕は「ずっとブロックで遊んでばかりじゃなくて、外で遊びなさい!」なんて、言われた記憶もあるんですよね。
で、もうちょっと大きくなったら、「テレビゲームばっかりやっていないで……(以下同文)」
でも、そんな僕みたいな子どもが、いまや親になり、自分の子どもに「レゴ」を買い、「じゃあ、パパが手伝ってやるよ」って言いながら、あのブロックの手触りを懐かしんでいるわけです。

 みんなに愛されているおもちゃと言っても過言ではないだろう。少なくとも、レゴの名を知らない人はこの世にいなさそうだ。20世紀を代表するおもちゃだとレゴを評したフォーチュン誌は、冗談めかして次のように述べている。2000億個以上のレゴブロックが世界中に散らばっていることを考えると、「控えめに見積もって、ソファーのクッションの下に100億個、掃除機のなかに30億個のレゴブロックがあると思われる」と。この数字は今では三倍に増えているはずだ。レゴの工場では毎年、何百億個ものブロックが生産されている(2010年はおよそ360億個だった)。レゴブロックの年間生産量は、全世界の人口の5倍以上。現在、地球上には、すべての人に約80個ずつ行きわたる数のレゴブロックがある。

これを読んでいたら、僕も「大人レゴ」を作りたくなってきましたよ本当に。
ちなみに、将来的には、3Dプリンターがレゴを脅かす可能性があるそうです。
昔から変わらないように見えるけど、けっこう時代に翻弄されているんだよね、レゴブロックも。



レゴ (LEGO) アーキテクチャー エッフェル塔 21019

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レゴ (LEGO) アーキテクチャー 帝国ホテル 21017

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